2010/12/03 (Fri) 偽島49日目＠日記

+斜+―――うん、上出来だ。よくやってくれたね、サンドラくん。-斜-


　なんということですか！
　衝撃の事実が発覚してしまったです。
　ありえないと思っていたことが、現実になってしまったです！
　事態は、神様でさえも推測しえない驚愕の事件に発展してしまったです？
　この呪われた運命の代償、誰が責任とってくれるですか。

　カリアの猫耳が、……もげてしまったですー！

「もげたいうな！」

　ぱすっ、と頬っぺた1mmの隣を剣先が突き抜けていったです。
　もちろんメルトはなにもいってないです？

　両手をあげるメルトに、カリアはぶつぶつと悪態をつきながら背を向けたです。
　ふわりと空気をはらんで揺れる、絹糸の如く艶やかな白金の長髪。
　そう、カリアは騎士兜を外しているのです。
　48日目にしてはじめて見る、仲間の素顔なのでした。
　まさかあの猫耳が、本物じゃなかっただなんて誰が想像したでしょう。

「いや、さすがにオレは気づいてたが」

　ジェイは黙ってるです。これはカリアとメルトの問題です。
　
「えぇー…？」


+斜+―――約束は守ろう。…マナに冒された君の過去は、私が消してみせる。-斜-


　しかし問題はそれだけに留まらないです。
　むしろ、状況としてはこちらのほうが切迫しているかもしれないです。

　なんと、カリアは女の子だったです！

　だまされたです！
　いたいけな天使のほのかな恋心をどうしてくれるですかー！

「え…、あれ？ お前まさか、そんな設定があったのか？」

　さっき付け加えました！

　…ジェイが頭痛を抑えるような表情であっちいってしまったです。
　メルト、なにかおかしなこと言ったです？


+斜+―――私の名はラザレス。忌々しい過去を持つ仲間たちを救うために、今ここにいる。-斜-


　まぁ、そんなことはどうでもいいです。
　騎士兜を脱いだカリアは、なんと可憐な少女だったです。
　聞けば、数ある妖精種のなかでも花の系譜に関係するピクシーなのだとか。


+斜+―――君たちが何を目的にこの遺跡にいるのかは知らない。-斜-


　メルトも知らなかったです。中の人も初耳な話ばかりだったです。


+斜+―――私よりも大事な使命を持っているのかもしれない。-斜-


　もちろんです。
　おかげで、カリア宛てに来ていた愛の矢を心臓にぶちこむ依頼がすべて白紙になってしまったです。
　おっとこれは口にしちゃいけないことでした。メルトの命にかかわるです。


+斜+―――…しかし私は、彼らの足を止めぬため…、彼らの希望を消さぬため…-斜-


　さっきからうるさいです？
　メルトがいま考え事してるです！ ちょっと黙るです！

　だいたい、勝手に希望が消えたことにしないでくださいです。
　この島は女性の数が圧倒的に多いとはいえ、男性だってそれなりに存在してるです。
　中には、カリアに愛を告白したがる男性もいっぱいいるに決まってるです。
　愛のニーズを適正に結ぶことがメルトの仕事なのです。喧嘩うってるですか！


　視線をあげれば屋根の崩壊した廃墟の前、涼しげな瞳をもつ青年がとても困った表情を浮かべている。
　カッコよく決めたシーンが一人相撲であったことに気付き、ひどくショックを受けているかのような姿。
　力なく落とした肩が、背中が、強い孤独にふるえている。

　誰です？

　男は、キッと眼光に本気の怒りをのせて睨みつけた。

「…ここを死守しなければならないッ！！」

　叫び、背に固定した鞘から大剣を抜き放つ。
　強引に続けた科白。青く透き通る瞳は、かすかな涙に濡れて。
　殺気がふくれあがる。全てをなかったことにしちゃいたいというオーラが、怒涛の勢いで吹き荒び。

　あれ？　待つです？
　どうしてこのニンゲンと戦う展開になってるですか？
　メルト、なんのいきさつも聞いてないですよ……？