2010/01/14 (Thu) 偽島11日目＠日記

　新年が明けたのです！

「クリスマスの続きだろ？ 別に珍しくもねぇし」
「物質界の時間の進みは早すぎる。一々祝っていられるか」

　………。
　なんとも人生に喜びの薄い仲間たちでした。

　とはいえ、メルトにとっても新年は微妙なところがあるです。
　祝う側ではなくて祝われる側なので、つまり逆に仕事が忙しくなる時期なのです。
　この島に出張していなければ、聖者とか福者に祝福しまくる公務に追われてたのです。

　え。この島で仕事するんじゃないかって？
　あー、うん、してますしてます。してましたしてました。
　さぼってなんかいないです。ほんとうです。

　あれ？
　いまのツッコミは何処から聞こえてきたですか？
　はっ、これが神の啓示ですね！ 初体験です！
　だってほら、メルトってばまたこの世界に生誕してあんまり時間たってないものですからー。

　ともあれ、新年であってもたいして何かが変わるわけではなかったりしたです。

　旧年中に死ぬかと思うような戦闘を何回も繰り広げたので、いまは遺跡外で装備の調達中。
　メルトも装備を買ってもらえることになったです。
　我がパーティの財布は、ジェイがすべて握っているです。

「ジェイ、メルトは小遣いがほしいです！」
「無駄遣いするからダメだ」
「小腹が空いたな。ジェイ、何か軽いものを買いたいのだが」
「1PSで足りるか？」

　この差はなんですかー！

「お前、どうせツマラナイものを買っては金が足りなくなって新たにせびるだろ。
　ダメだダメだ。稼ぎが少ないんだから、もっと節約していかなきゃな」

　世の中、ツマラナイものなんて無いのです！
　万物流転、たとえその時に必要でなくとも手に入れることに因果はあり、やがて意味を悟る時が巡る。
　この世界において、在ることが許されぬ物などないと神は仰っているです！

「わかったわかった、何が欲しいんだ？」

　げんなりした表情でジェイが折れたです。
　メルトはすかさず指差したです。

「純金ランドセル……。200万PSだと？ 誰が買うんだこんなもの！」

　指をジェイに切り替えたです。

「買えるかバカヤロウ。200万も持っていたら、高級装飾手に入れ放題だ！」

　欲しいものを言えといったです。
　ジェイはとても心が狭いです。

「そのランドセルを手に入れてどうするつもりだ？」

　カリアの質問に、メルトは満面の笑みで答えたです。
　もちろん、小学校に通うです！

「……小学校？ 通いたいのか」

　神は自らに似せてニンゲンを造られました。
　メルトは、ニンゲンとはどういうものかをもっと深く学びたいのです。

「行けば、学べるのか？」

　カリアも興味津々ですか。一緒に通うといいです。
　学校とは社会の縮図。権力と陰謀の渦巻く黒くてドロドロした擬似社会が楽しめるはずです！

「しかし、この島に小学校はないと思うが」

　なんてこと！？

「このような危険な島で、授業など続けられるものではあるまい。
　庇護されるべき生徒は皆、島外に脱出しているんじゃないか？」

　ええー。
　………それは、つまんないです。

「どうやら、ツマラナイものだったらしいな。
　さぁ、次の店にいこうか」

　ジェイが財布をしまいながら呟きました。

　あれ？