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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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 流転に差し掛かった歴史は、回天が如く急激に加速するという。
 時代に生きる者たちの激情が、未来へつながる架け橋を強く揺らすのだろうか。
 現実はいともたやすく崩壊し、物語は最終局面へ雪崩落ちる――。

「いひひひぃぃああぁぁあああぁぁぁぁッ!!」

 リディアーヌが叫ぶ。
 躰から溢れだしたマナが白い発光体となって乱舞する。それは幻想の美しさをも秘めて。
 輝きは彼女の頭上で集束し、島を飛び出し次の宿体を得ようと足掻きをみせた。
 ―――が、

「ハラショーハラショーッ!! ナイスビーフ! シチュエーション!!」

 黒髪に黒いスーツ。闇の化身が如き姿影に蒼い瞳色を漲らせた榊が、暴走するマナを強引に受け止める。
 ニタリと、見る者に悪寒を感じさせるほどの嫌らしい嘲笑を浮かべて。

「…ヒヒッ、能力の使い方はこのようですねぇ、島の主よ。
 この榊だからこそのこの挙動、貴女の判断は正しかった!」

 榊は白い発光体をすべて吸収し終えると、口癖のようにヒヒッと声をあげた。

「お疲れ様です皆さんッ!! 何だが悲壮感漂うかたもおられるようです、が」
「榊……!」

 メルトが睨みつけて叫ぶ。
 ギルとシズクもまた、起きたことを理解して声を荒げた。

「てめぇは、なんだ?」
「あなた、リディアーヌのマナを……、命を…ッ!!」
「ヒヒッ! コワイコワイ、恐いですねぇッ!!
 まぁそう怒らずに、とりあえずこの雄大な景色を楽しみませんか? …ククッ」

 パチンと、榊が指を鳴らす。
 同時に瞬転する世界。
 不意に出現したのは、圧倒する巨大さを持つ樹木。

「こちらに見えるが装置、ことユグドラシルでございますッ!!」

 ユグドラシル。
 神の住まう世界樹の名をもつ、島の中心部に位置する超弩級の常緑樹。
 茂る葉は虹色に煌めき、幻想の感動を抱かせる。まさに神秘の結晶と呼ぶに相応しい威風だ。

「さて、あとは貴方達にお任せしますかな。マナを背負いすぎて下手なことになりかねないもので」

 おどけた調子で述べる榊に、白き娘に悪戯をしていたサバスが告げる。

「解せんな」
「おや、怪物博士のサバスさんではありませんか。ご機嫌麗しゅう!」
「宝玉を拡散させて島の機能を抑える、
 そうしてマナに刺激を与えずに争いにより強者にマナを集中させる、それをまとめて回収する。
 ……それで、お前はそのマナをどうする気だ?」

 その言葉に、榊は満面の笑みを浮かべた。

「…ヒヒッ! さすがは奇才サバスさん。その名のとおり、愉快な理解力をお持ちだ。
 どうしますか、アスペディアさん?」

 名前に反応し、シズクが、少し遅れてギルが顔をあげた。

「アスペディア様!」

 ベルクレア第一部隊隊長、アスペディアがそこにいた。
 カールのかかった紅の長い髪に金色の瞳、黒い鎧と黒いマントを身に纏っている姿はどこか浮世離れの様相を呈している。

「どうか、リディアーヌを救ってくださいっ!」
「やめろシズク、目を見てみろ……妙だ」

 展開を見据えていたジェイが、気配を感じて視線のみで振り返る。

「これが装置……これを作動させれば、HOPEの皆の過去を……」
「ほぉう、これはなかなか興味深いな」

 島の中央に、多くの冒険者が集い始めていた。どうやら榊は、全ての者をユグドラシルの元へ転送させたようだ。
 マナを集わせるとは、そういう意味か。

 そんな彼らをねめつけて、アスペディアが口を開いた。

「去れ、私はそこの全裸の持っている少女にしか興味はない。
 …主の娘よ。様々な噂で人を釣ったようだが、宝玉の噂とやらも全くのデタラメなのだろう?
 …まぁ私にとっては非常に価値のあるものだがね。特にこの、生の宝玉は」

 その言葉に、サバスの背中で弄られていた白き少女が反応する。

「…見つけたわ、完成された生の宝玉。榊から受けた宝玉と、それで、…やっと少し機能する」

 少女は叫んだ。

「……とりあえず、ごあいさつして名乗りなさいッ!」
「初めまして、シズクリアスプリズム=ステイルです!」
「初めまして、ギルバート=リヴェイラです!」
「初めまして、サバス=ルネティリウスです!」
「初めまして、綾瀬 和代です!」
「初めまして、セラフィナイト・A・ジェイドです!」
「初めまして、マトリカリア・ティードです!」
「初めまして、メルト・D・クラッシュアースです!」
「……」
「……」

 次々と名乗りだす、集いし者達。その光景はとても異様に過ぎる代物と言えた。

「はい初めまして、私はカエダ。よろしくね」

 落ち着いた頃に、少女はついに自分の名を明かした。
 カリアの表情が険しく歪む。
 強制執行。精神を律することには右に出る者のいない妖精が、心を支配されたという脅威に。
 ジェイは表情を変えずに静かな怒りを燃やす。
 神でもなき存在に我が意志を乗っ取られるなどありえない。しかし現実はそれを許したということに。
 メルトはもっとも流されやすいが故に理解する。
 北欧神の管轄であるユグドラシル・システムと同様の力場が働いている。
 勇猛を誇る天界軍を苦しめたヴァルキューレの居城。この場で、白き少女カエダは無敵に近い力を誇るだろう。

