歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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――神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。
独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。
独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。
やがて雷鳴が轟き、窓撃つ雨を共に照らす。
光は透明な壁を越え、洋室の赤き絨毯に濃密な造影を創らせた。
「時間が、経ち過ぎたかもしれませんね」
孔雀の尾羽に似た荘厳な文様の翼が、擦れて涼やかな音を響かせる。
頭上に光輪を抱く青年は、叩きつける嵐を外界に眺めながら問いかけた。
「金星の姫。そろそろ、"あれ"を本来の位置へ返していただけないでしょうか」
されば深奥暗がりにて、細緻な装飾に象られた長椅子に横たわる聖女が、物憂げに応える。
「孔雀の君は焦っておられるの。日々を戦に明け暮れておらば、心磨耗しゆくも仕方なきことか」
「魔族の掃滅は、我が君に捧げる祭儀のひとつ。呼吸をすることに、煩わしさを感じる者などいませんよ」
青年は一息をつく。緊を張った声音で告ぐ。
「すでに、梟の王子は亡くなられたのではないでしょうか」
応えはない。その可能性は、今更詮議すべき内容でもない。ただ言葉にするのが躊躇われていただけのこと。
「東涯の異神族には申し訳なきことながら、そも、堕天せし神なれば――」
「――言うな」
朗々たる声を荒々しく切り落とし、聖女は表情にかすかな苦悶を浮かべつつ言を呈する。
「此れは、私の我侭でもあるのだよ。
小さき精霊と、梟の御子。根源の呪詛を背負わされし異神に、せめて手向けを贈りたきと願う」
「我侭であれば、致し方がありませんね」
くつくつと悪戯っぽく笑う青年に、聖女はほのかに顔を赤らめて目を背けた。
「では、もうしばらく待ちましょう。女神の慈悲は、神の愛でございますれば。
――その過程で"道化師"に遭おうものなら、"あれ"に滅ぼさせれば我々の仕事も片付きます」
轟と、一際強き風が厚い窓を揺らす。
孔雀羽の天使と妖艶なる女神は、反響を背後にそっと顔を伏せた。
-+-+-+-+-+-+-
そんなどうでもいいことは、さておいて。
いつもの三人は、いつものように窮地に陥っていた。
「ぎにゃー! です!」
下品極まりない叫び声をあげるのは、メルト。これでも自称・天使である。
「ジェイ、作戦を思いついたにゃん」
「この状態から出来るのか、それは」
隣を飛ぶ小さき鎧の妖精カリアに、黒髪の召喚術士ジェイが鋭く疑問を返す。
カリアは、猫耳の生えた白銀の面兜ごと然りと頷いた。
「駄天使を投げ入れよう。襲われている間に、態勢を整えるにゃ」
「よしそれでいこう」
「待つです!? いま当人の希望を360度全方位無視した戦略が立案された気がするです!?」
容赦はなかった。
むんずと頭を掴まれたメルトが、ジェイの手によって「ふむんっ」と逃走方向から逆流する。
そこには、リスの大群がいた。
ミケリス。島の奥に眠る遺跡のうち、複雑な気候条件の合致した一帯を根城とする自然動物。
集団で活動し、縄張りに侵入した他族を大小種別問わず強制排除にかかる獰猛なネズミ目リス科の哺乳類である。
そもそも、この島には栗鼠信仰なる不可思議な宗教がある。
先住民の伝承に寄ると、栗鼠は島の創造主であり、導き手であり、崇められるべき存在なのだとか。
で、あれば。リスが、熟練の探索者を事も無げに駆逐するほど獰猛な生命体であっても、何らおかしくない。
ましてや先を急ぐ一行が急に襲われ、混乱の挙句、仲間を犠牲にして逃げのびようとすることもまた。
「いやそれはおかしいですー! ですー! ですー…! ですー……」
もはや絶叫に等しい抵抗の声は、ドップラー現象を起こしながらミケリスの大群に哀れ飲み込まれていく。
『光と闇を融合し媒体とす。刃にマナを与え実体化をアクセプトせよ――』
追撃の手が緩んだと悟るや、ワンステップでターンしたジェイが手にした大剣で空間を斬り裂いた。
「来たれ、蝿の王!」
不吉な羽音を唸らせて、眼光が赤く染まる巨大な蝿が出現する。
召喚されし蝿の王ベルゼブブは紫のオーラを迸らせ、ミケリス達へ破滅的な波動を叩き込む。
力の奔流を乗りこなすように、妖精もまた腰のナイフを抜剣して反撃に転ずる。
舞の如く艶やかにして俊敏な動作で、ミケリスを一匹づつ確実に昏倒させてゆく。
「メルト、大丈夫かにゃ!」
妖精羽がはばたき、透明な鱗粉がふわり漂う。
…と、怒涛の反撃に半歩退いたミケリス達の足下から、ボロ雑巾となった元天使が現れた。
「確保にゃ!」
その言葉を契機とし、ジェイは蝿の王を異次元へ下がらせる。
代わりに従え置いた二匹の禍々しき魔竜が前へ進み、大きく顎を開いた。
ドラゴンブレス。輝く炎が吹き荒れた戦場に、ミケリス達は散り散りになって逃げ出した。
チチチと、鳥のさえずる声が戻ってくる。河岸に伸びていた遺跡の街路は、再び自然の静寂に包まれて。
「…何かいうことはあるです?」
「先を急ごうか」
「にゃ」
暴れるメルトを背後に放置し、一行は再び前へ進み始めた。。
