歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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かつて、ノエル・A・ブレッシングレインという銘を与えられた天使がいた。
躍動的な肉体、柔らかな笑顔、目的を見据える強い眼差しが印象的な少女体アンゲロス。
彼女は"学園"と通称される天使の教練場、あるいは調整の結界において期節のトップに輝いている。
格別優秀な天使は複数の聖務を経て大天使へ昇格し、隊に所属して更なる聖務に就く。
未来を嘱望された、エリートとも言えるだろう。
――だが、運命は過酷へ進む。
躍動的な肉体、柔らかな笑顔、目的を見据える強い眼差しが印象的な少女体アンゲロス。
彼女は"学園"と通称される天使の教練場、あるいは調整の結界において期節のトップに輝いている。
格別優秀な天使は複数の聖務を経て大天使へ昇格し、隊に所属して更なる聖務に就く。
未来を嘱望された、エリートとも言えるだろう。
――だが、運命は過酷へ進む。
通称"道化師"と呼ばれる、多くの次元を破壊してのけた特A級犯罪者のひとり。
性別不明、正体不明、千の顔を持ち、千の声色を使い分けるとされる化け物。
狙われし悪魔は地獄の果てに隠れても誅殺されると畏怖された"赤豹"の能天使でさえ取り逃がす。
彼を追う特別対策室はすでに別の部署へと異動しているが、悠久を経て掴みきれない化け物は既に魔王クラスと言えよう。
――彼女は、その運命に巻き込まれた。
"学園"の調整を終えたノエルは、熾天使室と呼ばれる諸天使の最高機関に直接召集される。
それ自体は最高級すら凌駕する栄誉であり、異例ともいえる大抜擢であった。
だが、大天使にも昇格していない聖性の低い天使が、熾天使の聖務をこなすことが本当に出来るものだろうか?
至高なる神から直接言葉を賜り、魔王との直接交戦、聖者の生誕と入滅にすら携わるのが九階級最上の熾天使である。
――当然、最悪の形で失敗した。
小さな島だった。幾世紀にまたがった遺跡が並び立ち、冒険を観光に賑わう離島。
上空から観える全景に意味はない。捻じれた次元が、地下に、多層に渡る空間を成形している。
神族すら直視適わない謎の島には、多くの天使が派遣された。
そして悉くが、還らぬ者と化す。あるものは精神が砕け、あるものは魔族に堕ち、あるものは生命を枯れさせた。
神族どころか魔族も命を落とす謎の小島は、悪夢の象徴であり禁忌の名をもって知られていく。
――彼女の失敗は、最初から定められていた。
同期の天使は言う。ノエルという天使は、軍団長の露払いに殉じて死ねと命じられたのだと。
彼女が預かった聖務は、島へ迷い込んだ東涯の異神族から神格を剥奪する聖告と執行。
島の全容解明に就く仲間とは一風変わった使命は、熾天職初心者の特別割り振りであったのかもしれない。
かの神族は神務を投げ出し、ひとりの精霊と共に在る。全を守護する神族にとって許されざる離反。
聖性が魔性に堕する前に神力を奪い尽くさねば、或いは魔王のひとりが産まれてしまうだろう。
――神に抗う権限を、神に従う天使が持たされたのだ。
経験と調整を経た天使ではない。ノエルは神に忠誠を誓う純粋な天使であった。
そして、すこぶる優秀であった彼女は、島の危険を掻い潜り裏切りの神を捜しあててしまう。
黒猫のぬいぐるみに姿をやつした、梟の神は告解する。
曰く。神は生来神族にそぐわぬ異質で在りながら、ひとりの少女のために神座を得たということ。
曰く。赤髪の小精霊である少女は、身内をすべて滅ぼされ、"道化師"に実験体として呪いをかけられたこと。
曰く。神は幼馴染である少女をとても大好きで。少女のために神の全てを投げうったということ。
ノエルは、東涯の異神族が置かれた状況に同情してしまった。
神が小精霊のために命を投げ出した時、彼女もまた、神のために命を投げ出したのである。
小精霊を助けるという神の願いを成就させるために、天使の力を譲り渡したのだ。
(そうね。きっと、死ぬことは特に大した問題ではないのよ)
意識消滅の瞬間に想ったのは、"学園"同期の天使……大切な親友のこと。