 命令を受けて、サバスが素直にカエダを降ろした。

「いい子ね」
「……ほぉう、強制ロールか。問答無用だな」

 唯一、カエダの指令を無視できたアスペディアが薄ら笑いを浮かべ、

「絶好調ではないか、主の娘よ。さぁその戻った力で装置を動かせ。
 私はその力で過去を操り、この世界を……」

 だが、そのセリフは遮られる。カエダは、つまらなさそうに言葉を被せた。

「はいはい魔王みたいなの気取って目的なんて表明しないでいいわよー、今度の遊びは世界滅亡あたりかしら?
 他はどうあれ貴方が一番厄介なのよ。偶然見つけたリセットボタンを利用して、野望を達成するまで何度繰り返すつもり?
 私がこの状態にまで戻れたのがこれで何回目なのかは知らないけれど、今回で終わりにしたいのよね。
 島を正常化して装置を誰にも使わせないのが私のゴール。私を拘束して装置を利用するのが貴方のゴール。
 私は何回自害したのかしらね、想像するだけで気持ち悪い。
 周りに名前の刷り込みまでして装置に近づいて近づいて近づいて……いい加減しつこいわ。
 今までのことは知らないけれど、今回は結構うまくいってると思うのよ。
 装置の噂も流すことでマナの許容量を多く持つ優秀な人財も集められた。
 目的がバラバラでとても綺麗な物語とは言えない出来だけど……これで終わりにしてあげるわ」

 白き少女が人差し指をピンと伸ばし、緑葉生い茂る天を指す。
 ゆっくりと振りおろし、アスペディアへ向けた瞬間、彼女は絶叫をあげる暇もなく気絶した。
 金色の瞳は藍色へ変化し、身体を覆っていた金色の霧が浮かんでは消えていく。

「もう、乗り移りはできないでしょう? 哀れなる絶望のアナグラム」

 吐き捨てるように、カエダはぼそっと呟いた。

「……そ…装置を、起動しろォォッ!!」

 綾瀬と名乗る、マナに汚染されて黒刃を生やした男が叫んだ。
 それが堰であったのか、展開に気おされていた者たちが次々と己の欲望を口にする。
 カエダが、呆れた風にため息をついた。

「ほんとうっさいわね、悪いけど装置は使わせないわよ。
 …装置が動く様を見たい? 自分で作れッ! …仲間を救いたい?こんなもの頼るなッ!
 …財宝が欲しい?他所で探してこいッ! …噂ばっかり流してごめんなさいね、こちとら島の平和維持で精一杯なのよ。
 でも、私を手助けしてくれたご褒美くらいはあげるわ? そう、これから貴方たちを…」

 突然、透き通る声が彼女の言葉に割り込んだ。

「うわぁ! すごいねすごいねっ!
 箱庭側が読み手の干渉を押し切るなんてッ!! 器用なキャストだなぁ!」

 本を持った子供。純朴そうな姿、緊迫する状況にそぐわない、圧倒的な違和感を引き連れて。
 彼をメルトは知っている。木菟の梟神アルワンに教えられた。
 曰く、伝承の物語を手にした、子供の姿を持つ傍観者。
 カエダが、嫌な顔で突き放す。

「貴方…その物言い……、アスペディアと同じ界隈かしら。いい加減ちょっかい出さないで欲しいんだけど」
「もちろん出さないよぉ、出さない出さない!そんなマナー悪くないもん僕」
「…ならさっさと消えてくれない?」
「ははっ! うん、そうだね。そうする。何かキミ、面白いことするみたいだしっ!
 …それじゃーねっ!」

 元気よく答えて、子供はパッと消えていなくなった。
 膨大なマナに支配された状況をいともたやすく引き千切った存在に、カリアは戦慄を覚える。
 ありえない存在。アスペディアとやらを動かしていた理屈と同じならば、もしかして……?

「胡蝶の夢、か」

 妖精騎士の呟きに、サバスが反応した。

「ふむ…、癪な話だが、そういうことか。夢のあるようで夢のない」
「あら解るの? でも知れたところで何も変わらないわ、私は私の役目を……
 ……果たすだけッ!!」

 宝玉を掲げたカエダに呼応し、ユグドラシルが強い光を放つ――!

 半球状の結界が、大地を割る轟音すらも不自然に遮断して形成されていく。
 圧倒的な力が、世界樹を中心とした空間を抉り出そうとしているのだ。

 世界が、様相を覆して空前絶後の状況へ変じようとしていた。

「……見つけたです」

 騒乱のさなか、メルトは呟いた。表情が、わずかな微笑みに綻んでいる。

 白き少女の傍らに浮かぶ球体。
 宝玉の中に、天使は希望を捜し当てていた。

 硝子状に固形化した高純度のマナの中、融けて微睡と共に揺蕩うは赤髪の小精霊。

(…見つけたわ、完成された生の宝玉。榊から受けた宝玉と…)

 カエダのセリフが脳裏に再現される。
 おそらく榊は、荒ぶる力の抑制に小精霊を利用したのだろう。
 宝玉が完成した今、不純物として廃棄されるだけの運命。排出されれば、そこに落ちるは生命無き亡骸のみ。

  ――いいか、メルトよ。
    己の任務は島を解放することでも調査することでもない。
    守護天使としての任務を果たせ。
    哀れなるコロポックルの少女を、愛の力持ちて天上へ導くがよい――

「ならば、その宝玉ごと戴くです?」

 愛の天使は眩い黄金の弓に、閃光の矢をつがえる。
 ここが神話の分岐点であらば、終局をハッピーエンドに導かない理由はなかった。

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アンジニティ:
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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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