2009/12/23 (Wed) 偽島８日目＠日記

　なんと、両者ノックアウトしてしまったです。
　ジェイもカリアもミニチュアドラゴンも、たいしたことなかったです。
　修行、足りてなくないですか。

「後ろから味方を攻撃した貴様に、言・わ・れ・た・く・ねぇ！」

　――ギリギリギリ。
　痛い痛い痛い痛い痛い。
　こめかみを拳骨で押さえ込まれて動かすのはヤメテヤメテヤメテ。

「……想像以上に、動きが制限されているようだ」

　カリアが、ペットの喉元を撫でてやりながら、呟いたです。
　飛竜は目を細めて、ごろごろいってるです。気持ち良さそうです。にくたらしい。

　そんな１人と１匹を横目で見やりながら、ジェイが何か思案していました。

「島を覆う魔力――だけじゃ、無いな。
　あらゆる生命体を取り込み、同時に能力制限を行える術式なんて存在しないはずだ。
　創世レベルの条件設定を組み上げられる術者がいるなら別だけどな」
「そのような者が私利私欲で行動しているなど、想像したくはない」

　長い溜め息が２つ。
　ああ、２人から幸せが逃げていくのが見えるようです。
　しかし、ここはメルトの出番です。
　たーららったらー、キューピッドアロー♪
　この矢は心臓を貫けば強制的に恋愛状態に陥れるですが、脳髄を貫けば強制的に幸福状態にー

　痛い痛い痛い痛い痛い。

「考えてることを口から垂れ流してくれる分には、害は無くていいんだけどな？」

　ぐぬぬ。このままでは、メルトの顔が縦長にぺちゃんこになってしまうです。
　この窮地から脱するために、妙案を思いつかなくてはいけないです。

「試しに訊こう。言ってみるがいい」

　遺跡外に逃げ帰――痛い痛い痛い痛い痛い。

「何で後ろ向きな考え方しか出来ねぇんだよ、お前は！」

　そ、そんなこと言われても困るです！
　危険にはなるべく近寄らないようにしなさいって、パパやママからしつけられてるです！？

「天使だろ、テメェは！ 創造主はいても、両親がいるかコノヤロウ」
「……待て、ジェイ」

　強めの口調で制したのは、カリアでした。
　メルトを救ってくれるなんて、珍しいことです。好感度アップです。３ぐらい。
　ちなみに１０ポイント溜まると、デレ期に突入してやるんだからねっ！

「うるさい、黙れ」

　のおおおっ！？ ダメですダメです！
　飛竜の噛み付き攻撃は、ジェイのぐりぐりより痛いし血が出るですからしてー！

「だが、莫迦天使の言うことにも一理ある。
　私達は今まで才覚を頼りに戦ってきたが、力任せの突破は危険であることが証明されたわけだ。
　ここは一度本陣へ引き、能力を補助する装備を整えて出直す必要があるのではないか？」
「……もっともだな。
　能力制限の術式を解析するのは時間がかかりすぎるし、何より先に進まなきゃいけねぇ。
　りょーかい、だ。次に魔法陣到達したら戻るとするかね？」

　――コイツの意見に従うってのは、癪だが」

　ジェイがメルトを指差して何か言ってますが、メルトは気にしている場合じゃなかったです。
　こら、そこの竜畜生。
　メルトは餌じゃないですから、鼻息荒くして追いかけてくるのはやめるですー！？