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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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「抑えて抑えて…、殺しちゃダメだよ?」

 高みから見下しているという感じではなかった。殺し合いが目的ではないという心話的な暗喩を込めて。
 二匹の黒い獣は、主の言葉に喉を鳴らしながら応える。

 カリアが放つ連撃の刃が開戦の合図となった。
 妖精騎士の放つ高速の剣閃は、獣の一匹を瞬時に切り刻む。
 燃え上がる牙をふるう間もなく、クリムゾンウィングと呼ばれる魔獣はのけぞって地を跳ねた。

「グルアァァァァッ!!」

 仲間がやられたことに憤るも、飛竜を自在に操るカリアには届かない。
 
「大丈夫!? 大丈夫!?」

 痣だらけの表情に心配を浮かべて叫ぶ、エド。
 しかし、駆け寄ることは許されない。メルトの放つ光矢が行動を中断させて、場に縫い付ける。

「――ひとつ!」

 天頂から一直線に落下して、急激に角度を変えるという高機動攻撃。
 弱りはてた身体を休めることすら許されず、右方の魔獣は悶絶して己を投げ出した。

「撃ち滅ぼせ」

 ジェイが挨拶をするような気軽さで声をかける。
 彼の背後には巨大な怪獣が召喚されていた。魔竜バハムート。千夜一夜物語にも唄われる、大地を支える巨獣。
 バハムートは召喚主の命に応じ、大気中の水分を凝固させて造った氷柱を解き放つ。

 轟音をたて、砂礫の中へ圧しこまれた左方の魔獣。
 左右二匹のクリムゾンウィングという戦力を失って、エドは複雑な笑みを浮かべた。
 喜ぶでも悲しむでもなく、ただ困ったように眉根をひそめて。

『――Due,Light pallottole,Colpire』

 羽を凝縮して造り出した天使の矢が、エドの心臓を無慈悲に貫く。
 しかし、メルトの放つ光矢は愛に形状を与えたもので、相手を殺すための攻撃ではない。
 強制的に愛を打ち込むことで、戦意を消失させてピース・オブ・ラブに導く……とは本人の弁である。

「つぅぅよぉぉいぃぃぃっ!!」

 どう、と背中から大地へ倒れこんだエドは、あどけなく素直な感想を口にした。

「あっれー、だめじゃん強いじゃん。僕でも大丈夫って言ってたのにぃ…」

 誰に向けた言葉か。
 連れ合いの魔獣が、傷だらけの肉体を引きずりながらエドの元へ駆け寄り、傷を舐める。
 天使が「愛です!」と騒ぐまでもない。彼らは強い信頼関係で結ばれているのだろう。
 勝敗は決した。敗者をさらに追い詰めるような真似は、誰もしなかった。

「僕もう止めないからねー。しょーがないよね神崎おじさーん。…わー。だー」

 カリアが亜空間へ刃を納める動作を中断し、振り向いた。
 また耳にした、神崎という言葉。
 知らない名字。身に覚えのない理由。その者が何故、我らの邪魔をしろと命じるのか。

「そういえば、島の核に行ってどうするのぉー?
 あそこってこの島の管理人さんがいるところでしょ? 確か眠っててまだ起きてないんだっけ」
 あれ? 起きたんだっけ?
 ……うーん、よくわかんないなぁ。かわいい女の子だってことは聞いたよ!
 神崎おじさんロッリコーン! あはー」

 ぴょこんと上半身だけ起き上がらせてまくしたてた言葉の数々は、全て理解不能の内容だった。

「管理人? 初耳だな、詳しく聞かせてもらおう」
「まてまて。お前、悪人みてーだぞ?」

 カリアが黒刃の短剣をちらつかせて詰め寄るのを、ジェイが苦笑気味に抑える。
 情報を聞き出したくはあるが、どうも憎めそうな相手じゃない。
 改めて尋ねようと口を開くが、少年の方が先んじて言葉を紡いだ。

「あっ。そうだった、その女の子は心を失ってるんだよ確か! だよね?」
「だよねと聞かれても困るです?」

 どうしてわかんないのー、と不思議なものを見る純真な眼差しに、メルトすら戸惑いを覚えずにはいられない。

「榊さん言ってたんだぁ、心を集めなきゃって。心を集めると島が正常になるんだってさ。
 今ってこれ正常じゃないのかなぁ……どうなの?」
「ええと、たぶん正常じゃないと思うです…?」

 駄天使がふりまわされているという異常事態にジェイが思わず吹き出したところで、エドは頭の後ろへ手を組んで後ろへのけぞった。
 背を砂床に預け、

「やめたっ! とりあえず寝よう!」

 間もなく穏やかな寝息が聞こえ始める。

「なんですかー! メルトが相手してやってるのに寝るとは何事ですかーっ!」

 ぷんすかぷんと頭から湯気をだして暴れているメルトはさておいて。
 カリアは傍らのジェイへ視線をやって、尋ねた。

「どういうことかわかるか」
「さて。言葉通りの意味だろ?
 この先に管理者がいて、管理者は女の子で、女の子は心を失って寝ていて、心を集めると島が正常に戻る――
 とてもわかりやすい」

 項目をひとつひとつ指折り数えて、ジェイはにやりと不敵な笑みをみせた。

「大事なのは、その女の子がかわいくて、神崎ってヤロウに襲われそうになっているってあたりかな」
「………。ほう?」
「白馬の王子様代表としては、是非とも助けにいきたいところだがね」

 おどけた調子で言うが、眼は笑っていない。

「この少年が島のシステムではないということは、例の"造られしもの"がソレってことで
 今進むのは、たぶん、ヤバい」

 断じると、パーティーのリーダーである男は暴れる天使の首根っこを捕まえて身を翻した。
 先に見えるのは魔法陣。探索をはじめて間もないのに、遺跡外へ帰還しようというのか。
 妖精の騎士は、重ねて問う。

「この先に進まないのか」

 ジェイは応えた。

「進むさ。時がきたら――、な」

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ENo.58 夢猫ぴあの
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ENo.106 梟霊アルワン

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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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