遠目に見えていた巨大樹の麓へ辿り着き、彼らは知る。
それは生命宿る樹木ではなく、機械じみた人工のオブジェクトであったということを。
天空へ向けて果てしなく伸びる無機質の建造物。
――かつて、神の国に剣を振り上げたバベルの塔にも似て。
光は透明な壁を越え、洋室の赤き絨毯に濃密な造影を創らせた。
「時間が、経ち過ぎたかもしれませんね」
孔雀の尾羽に似た荘厳な文様の翼が、擦れて涼やかな音を響かせる。
頭上に光輪を抱く青年は、叩きつける嵐を外界に眺めながら問いかけた。
「金星の姫。そろそろ、"あれ"を本来の位置へ返していただけないでしょうか」
されば深奥暗がりにて、細緻な装飾に象られた長椅子に横たわる聖女が、物憂げに応える。
「孔雀の君は焦っておられるの。日々を戦に明け暮れておらば、心磨耗しゆくも仕方なきことか」
「魔族の掃滅は、我が君に捧げる祭儀のひとつ。呼吸をすることに、煩わしさを感じる者などいませんよ」
青年は一息をつく。緊を張った声音で告ぐ。
「すでに、梟の王子は亡くなられたのではないでしょうか」
応えはない。その可能性は、今更詮議すべき内容でもない。ただ言葉にするのが躊躇われていただけのこと。
「東涯の異神族には申し訳なきことながら、そも、堕天せし神なれば――」
「――言うな」
朗々たる声を荒々しく切り落とし、聖女は表情にかすかな苦悶を浮かべつつ言を呈する。
「此れは、私の我侭でもあるのだよ。
小さき精霊と、梟の御子。根源の呪詛を背負わされし異神に、せめて手向けを贈りたきと願う」
「我侭であれば、致し方がありませんね」
くつくつと悪戯っぽく笑う青年に、聖女はほのかに顔を赤らめて目を背けた。
「では、もうしばらく待ちましょう。女神の慈悲は、神の愛でございますれば。
――その過程で"道化師"に遭おうものなら、"あれ"に滅ぼさせれば我々の仕事も片付きます」
轟と、一際強き風が厚い窓を揺らす。
孔雀羽の天使と妖艶なる女神は、反響を背後にそっと顔を伏せた。
-+-+-+-+-+-+-
そんなどうでもいいことは、さておいて。
いつもの三人は、いつものように窮地に陥っていた。
「ぎにゃー! です!」
下品極まりない叫び声をあげるのは、メルト。これでも自称・天使である。
「ジェイ、作戦を思いついたにゃん」
「この状態から出来るのか、それは」
隣を飛ぶ小さき鎧の妖精カリアに、黒髪の召喚術士ジェイが鋭く疑問を返す。
カリアは、猫耳の生えた白銀の面兜ごと然りと頷いた。
「駄天使を投げ入れよう。襲われている間に、態勢を整えるにゃ」
「よしそれでいこう」
「待つです!? いま当人の希望を360度全方位無視した戦略が立案された気がするです!?」
容赦はなかった。
むんずと頭を掴まれたメルトが、ジェイの手によって「ふむんっ」と逃走方向から逆流する。
そこには、リスの大群がいた。
ミケリス。島の奥に眠る遺跡のうち、複雑な気候条件の合致した一帯を根城とする自然動物。
集団で活動し、縄張りに侵入した他族を大小種別問わず強制排除にかかる獰猛なネズミ目リス科の哺乳類である。
そもそも、この島には栗鼠信仰なる不可思議な宗教がある。
先住民の伝承に寄ると、栗鼠は島の創造主であり、導き手であり、崇められるべき存在なのだとか。
で、あれば。リスが、熟練の探索者を事も無げに駆逐するほど獰猛な生命体であっても、何らおかしくない。
ましてや先を急ぐ一行が急に襲われ、混乱の挙句、仲間を犠牲にして逃げのびようとすることもまた。
「いやそれはおかしいですー! ですー! ですー…! ですー……」
もはや絶叫に等しい抵抗の声は、ドップラー現象を起こしながらミケリスの大群に哀れ飲み込まれていく。
『光と闇を融合し媒体とす。刃にマナを与え実体化をアクセプトせよ――』
追撃の手が緩んだと悟るや、ワンステップでターンしたジェイが手にした大剣で空間を斬り裂いた。
「来たれ、蝿の王!」
不吉な羽音を唸らせて、眼光が赤く染まる巨大な蝿が出現する。
召喚されし蝿の王ベルゼブブは紫のオーラを迸らせ、ミケリス達へ破滅的な波動を叩き込む。
力の奔流を乗りこなすように、妖精もまた腰のナイフを抜剣して反撃に転ずる。
舞の如く艶やかにして俊敏な動作で、ミケリスを一匹づつ確実に昏倒させてゆく。
「メルト、大丈夫かにゃ!」
妖精羽がはばたき、透明な鱗粉がふわり漂う。
…と、怒涛の反撃に半歩退いたミケリス達の足下から、ボロ雑巾となった元天使が現れた。
「確保にゃ!」
その言葉を契機とし、ジェイは蝿の王を異次元へ下がらせる。
代わりに従え置いた二匹の禍々しき魔竜が前へ進み、大きく顎を開いた。
ドラゴンブレス。輝く炎が吹き荒れた戦場に、ミケリス達は散り散りになって逃げ出した。
チチチと、鳥のさえずる声が戻ってくる。河岸に伸びていた遺跡の街路は、再び自然の静寂に包まれて。
「…何かいうことはあるです?」
「先を急ごうか」
「にゃ」
暴れるメルトを背後に放置し、一行は再び前へ進み始めた。。
遠目に見えていた巨大樹の麓へ辿り着き、彼らは知る。
それは生命宿る樹木ではなく、機械じみた人工のオブジェクトであったということを。
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書き綴ってます。
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