聖ウァレンティヌスを口づけで誓った相手。神に忠誠を捧げる天使にとって、堕天にも近い背徳。
熾天使室の召集に怒りをみせてくれた彼女に、死なないと約束したのに守れなかった。
でも、
――ノエル・"アニエス"・ブレッシングレインの魂は楽園に導かれることなく、神に融けた。
「でも、僕にはわからないんだ。
神如きに命を捧げることに、何の価値があるのかということが」
神座に序列された隠銘を持ちながら、天使として生きるもうひとりの少女は怒りを顕わにする。
神に愛を捧げる天使の構図なら、彼女の罪は背徳とされはしなかった。
天使に愛を捧げる天使の構図だから、たとえ聖務に成功を収めても殉職の形で葬られただろう。
神殺しの為、雀蜂の受肉体を与えられたノエルの毒針には蜜蜂のような逆鈎が備わっている。
刺せば永劫に抜けぬ。いや、抜けるは蜂のハラワタであれば。
どの形で死ねるのがノエルの幸せだったのか、もうひとりの少女にはわからない。
天に裁かれるよりは……放逐されし神とはいえ、地上神と融合して潰れる方が幸せだったろうか。
少なくとも、天上神の示した運命に逆らうことは出来たのだから。
もうひとりの少女は傲然と胸を張る。
熾天使室に喚ばれ、更に"孔雀の君"と呼ばれる最高執政官のひとりの私室へ招かれて誓う。
「もう、ノエルはいない。恐らく梟神アルワンもすでに世にいない。
だが二人に命を救われた赤い髪の"コロボックル"だけは救ってみせる」
孔雀の君は微笑む。
彼だけは知っていた。少女の正体が純粋な天使ではなく、ローマ神族の流れを汲むことを。
「宰相閣下や司法聖官閣下の顔を見たかい? 君の権限を取り上げられた瞬間の顔。
あの鉄面皮が驚愕に崩れた姿を拝見できただけで、私は満足だよ」
唇に曲げた指を宛がいながら、声を押し殺して背筋を震わせる青年天使に、少女は苛立ちを隠せない。
親友と同じ運命を辿る自分を救った相手が、親友を勝手な運命に巻き込んだと想像していた天軍の軍団長だった。
これは、一体どういうことか。
「ハニエルにも許可は得た。君はしばらく"金星の姫"預りの出張キューピッドとなる」
「……ああ。何処からバレたのかと思いましたが、くそばばあが黒幕ですか」
「テッサリアの最高神族を"くそばばあ"呼ばわり出来るのは、君ぐらいのものだろうね」
「面と向かっては言いませんよ、僕も命は惜しいですから」
愚痴りながら顔をそむける少女を、孔雀の君は呆れ口調でたしなめた。
「それにしても君は、表と裏の顔を使い分けるのが上手いね?
今の君は裏の顔。つまり、ローマ神族の顔なのかな」
「違うです? こちらの方が表です?」
急激に口調を変化させた少女に、青年は再び楽しそうに笑いを浮かべる。
「征きなさい、ヴォル…いや、天使メルト・D・クラッシュアース。
どうせ神の掌で踊らされる生き方しか、私たちには出来やしない。
でもね、掌から外に出られなくても、世界の果てへ視線をとばすことは出来るのだよ」
孔雀の君は立ち上がる。
頭上に光輪を閃かせ、異称の理由ともなる孔雀模様の光翼を揺らしながら、窓の外へ指をさし。
「天使とは聖者を導き、悪魔を滅ぼす神の尖兵だ。
構わないよ。ついでに"道化師"も殺せるようなら排除して構わない。
だが、忘れてはいけない。君は"受苦の愛"と"心と魂"から産まれた"喜び"だ。
飽くまでも君は、赤髪の小精霊を救うことが第一義だということを」
――メルトは回想する。
力尽きて失った、正気と微睡の狭間で夢を見る。
ノエル、君は何処にいるの? 僕は此処にいる。来たよ、運命に抗う者として。
君が選んだ命を、助けに来たんだ――。
性別不明、正体不明、千の顔を持ち、千の声色を使い分けるとされる化け物。
狙われし悪魔は地獄の果てに隠れても誅殺されると畏怖された"赤豹"の能天使でさえ取り逃がす。
彼を追う特別対策室はすでに別の部署へと異動しているが、悠久を経て掴みきれない化け物は既に魔王クラスと言えよう。
――彼女は、その運命に巻き込まれた。
"学園"の調整を終えたノエルは、熾天使室と呼ばれる諸天使の最高機関に直接召集される。
それ自体は最高級すら凌駕する栄誉であり、異例ともいえる大抜擢であった。
だが、大天使にも昇格していない聖性の低い天使が、熾天使の聖務をこなすことが本当に出来るものだろうか?
