2010/01/28 (Thu) 偽島14日目＠日記

　carne vale！

　なんでも、この島には新年を祝う感謝祭という風習があるらしいです。
　各国の伝統衣装やお祭りの衣装を着て、飲んで食べて食べて食べて食べられるらしいです！

「食べることばっかりか！」

　いきなり、ジェイからのツッコミがはいったです。拳骨です。…今日も容赦がないです。
　ジェイというのはウチのパーティのリーダーっぽい人なのです。
　本名は、セラフィナイト・A・ジェイドというです。ENo.477なのです。

　民族衣装のコーディネートは、ローマ時代のトーガという衣装。
　膝丈までの長さがあるワンピースのような貫頭衣をチュニックというですが、
　そのチュニックの上にぐるぐる巻きつけてある一枚布を、トーガ、あるいはトガというです。

　トーガは今の時代みたいな長方形の布ではなく、楕円形や半円形の布を使って演出するです。
　片方の肩を出しているのが、男性らしさの演出なのだそうです。
　でも、１人じゃ着られませんでした。面倒くさい衣装です。着付けに協力させられました。とんだ迷惑です。
　カラーは紫金。普通は白のような気がするです。まるで喪服用みたいです。

「いいんだよ、俺のパーソナルカラーだしな」

　そんなものですか。よくわからないです？
　トーガの材質は絹。当時のローマには養蚕の技術はないです。
　つまり輸入品。円高とか円安みたいなのに影響されちゃうアレなのです。
　今でいうウイグル自治区を横断する、シルクロードによって伝えられた文化の産物なのです。

「へえ、よくしってるじゃん」

　上司から、共和制をいかに芸術的に滅ぼして専制君主制で乗っ取り仕掛けたか、自慢されたことがあるです。
　
「……。お前の世界の神は、そういうのばかりなのか？」

　横から口出ししてきたのは、カリアです。
　本名は、マトリカリア・ティード。ENo.95なのです。
　パーティの特攻隊長兼、参謀役なのです。でも体はとてもちっちゃいです。妖精ですからー。

「お前も、似た背丈だろう」

　そんなカリアの民族衣装コーディネートは、古式キルト。
　タータンチェック、つまり格子柄をした、これまた長い布を巻き付ける形状のスカートなのです。
　ちなみに上着はブレザーなのです。キルトのために鎧を脱いだのに、兜はそのままです。シュールです。

「まだ、脱ぐべき時ではないからな」

　邪気眼？

　………。く、首筋に剣を突きつけるのはやめてほしいです？

「いいから説明をしておけ」

　古い時代のキルトは別名、フェーリア・モールというです。
　もともとはスコットランドの高地、ハイランド地方の民族衣装だったです。
　わざと歪ませてドレープを作った長い布を、ベルトで締めているです。
　ちなみに本来は男性用なのです。最近ではスカートは女性衣装になってしまっているですがー。
　まぁ、カリアは鎧姿じゃ男か女かわからないし、どっちでもいいと思うのです。

「別に、隠しているわけじゃ、ない」

　あれ。なんだか傷ついたみたいな声だったです？ メルト、そんなに変なこと言ったですか。
　実は昔、イングランドに滅ぼされて、キルトというかタータン柄が弾圧された時期があったです。
　キルトの形状もイングランド人に歪められているので、カリアの古式は珍しいモノなのですよー。

「家の普段着だったのだが、そんなに珍しかったのか」

　それはもう！ 聖公会がカソリックを殴りつけた楽しい愉しい虐殺の歴史に埋もれた文化なのです。
　その戦争は禍根となって成長し、やがてあるテロ組織を生み出すことになもがもが、

「待て、それ以上は日記の領分を越えている！」

　ジェイが口をふさいだおかげで、これ以上は何もいえなかったです。残念です。

「ところで、お前の衣装はなんだ？　代りに説明してやろうと思ったのだが、なんというか」

　なんです？

「天使……の、正式衣装にしては、どうも光沢に不思議な色合いがあるというか……」

　ふっ。違いを見抜けるとは、頭のいいニンゲンです！
　メルトが、あとでスタンプをひとつくれてやるです。

「キューピットの弓矢、羽根……か？ 骨組みがしっかりしているのが、何故か見てとれる」

　カリアも気づいたですか。そんなにメルトの花丸スタンプがほしかったですか。

　――説明するです！
　メルトこと、メルト・Ｄ・クラッシュアースの民族衣装は、みんなが見抜いたとおり、天使なのです！
　キューピッド自体はローマ神話の愛の神であって天使とは実は違うという話は、さておいて、
　故郷の正式衣装とは若干違うですが、全世界の信徒諸君が知っている"天使装束"はコレだと思うのです。

　つまり、ドレス！
　ドレスはヨーロッパ全域の社交界で纏われてきた、民族衣装のひとつなのです。
　形態は場の状況にあわせて様々。当時のファッションデザイナーの手により、千差万別なのです。
　その中でも、今日メルトが着ているのは、バレエなどに使われる舞台演劇用のエンジェル・ドレスなのです！

「いやー、どうみてもコスプレ衣装とかいうやつじゃねぇ？」
「ああ。まるで、東○ハンズで売られているかのような安っぽさを感じるのだが」

　な、なんてこというですか！

「ん、パーティ用グッズ特価5000円？ オイオイ、値札ぐらい取っておけよ」

　え。

「ごほん、あー、あー。
　バレエドレスの起源は、芸術に名高いルネッサンス期のイタリアからはじまっ」

　うううううるさいですー！
　そんな取り繕ったような起源説明はいらないですー！