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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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 怪訝な表情に囲まれて、狂気と冷徹の視線が交錯する。
 先に状況を動かしたのは、隣にいた神崎だった。彼は指に挟んだ煙草を燻らせて呟く。

「…ったく、面倒な奴らだ」

 理解する者と理解せざる者。識る者と識らざる者。
 立場の違いは天地ほどに懸け離れているが、どちらも終着点が同一であるこということが厄介だ。
 譲れない意志が、戦闘という野蛮な解決に繋がることは、とても――とても、面倒な話である。
「では今回は……この力を借りるとしましょうッ!!」

 榊の糸目に蒼い光が宿る。ブラックのスーツよりも色濃い闇を纏い、ヒヒッと嗤う。

「チッ。何がどうなってんのか知らねぇけど……
 つまんねえ戦い方したら、どうにかしちまうからな?」

 バンッと空中に魔法陣を刻みつけるジェイ。黄金の輝きがエノク文字の召喚印を形作る。
 ざわめく大気が軋み、優雅なる六枚羽の大天使を呼び覚ました。
 ジェイは、澄んだサファイアカラーの下翼に軽く口づけて命じる。

「護れ」

 アともオともつかない可聴領域を越えた唱声が風を満たす。
 頭上の光輪が拡散し、ジェイやカリア、メルトやサバスの身をほのかな白に包み込んだ。

「遭遇戦というには、いささか因縁めいているようだが。
 ――その力、封じさせていただく!」

 カリアが宙に踏み込んで翔ける。
 妖精の鱗粉を推力に換え、放つ不可視の楔が神崎の腕を、脚を撃ち貫いた。 

「………」

 神崎は舌打ちして、地を蹴って軽く後退した。
 入れ替わりに前線へ飛び出してきたのは榊だ。五指に怪しい蒼炎を浮かべ、

「まぁ楽しみましょう! ヒヒッ!」

 腕を振るう。同時に、凶悪と評せる魔法の波濤が迸った。
 ジェイが召喚したラファエルの加護が、耐えきれず次々と砕け散っていく。
 意識を縛って操るだけに本来の神力を発揮できないとはいえ、大天使の加護を苦も無く削ぎ落とすとは!

「Hvergelmir primavera,Venire,La Killing ridere」

 灼熱に燃え猛る竜牙の矢が、カリアの隣をかすめて疾った。
 もちろんカリアは驚かない。煽られて揺れる金髪も柔らかに、微動だにせず敵を睨む。
 駄目天使を縮めて駄天使と毎度叱ってはいるが、メルトという仲間の呼吸は十分心得ていた。

「おおっと危ない危ない」

 左腕が紅炎に喰われて燃焼しているというのに、他人事のように榊は喜悦を漏らす。
 サバスが動いた。

「おっと……着るのを忘れていたな」

 光源の激突に晒されて羞恥の感情を思い出したのか、戦場でいそいそと足元のジャケットを着用しはじめる。
 無事着替え終わり、すぐに二本指で召喚式を描き出す。
 美しい筋肉美に騙されがちだが、サバスという男の本質はサモナー(召喚術士)なのだ。
 だが、

「えぇい邪魔だあぁぁッ!!」

 ばりんと肉を荒ぶらせ、サバスは動きを阻害するジャケットを破壊して全裸に変態した。
 衣服とは、いったいなんだったのか。

「さぁ来るが良い、助手よ……」
「ま、ま…、ますたあぁぁぁますたぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
 私がんばるますよぉっ!! がんばりゃりま、ま…ますたあぁぁぁっ!!!!」

 異質なルーン文字の魔法陣から滲み出るリトルウィザード。
 サニーと出会ったとき、一緒にいた小さな魔法使いだとジェイは気づく。全裸とは別人だったのか。
 リトルウィザードは、大きな眼にたっぷり涙をあふれさせながら叫ぶ。

「隕石落ちろおぉっ!!」

 暗転。雲を割って出現した巨大な岩塊が、大地に影を落とす。
 元気ですねぇと笑う榊の隣で、神崎が拳を握りしめ――隕石を、衝撃波で割り砕いた。

「…スミマセンねぇ………私は気が短いのですよッ!!」

 榊が狂喜に頬を歪ませながら、瘴気にも似たどす黒い魔力を解き放つ。
 大天使の加護が穢され、裏返り、邪気に満ちた破滅のエネルギーに犯されていく。

「させないです!」

 緊の音を立てて、メルトが力の渦根へ飛び込んだ。
 エーテルの羽が四散する。下級天使にしては驚くべき神力で、化物の魔術を抑え込みながら。

「なるほど? 私を滅ぼすために特別な調整でもされましたか、哀れですねぇ!」
「赤髪の小精霊は…、どうした、です?」
「ククッ。遊び飽きた道具をどうするか、貴女も神の道具なら理解るんじゃないですか?」
「………!」
「愛していますよ貴方をッ!! もっと私を楽しませてくださいねぇぇッ!!」
 