至高なる神から直接言葉を賜り、魔王との直接交戦、聖者の生誕と入滅にすら携わるのが九階級最上の熾天使である。
――当然、最悪の形で失敗した。
小さな島だった。幾世紀にまたがった遺跡が並び立ち、冒険を観光に賑わう離島。
上空から観える全景に意味はない。捻じれた次元が、地下に、多層に渡る空間を成形している。
神族すら直視適わない謎の島には、多くの天使が派遣された。
そして悉くが、還らぬ者と化す。あるものは精神が砕け、あるものは魔族に堕ち、あるものは生命を枯れさせた。
神族どころか魔族も命を落とす謎の小島は、悪夢の象徴であり禁忌の名をもって知られていく。
――彼女の失敗は、最初から定められていた。
同期の天使は言う。ノエルという天使は、軍団長の露払いに殉じて死ねと命じられたのだと。
彼女が預かった聖務は、島へ迷い込んだ東涯の異神族から神格を剥奪する聖告と執行。
島の全容解明に就く仲間とは一風変わった使命は、熾天職初心者の特別割り振りであったのかもしれない。
かの神族は神務を投げ出し、ひとりの精霊と共に在る。全を守護する神族にとって許されざる離反。
聖性が魔性に堕する前に神力を奪い尽くさねば、或いは魔王のひとりが産まれてしまうだろう。
――神に抗う権限を、神に従う天使が持たされたのだ。
経験と調整を経た天使ではない。ノエルは神に忠誠を誓う純粋な天使であった。
そして、すこぶる優秀であった彼女は、島の危険を掻い潜り裏切りの神を捜しあててしまう。
黒猫のぬいぐるみに姿をやつした、梟の神は告解する。
曰く。神は生来神族にそぐわぬ異質で在りながら、ひとりの少女のために神座を得たということ。
曰く。赤髪の小精霊である少女は、身内をすべて滅ぼされ、"道化師"に実験体として呪いをかけられたこと。
曰く。神は幼馴染である少女をとても大好きで。少女のために神の全てを投げうったということ。
ノエルは、東涯の異神族が置かれた状況に同情してしまった。
神が小精霊のために命を投げ出した時、彼女もまた、神のために命を投げ出したのである。
小精霊を助けるという神の願いを成就させるために、天使の力を譲り渡したのだ。
(そうね。きっと、死ぬことは特に大した問題ではないのよ)
意識消滅の瞬間に想ったのは、"学園"同期の天使……大切な親友のこと。
聖ウァレンティヌスを口づけで誓った相手。神に忠誠を捧げる天使にとって、堕天にも近い背徳。
熾天使室の召集に怒りをみせてくれた彼女に、死なないと約束したのに守れなかった。
でも、
――ノエル・"アニエス"・ブレッシングレインの魂は楽園に導かれることなく、神に融けた。
「でも、僕にはわからないんだ。
神如きに命を捧げることに、何の価値があるのかということが」
神座に序列された隠銘を持ちながら、天使として生きるもうひとりの少女は怒りを顕わにする。
神に愛を捧げる天使の構図なら、彼女の罪は背徳とされはしなかった。
天使に愛を捧げる天使の構図だから、たとえ聖務に成功を収めても殉職の形で葬られただろう。
神殺しの為、雀蜂の受肉体を与えられたノエルの毒針には蜜蜂のような逆鈎が備わっている。
刺せば永劫に抜けぬ。いや、抜けるは蜂のハラワタであれば。
どの形で死ねるのがノエルの幸せだったのか、もうひとりの少女にはわからない。
天に裁かれるよりは……放逐されし神とはいえ、地上神と融合して潰れる方が幸せだったろうか。
少なくとも、天上神の示した運命に逆らうことは出来たのだから。
もうひとりの少女は傲然と胸を張る。
熾天使室に喚ばれ、更に"孔雀の君"と呼ばれる最高執政官のひとりの私室へ招かれて誓う。
「もう、ノエルはいない。恐らく梟神アルワンもすでに世にいない。
だが二人に命を救われた赤い髪の"コロボックル"だけは救ってみせる」
孔雀の君は微笑む。
彼だけは知っていた。少女の正体が純粋な天使ではなく、ローマ神族の流れを汲むことを。
「宰相閣下や司法聖官閣下の顔を見たかい? 君の権限を取り上げられた瞬間の顔。
あの鉄面皮が驚愕に崩れた姿を拝見できただけで、私は満足だよ」
唇に曲げた指を宛がいながら、声を押し殺して背筋を震わせる青年天使に、少女は苛立ちを隠せない。
親友と同じ運命を辿る自分を救った相手が、親友を勝手な運命に巻き込んだと想像していた天軍の軍団長だった。
これは、一体どういうことか。
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「……ああ。何処からバレたのかと思いましたが、くそばばあが黒幕ですか」
「テッサリアの最高神族を"くそばばあ"呼ばわり出来るのは、君ぐらいのものだろうね」
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今の君は裏の顔。つまり、ローマ神族の顔なのかな」
「違うです? こちらの方が表です?」
急激に口調を変化させた少女に、青年は再び楽しそうに笑いを浮かべる。
「征きなさい、ヴォル…いや、天使メルト・D・クラッシュアース。
どうせ神の掌で踊らされる生き方しか、私たちには出来やしない。
でもね、掌から外に出られなくても、世界の果てへ視線をとばすことは出来るのだよ」
孔雀の君は立ち上がる。
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「天使とは聖者を導き、悪魔を滅ぼす神の尖兵だ。
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