2010/07/17 (Sat) 偽島35日目＠日記

　ひさびさにメルトの一人称日記なのです！

　思えば、気軽に日記を書いて時間短縮しようとのコンセプトだったはずなのです。
　文字数限界まで使用したいとか、複雑な物語にしたいとか、全然なかったのです。
　日々つれづれ、起きたことをさらっとまとめるだけのスタイリッシュダイアリー…

　それが、メルトのドキドキラブラブ日記の目的だったのです！
　なのにイベント戦が連日続くものだから、緊迫感とかのせいで三人称ばかりになってたです。

「現実逃避は、もうそろそろ終わっとこうぜ？」

　現実逃避ちがうです！
　これがメルトの本来のスタンダードなのです。
　爽やかにしてエレガント。硬質のグラスを弾いて響く、澄んだメロディのような。

「オマエが横文字多用する時は、たいだい何か誤魔化しているときなんだよなぁ」

　そそそそそんなことないです？
　ジェイはメルトを知った気になって誤解しているだけです？

「動揺が言葉に現れてんぞ」

　メルトは天使なのです！ 神様の創った最高傑作！ 完全なる存在！

「ああ、神様も時には間違えて不良品を作っちゃうこともあるよな。
　いいから、そろそろ現実を直視してくれ。でないと、俺が先にどうにかなっちまいそうだ」

　首のあたりから、ぐきっと異音が聞こえた気がするです。
　強引に向けられたメルトの視線の先には、白銀の鎧に身を纏う妖精カリアがひとり。　
　鋼鉄の面頬に隠されて表情はよく見えません。
　陽光を照り返し輝く鎧表は、鏡のように磨きぬかれていて一個の芸術品を観る想い。

　ただ一点を除いて。

「さっきから、どうしたにゃ？」

　にゃ。

「私の姿に、何か問題でもあるのかにゃー？」

　にゃー。

「微妙に顔を背けるのはやめるにゃ。言いたいことがあるなら言えにゃー」

　にゃ――――！

　そうです。
　ここには、恐るべき現実が圧倒的存在感を携えて存在していたのです。

　語尾にまつわる異変など些細な問題でしかない。
　現実は想像をはるかに超えて苛酷である。

　妖精騎士のドラグーンヘルムに取り付いた外耳器官。
　聴覚を司る感覚器には生気が宿り、まるで血が通っているかのようにぷるぷるで。
　だが、それが妖精本来の耳ならば何も問題はなかった。

　問題は、『猫の耳が鎧の上に生えている』という現実ッ！

　星の数ほどの伝説に彩られし、栄光のジャストアイテム！
　人類の至宝とも、世界三大ありがとうございますのひとつともいわれている、あの！

　猫 ☆ 耳 ！　

「カリアが壊れたですー！！？」

　――物語は、探索34日目マトリカリア・ティードが綴る日記へと続く。



　ジェイは思考を止めて現実を受け入れることにしたらしいです。
　さっさと寝床に入り、話も聞いてくれないです。
　でも、メルトは納得したわけじゃないです。

　問題はひとつ。

　もしかしてメルトは、この先カリアの口調を『にゃー』と記述し続けなきゃならない、です…？