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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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 蒼海に浮かぶ大樹。
 大樹を背景に白いドレスを着た、白い髪の少女カエダ。
 薄い水色の視線が、多くの来訪者たちをひとりひとり確かめて。

「まずはお礼を言わせてもらうわね。
 貴方たちのお陰でようやく動けるようになったわ、ありがとう」

 かすかな会釈と共に感謝を述べて。

「そして、さようなら。
 …ここは過去の集積場、世界から失われたものの全て。貴方たちが二度と出会うことのないものが眠る場所。
 貴方たちはこの地に触れてはいけない、存在してはならない。
 ……この島の存在は知られてはいけない」

 無表情で、告げる。
「貴方たちはここで過去となり、この地で永遠に眠ってもらいます。
 …おやすみなさい、せめて最後は良い夢を見て―――
「―――おおっと! オイタはいけませんよぉ娘さんッ!!」

 突然、カエダの口舌を遮る声が響いた。
 不快な表情で、白き髪の少女は大樹を見上げる。
 先に見据えるは細いシルエット。アスペディアを紹介して以来、気配を消して姿を晦ましていた男、榊だ。

「ベルクレアの隊長は、すでに満身創痍でいましたか?
 彼女を倒す者がいたとは、ますますもって興味深いエージェントが集まったものです。ククッ!」

 榊は、大樹の頂点から世界を傲然と見下ろしている。
 いやらしく、みだらに舌なめずりをして。

「グッドイブニングお客様がたッ! 初めましての人達のほうが多いでしょうか?
 改めまして紹介いたしましょう。私はこの島への招待主、榊ですッ!!」
「…あなた……もう役目は終わったでしょう、何の用?」

 カエダが苛々と問うが、榊は動じない。

「ククッ! …確かに島は機能を取り戻しましたが、私が貴女の母上から授かった役目はそれではありません。
 私は、貴女を……調教するように言われたのですッ!!」
「……調教?」
「…おっと、あまり宜しくない表現でしたかな。まぁ、躾ですなッ!
 貴女のその頑なな心を歪めに来たのですよ、さぁ柔の心を身につけましょうッ! レッツ地獄車ァッ!!」

 おどけた調子で奇妙なポーズを取る榊を見て、少女は眉根をひそめた。

「…お客さんたちを家に帰せってこと?」
「ブラボーッ!! 理解が早いですな!
 …失ったものに再び出会える孤島、それはそれで良いではないですかロマンチッケスト!
 地獄やら天国やらと無闇に仕切るより断然面白いッ! …どうせここのものは外部には出れないのですし」
「…嫌よ。もうこんなトラブルはゴメンだわ。」

 カエダは吐き捨てるように言葉を紡いだ。
 しかし、黒スーツはニヤニヤと笑みを浮かべるばかり。

「今回の件はエルタ・ブレイアから抜け出たエキュオスが島機能を狂わせただけのこと。
 その侵入を防ぐ技術など外界ですら持っていますよ? 力を取り戻したこの島に出来ないはずがありません!」
「……。…まぁいいわ。
 何を言おうと構わないけど、もうユグドラシルの最終防衛機能は発動しちゃってるの。
 どうにかしたいなら、自分でどうにかなさい?」

 傍観者達を置き去りに交わされる、二人の会話。
 招待主、カエダの母親、失ったものに逢える孤島、エルタ・ブレイア、そしてエキュオス。

「ククッ!これはこれは、確かに躾が必要そうですが……至って素直ですな。
 …確かに聞きましたよ、『どうにでもしろ』とッ!!
 さぁ出番です私の中のエージェントたちッ! 解き放ちなさい、集めに集めたマナの大群をッ!! 」

 榊が慇懃無礼な態度で両手を広げた。
 高慢に愛を授ける神の如き姿は、メルトにとって皮肉以外の何物でもない。
 そして、その姿と共に彼の胸から大量の放たれたのは、リディアーヌから取り上げた白い発光体。
 輝きは一度、空を完全に覆い埋め尽くし、シャワーのごとく地上へと降り注がれた。

 避ける隙間はない。翳す掌さえも透けて貫き、地表のすべてへ流れ込む。

「……まさか!」

 ジェイが唸る。彼はこの力を知っている。
 漲ってくる力と引き換えに失っていく記憶。墜天の際に味わった、高濃縮のマナの奇蹟。

「…ヒヒッ!
 理解している皆様、ポカーンな皆様、生きる道は多々あれど、今この瞬間にその道のためにできることはひとつ。
 あの樹を枯らすしかありません。
 限られた体力のなかですが、私の命運ともども……託しましたよッ!!」

 カエダが、怒りを込めて榊を睨みつけた。
 場を支配していた彼女の強制力は失われた。榊は、この瞬間を狙っていたのだろう。
 ユグドラシルごと探求者たちを地表から切り離したことが、決定的なミスとなって襲いかかる。

「いいわ、やれるものならやってごらんなさいッ!!」

 カエダが叫んだ。
 咆哮と同時に、ユグドラシルの葉がばさりと飛び散る。

 幾人かの影が、舞い落ちる葉に触れて心を反転させた。
 幾葉かの影が、形を変えて虚ろな操り人形の姿に変異する。
 ――襲いかかる。

 世界樹の葉を踏みにじり、ユグドラシルを枯らすこと。
 自分たちが選べる方法がそれしかないことを、場に集う者すべてが直感で理解した。

「どうする?」

 カリアが問いかける。
 戦闘をすることはすでに決定事項。今更問うまでのこともない。
 問題は、この戦において何を目標と定めるかということ。

「メルトは、宝玉を狙うです」
「宝玉?」
「そこに、メルトの使命があるです」
「オイオイ! この期に及んで、まだ使命とかいってるのかよ!?」

 あきれたジェイが口を挟むが、カリアがそれを制した。

「手伝おう。だがここが終わったら、次が私の我儘に付き合ってもらうぞ?」

 メルトの瞳がぱちくりと瞬きした。

「私は失われゆく故郷を救う手段を探している。
 ジェイは、生き別れの妹を探しているのだったか?」
「…あ、ああ」
「我ら三人が集えば出来ないことなどない。ならば、さっさと片付けるとしようか」

 不敵に、笑う。
 金色に透けた髪をたなびかせ、小さな竜騎兵はルーンの刻まれた剣を構える。

「チッ、仕方ねえな」

 意図を察し、ジェイが頭を掻く。
 召喚の媒体である大剣を引き抜き、幾つかの自縛契印を乱暴に解き放った。

「……ありがとう、です」

 メルトはか細い声で、言う。
 万感の思いを込めて、驚くほど素直に口を突いて出た感謝の言葉。
 だが、その言葉を"仲間"は一蹴した。

「聞こえないな。またいつもの軽口か?」
「謝罪の言葉なら、あとで縄で縛って吊ってやるからそこで言え」

 旅の道連れ。
 それぞれがそれぞれの目的を抱えて、ただ偶然が導いただけの出会いであったのに。

「………。ばーかばーかばーか、です!」

 メルトは涙をあふれさせながら罵倒する。

 かつて友を失った喪失は、再び得た友によって埋められた。
 いつかはまた、無惨に失うことになる喜びであるかもしれないけれど。

(――そうよ、メルト。友達って、そういうものだわ)

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六命PC
セルフォリーフ:
ENo.58 夢猫ぴあの
アンジニティ:
ENo.106 梟霊アルワン

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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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