 笑みをみせないメルトの素面に、かすかな怒りが含まれる。
 榊は愉快に顔を歪ませながら、過剰な魔力に更なる力を注ぎはじめた。

「さぁさ荒れ狂いなさい私の狂気ッ! ただし重要文化財だけは傷つけぬようッ!!」
「ようやく――隙を…見せたな!」

 激突して暴れ狂う力の重圧を切り裂いて、カリアが跳ねた。
 背に大きく振りかぶった剣に勢いをつけて、妖精の魔力をもって薙ぎ払う。
 不意を突かれた榊が、術式行使をキャンセルして障壁を張り巡らせた。
 しかし、カリアの斬撃は防護を綺麗に一閃する。

「よう、道化師。元天界首脳を代表して、代わりに挨拶するぜ?」

 ジェイの指先が鳴る。
 背後に従えた蠅王の化身達が、捻じれた羽を耳障りに震わせた。
 ベルゼブブの告げる黒死の到来。更にラファエルの穿つ光の槍が、防護の亀裂に雪崩れる。

 炸裂、という言葉が適格であろうか。
 連携した一連の攻撃は、三人が培ってきた経験の結集。
 互いの事情も詳しくは知らないし、決して仲がいいといえる彼等ではないが、呼吸の合い方は尋常ではない。

 しかし、煤煙が薄れた先で肌を炭化させた榊が、それでも口を絶笑に釣りあげて立っていた。
 
「この程度で楽しんでいただけますかなッ?」

 変態が眉間に親指を押しつけながら、何か得心いったらしく頷いた。

「なるほど…お前も脱いだということか」

 神崎が、くだらなさそうに首を振った。

「時間稼ぎはもう充分だな」

 無造作に蠅へ投げた煙草が、轟炎を孕んで爆発した。
 蠅王の化身を一撃で落とす火力の高さに表情を嶮しくし、ジェイは再び召喚陣を書き起こす。
 幻想の域に潜む魔獣を次々と喚びつける召喚使いに、榊が消し炭姿で元気よく語りかけた。
 
「おやおやおやッ! やはりかなりのマナを吸っておられる……
 これは一筋縄にはいきませんねぇ、あぁこわいこわいッ!!」

 微笑みすら浮かべ、神崎を振り返り。

「十分な時間稼ぎはできました、そろそろ引きどきですかねぇ神崎さん?」
「……相変わらず、余裕だな」
「いえいえ、過剰なハッタリですよ。…ククッ!
 ……さぁて」

 身構えるカリアの目前で、榊は、紳士の礼節を見せて会釈した。

「楽しい時間をありがとうございます!
 天秤の傾きが解消された今この場、我々は何も手出しはしませんので思うが侭に進んでくださいませッ!
 またお会いすることがあるかもしれませんが……その時には既に色々が終わっていることを願いたいものです」

 その言葉に、神崎の眉根が潜められた。

「おい、榊……てめぇ、何を言っ…」
「私は世界の流れに身を委ねるのが好きなのですよ、神崎さん。
 そしてもう1つ大好きなことがあるのですが……、まぁ今言ってしまうと何も面白くありませんので。
 …ヒヒッ!」

 神崎は腑に落ちない様子で、新たに点けなおした煙草の根を噛みしめる。
 榊は無視し、自身に同じく満身創痍の様相となっているメルトへ目を向けた。

「天使に身をやつしてまで逢いに来てくださったのに残念ですが、ここでさようなら!
 次は、違う立場で逢いたいものですねぇ?」
「逃がさ、ない、です…」
「ほら、今のうちですよ。神崎さんがヘロヘロのうちに行ってしまいなさいッ!
 怒らせると面倒なんですから、この方は」

 榊が、シッシッと甲を向けた手を揺らした。
 ――急に視界が、ぐるりと回転する。

「次元干渉!?」

 空間を歪曲する斥力の出現に、カリアが叫ぶ。
 界渡りを得意とする妖精ならではの察知。尖らせた羽から零れた鱗粉が、捻じれた座標の安定化をはかる。
 しかし、状況は一瞬で方を付けられた。

 目前に榊も神崎も姿なく、広がるは戦場から、かなり離れた丘の上。
 レッドジェムオーブの稀少鉱脈が剥き出している岩肌は、寒々しい風を流しながらも深い静寂に包まれている。

 茫然とする一同の背後で、サバスは鼻を鳴らす。

「……ふむ、では先を行くとしよう。なかなかのサポートだったぞ、さらばだ」

 ボクサーパンツを履きながら、悠然と去っていった。

「勝った……わけはねぇよな?」

 ジェイが呟く。カリアが、握る剣柄に憤懣を込める。
 その背後で、どさりと音が鳴った。メルトが気を失って、土に堕ちた音だった。

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ふらふらと漂う木片。
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書き綴ってます。

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