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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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 結論からいうと、がしゃ髑髏は想像していたより弱かったです。

「お前の功績ではないがな」

 パーティの斬り込み隊長、カリアが骨粉のついた剣を拭いながら呟いたです。
 聞かなかったことにするです。
 砂丘には、砕かれた骨が大量に乱雑に散らばっているです。
 その上空にふよふよと漂っている鬼火が、まるで彼らの魂であるかのように見えるです。
 パーティリーダーでもあるジェイが、指先をパチリと鳴らして召喚ウィスプ達を追い払い、

「ふざけた真似してくれやがって。
 あの魔法使いのガキども、今度逢ったらお尻ペンペンじゃ済まさねぇぞ」

 物騒なことを口にしたです。
 最近のPTAが聞いたら、ブラックリストに載せられてしまいそうな勢いです。

「河向こうに魔法陣が見える。往くか、越えるか?」
「念のためチェックだけ済ませて、追いかけよう。まだ近くにいるかもしれない」

 弱かったといっても、それは結果論なのです。
 召喚を囮に使わなければ、あのでかい骸骨に薙ぎ倒されていたかもしれないです。
 あの魔法使い達は、いったい何者だったのでしょう。

「師匠とやらを探しているようだったが」
「召喚術士は、この島にゃたくさんいるぜ? 俺もいれてな」

 あ。そういえばメルト、行方不明の召喚術士に心当たりがあるですよ。
 むかーしむかし、耳にしたです。


           - + - + - + -


 くたびれたスーツのバーテンダーが、美しい造形の施されたヴェネツィアン・グラスを磨いている。
 室内は薄暗く、照明と呼べるのは色褪せた白色灯と、音も無く燃えるアルコールランプのみ。
 セピアカラーに浸された、樫木作りの重厚なカウンターには冷めた青のジャケットを着た男。
 薄く濁る緑の瞳は、琥珀色のバーボンを通して灰皿で潰れたシガレットを見つめている。

 アイヴィ・ドゥシェル、通称"ヴィー"。彼は人間ではない。
 夜を歩く者。ヴァンパイアに代表される、太陽に別れを告げた種族のひとり。
 経口ではなく、指掌から生命力を奪い取る能力が特徴。
 とはいえ、昼に買い物が出来ないわけでも、牙で血液を嚥下出来ないわけでもなく。
 元より、古き噂を拠り所とした伝承に事実は少なく、彼も現実を喧伝するつもりはなかった。

 傍らに置いたハードカバーの書物に白い指をかけ、パラパラとめくる。
 既に幾度も読み返した古書。世界最大のベストセラー、"The Bible"

「ナイトウォーカーが聖書を読んでも大丈夫なのです?」

 不意に隣へ出現した存在に、動じる心は持ち合わせていない。
 つまらなさそうにグラスを傾ける。強いアルコールが、喉をじわりと焼いた。

「信じる者しか救わない――、デショ?」

 応えはない。くつくつと神経を逆撫でる不快な嗤いが響くのみ。
 視線を合わせる必要はなかった。肌を炙る気配で察知する。
 正体は知れていた。神の人形、信仰の具現、悪魔を狩る者――、"天使"

「何、俺を殺しにきたの? それなら死神が優先だから。オトトイおいで」

 突き放す。最近カミサマに目を付けられるようなことをしたかなぁ、と記憶を辿りながら。
 天使は「そうするです」と告げて、浮遊させていた小柄な体躯を机の縁に預けた。

「強い召喚術士を探しているです。心当たりはないですか?」

 意外な質問だった。まず、どうして自分に尋ねるのか解らない。
 人探しをしているなら、郊外のバーなどではなく人通りの多い居酒屋をうろつけばいいのだ。

「なるほど。"人外"をお探しで」
「察しが早くて助かるです」

 情報屋じゃないんだけど、と思う。しかし、心当たりがあるのも確かだ。
 探索者で賑わうこの島では、得体の知れない風聞に事欠かない。
 そんな中、偶然、行き当たりに耳にした噂話。あるいは、目撃。
 だが、"それ"を聞き知っていた自分から直接情報を奪いに来るところに、桁外れの不気味さを覚える。
 何なんだ、コレ?

「サバスという、リトルウィザードを弟子に連れた学者が行方不明らしいよ。高位の召喚術を使うってさ」
「行方不明者に興味はないですねー」
「黒い羽根持ちの方かなぁ? 羽根を隠して人間の振りをしていていたけど、明らかにコッチ寄りの」
「それです!」

 やっぱり、そっちね。
 尋ねる相手をピンポイントで確定しておきながら、質問の結果を知らないという理不尽。
 我知らず、胸ポケットに挿してある愛用の煙管を求める指があった。

 ――この程度の天使なら、情報を持ち去られることなく一撃で仕留めることは可能だ。
 しかし、

「情報、ありがとうです! このお礼はいつか必ず。神の祝福がありますよーに!」

 逡巡の間隙を突いて、ぞっとしない台詞と共に小さな天使は存在を消失した。
 アイヴィ・ドゥシェルの背筋から、緊張の色が抜ける。
 どうやら、神に試されていたわけではないらしい。純粋に、質問をしにきただけということか。

「お客様、追加のご注文は如何でしょうか?」

 何事もなかったかのように告げる初老のバーテンダーに、かすかな微笑を返す。
 たまにはこういう緊張感があってもいい。これからこの島で、更なる緊張を味わうのだろうから。

「ワインをもらえる? ラクリマ・クリスティみたいな、赤のフルボトルで」


           - + - + - + -


 つまり、サバスという学者さんがいたそうです。

「サバス……? 聴いたことがあるな。確か脱衣の生物学者」
「脱衣?」

 カリアが不思議そうに聞き返したですが、ジェイも眉根を顰めつつ頷いたのみでした。

「情報が錯綜していて整理できてねーんだ。戦闘中に衣服を脱ぐことが得意だとか、意味不明だろ?」
「どちらにしろ、先ほどの二人組を追いかけるしか手はなさそうだ」

 その言葉に嘆息しつつ、ジェイが肩越しに、何かを撫で付けるように手をかざしたです。
 まるで、背に生える大きな翼に触れてでもいるかのように。
 彼は時々そういうことをするです。クセっぽいです。背に羽根など生えていないのに、とても手馴れた動きなのです。
 カリアが無言で、じっと見てました。

「どうした?」
「いや」

 魔法陣の近くには、また、地下へ続く階段が口開いているらしいです。
 まだ、さらに地下へ進む道があるですかー? 


+斜+[レンタル&文章コミュ:ENo.1996 アイヴィ・ドゥシェルさんをお借りしました。イメージと違っていたらごめんなさい!]-斜-

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