忍者ブログ

歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

2017/09    08« 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  »10
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 王は言った。

「愛しき娘。愛しき女の忘れ形見。齢を増すごとに似てくる先妻の面影は妖しく。
 鳴呼、生まれ変わりならば我が腕で抱き潰すことに、如何なる禁忌の壁も存在せぬだろう」
 王妃は言った。

「政略の後妻成れど真心に愛を捧ぐ。故に、娘に気狂う王の寵愛を取り戻すため、秘して弑すは当然の理。
 鏡の悪魔の導きに従えば、踊らされしは赤い靴。情熱よりも灼けた憎悪に融けて」

 王子は言った。

「私は死体を愛したのだ。静謐に眠る姫君よ。されど、生き返ってしまったものは仕方がない。
 未来の王妃には栄誉と金と権力を与えよう。だが、私の愛だけは死ぬまで渡さない」

 王女は言った。

「優しいお父様。美しいお母様。夢見たのは白馬の王子様。愛と希望に満ち溢れた夢の未来。
 壊れたお父様。焼けたお母様。夢砕けたは現実の王子様。死と絶望を撒き散らす傾国の夢」

 天使は応えた。

「愛をかなえましょう。恋をかなえましょう。夢をかなえましょう。望みをかなえましょう。
 幸せに殺しましょう。崖のそばで告解する者へ、神の加護を与えて突き落すのが使命」

 キューピッドの矢は黄金の色をもって愛を射る。
 耐えがたき誘惑、抗いがたき恋心が、大事なひとへ淫れた牙を剥く。
 微笑む天使は慈愛に満ちて、堕ちゆく恋人に背を向けて次の愛を探す。


 ――そんな、お仕事。


            -+-+-+-+-+-+-

「正しいという言葉が、すべての人にとっても正しいとは限らないのさ」

 ジェイが言う。
 カリアは一瞬だけ視線を流して、訊ねた。

「それが、お前の哲学か?」
「哲学…じゃ、ねぇなぁ。どちらかというと、理由かな」

 神に背くための、理由。
 だが、それは口に出さない。声で自己確認するまでもないし、全てを語る必要もないからだ。

「天使が悪魔に堕ちる条件って、なんだと思う?」

 不意の問いに、妖精は眉をひそめた。
 妖精にも邪妖精と呼ばれる存在はいる。しかしどちらも妖精種であって、別種の存在ではない。
 しかし、天使と堕天使は決定的に違うという。
 霊翼の色、光輪の有無、属性の反転などにより、異なる系統樹に所属が変わるのだ。

「神を信じられなくなったら…、とか?」

 いささか自信のない口調で答えた。
 ジェイは顔を左右に振って、否定する。

「逆だ。神を信じたくなったら、さ」

 問答のような言葉。
 神に逆らうのが堕天使の在るべき姿ならば、なんと矛盾に満ちた答えであろうか。

「そもそも『信じる』って言葉は、信頼出来ない相手と知っている立場だから言える単語だろ。
 天使は神を正しいと『知って』いる。疑う余地なんてどこにもなく、な」

 なるほど、そこに繋がるわけか。
 カリアは微かな吐息とともに理解の意を返す。
 天使は神の道具であるという。道具が使い手の使用法に、疑いなど持つはずがない。

「天使には一見、自由意思が与えられているようにみえる。
 神に向かって正面から意を唱える天使だってたくさんいる。
 でも、それは確認行為であって反逆行為じゃない。神は絶対だからな。
 羽が黒く染まらない以上、頭上の光輪が砕け散らない以上、天使はいつまでも神の奴隷だ」

 問題は、その神が正しいかどうかであろうか。
 妖精界にも信仰の概念はあるが、妖精にとって崇敬の対象は王である。
 だからこそカリアにも思うところはある。王族の独裁は、腐敗と歪心を呼ぶ。

「天使の正義が、神の正義が、万人の欲する正義とは限らない……ということか」
「そういうこと。
 信仰の拠り所、理想化された神は悪徳の対極に位置するとされているけどな。
 神族にもヤバいやつがたくさんいるってことは、神話を紐解けばすぐわかるこった」

 それで? と、カリアは先を促す。
 唐突な会話は、メルトがいない場所で行われているものだ。
 あの時、榊を相手にメルトがとった態度と行動について、解決を提する問いであるのか。

「天使を理想化してると、現実とのギャップに苦しむぞってことかな」
「今更だな」

 ジェイの遠回しな苦心を、カリアはあっさりと覆す。

「ケーキの取り合いで喧嘩できる天使なんて、私は他に知らない」

 穏やかな表情で告げられた内容に、ジェイは一瞬の驚きをみせ、やがてニヤリとした笑顔で返した。

「そうだな」

 鳥のさえずりが聞こえる、深い森の中。鬱蒼と生い茂る緑に細く続く獣道。
 清涼な魔力の残滓は、この先にサニーが向かったことを示唆している。
 眠れる姫をさらった、黒衣の騎士を追いかけて。

(あの時の『お仕事』みたいです…?)

 メルトはふと、脳裏をよぎった思考に瞳を伏せる。
 それ以上は、考えてはいけないことだ。

 ひとつ頷いて、膨れっ面を用意した。
 そして、もう何度目になるかわからない大声を、後方でのんびりついてくる仲間相手に投げつけた。

「遅いです! はりーあっぷです!
 メルトを先にいかせたりなんかして、魔物に襲われたらどう責任とってくれるですかー!」

拍手[0回]

PR
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
管理人のみ閲覧

この記事へのトラックバック

トラックバックURL:

カレンダー

08 2017/09 10
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

プロフィール

六命PC
セルフォリーフ:
ENo.58 夢猫ぴあの
アンジニティ:
ENo.106 梟霊アルワン

Sicx LivesのPLのひとり。
ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

関連サイトリンク

Sicx Lives
 六命本家 .

木漏れ日に集う
 取引サイト
六命wiki
 うぃき

うさ☆ブログ(・x・)
 神検索
Linked Eye
 無双検索
六命ぐぐる
 無敵検索
未知標
 MAP,技検索

万屋 招き猫
 情報集積地
エンジェライトの情報特急便
 情報集積地
ろくめも
 付加情報特化
英雄の故郷
 合成情報特化
六命技データベース
 技情報特化
わんわんお
 敵情報特化
適当置き場
 敵出現テーブル他
手風琴弾きの譜面帳
 取得アイテムやペット

六命簡易計算機
 簡易計算機
紳士Tools
 PK,素材情報明快化
紙束通信研究所
 戦闘情報明快化

犬マユゲでした(仮)
 blog情報速達便
小さな胡桃の木の下で
 新着ニュース特急便

個人的閲覧サイト

空に堕ちるまでの朝
 ジェイ(189)さん
うたびとのきおく
 バジル(428)さん

星ト月ヲ見ル人
 ラーフィー(709)さん
車輪の跡
 ミカ(402)さん

最新コメント

[05/16 backlink service]
[11/25 ふれあ(1519)PL]
[11/23 セレナ(93)PL]
[11/22 ふれあ(1519)PL]
[11/20 カシュー(553)]
<< Back  | HOME Next >>
Copyright ©  -- 歌を唄う猫の夢 --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by もずねこ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]