2009/04/04 (Sat) 探索78日目-日記

[ Event of "四字力語,ネジエイプリルフール,四月一日は馬鹿" ]

　ネジが落ちていた。

「………。姐さん。拾うなよ？ 絶対拾うなよ？」

　一角兎の縫いぐるみ"アルワン"が、戦々恐々とビビリ声をかけてきた。
　明らかに、ネジにヤバい力を感じるから近づいちゃらめー、という表情で。

「あああああ、地文がすでにおかしい。だから拾うなって言ったのにー！？」

　まさか。ダメと言われたものを拾わないなんてことがあるものか。
　軽く広げた手の平ほどの大きさのネジをうっかり持ち上げた瞬間、煙の如く蒸発して吸い込まれたなんてあるものか。

「明らかに精神変調系の呪力じゃねーか！ 姐さんも精霊力で感じ取ってたはずだろ！？」

　大喝一声。私の軽挙妄動を叱るべく声を荒げるアルワン。
　ごめんなさい。以後、鉄心石腸の心得をもって自重自戒します。

「ぜってぇ反省してねぇ。…なんだ、四字熟語を喋っちまうとか、そういう口語作用系の術式か？」

　その答えはNOと言わざるを得ない。
　オチも決めず苦心惨憺を重ねる日記に、呪力も脈絡も設定もあるものか。
　この四字熟語は高度100センチメートルの彼方から電波でビビビビビ。

「……。だんだんアレな方向に饒舌になってきたな、姐さん。
　思考がネジの呪いに影響されてる。言語中枢を狂わせる系……いや、別人格系の操作術式か？」

　アルワンが、状況を中二病的解釈で明朗闊達に分析している。
　高論卓説だが、揣摩憶測な意見と言わざるを得ない。
　なぜなら、今の私はとてもフリーダムな思考に支配されているからだ。
　今ならノートに名前を書き込むだけで、あらゆる悪人をKILLできそうな気がする。

「なんだろう、この麻薬かなにかに支配されちゃった風なネジの外れっぷり」

　何を言っているのかね、アルワン君。
　私は昔から、事実無根で奇々怪々な性格だったじゃないか。

「言ってる意味わかんねぇよ！？　むしろいつもは、天衣無縫で確固不抜ってとこだろ。あと、無知蒙昧」

　失礼な。ぷんぷん。
　身体はオトナで心はアダルト。名探偵が君のはーとをつかまえちゃうゾ。

「ゾ……。……うあああ、ヤバすぎだろ！？
　いくら脳内垂れ流しで考えたまま綴ってるとしても、それじゃ中の人の精神まで疑われるぜ！？」

　メタな発言禁止。
　しかし、ここで私は問題提起せざるを得ない。

「…なんだ？」

　ネジエイプリルフールと四字力語、一挙両得のつもりだったのに。
　ついでに、どこかに四月一日は馬鹿も紛れ込ませれば三種のイベントが渾然一体に仕上がるはずだったのに。

「だったのに？」

　もう、ネタが無くなってしまった上に、ここにきてオチも思いつかないんだ！

「知るかー！？　…なぁ。お前、本当はふれあの姐さんじゃなくて、俺たちの中の人だろ」

　はっ。見破られた！

「まさか、それがオチだとか、それで俺様を騙して四月一日イベントの条件もクリアとか考えてないよな？」

　………。

「………」

　・・・・・・・・・・・・・・・。

「あっ、逃げた！？　これにて一件落着とか思ってんじゃねーぞコラァ！」