忍者ブログ

歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

2017/09    08« 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  »10
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 蒼海に浮かぶ大樹。
 大樹を背景に白いドレスを着た、白い髪の少女カエダ。
 薄い水色の視線が、多くの来訪者たちをひとりひとり確かめて。

「まずはお礼を言わせてもらうわね。
 貴方たちのお陰でようやく動けるようになったわ、ありがとう」

 かすかな会釈と共に感謝を述べて。

「そして、さようなら。
 …ここは過去の集積場、世界から失われたものの全て。貴方たちが二度と出会うことのないものが眠る場所。
 貴方たちはこの地に触れてはいけない、存在してはならない。
 ……この島の存在は知られてはいけない」

 無表情で、告げる。
「貴方たちはここで過去となり、この地で永遠に眠ってもらいます。
 …おやすみなさい、せめて最後は良い夢を見て―――
「―――おおっと! オイタはいけませんよぉ娘さんッ!!」

 突然、カエダの口舌を遮る声が響いた。
 不快な表情で、白き髪の少女は大樹を見上げる。
 先に見据えるは細いシルエット。アスペディアを紹介して以来、気配を消して姿を晦ましていた男、榊だ。

「ベルクレアの隊長は、すでに満身創痍でいましたか?
 彼女を倒す者がいたとは、ますますもって興味深いエージェントが集まったものです。ククッ!」

 榊は、大樹の頂点から世界を傲然と見下ろしている。
 いやらしく、みだらに舌なめずりをして。

「グッドイブニングお客様がたッ! 初めましての人達のほうが多いでしょうか?
 改めまして紹介いたしましょう。私はこの島への招待主、榊ですッ!!」
「…あなた……もう役目は終わったでしょう、何の用?」

 カエダが苛々と問うが、榊は動じない。

「ククッ! …確かに島は機能を取り戻しましたが、私が貴女の母上から授かった役目はそれではありません。
 私は、貴女を……調教するように言われたのですッ!!」
「……調教?」
「…おっと、あまり宜しくない表現でしたかな。まぁ、躾ですなッ!
 貴女のその頑なな心を歪めに来たのですよ、さぁ柔の心を身につけましょうッ! レッツ地獄車ァッ!!」

 おどけた調子で奇妙なポーズを取る榊を見て、少女は眉根をひそめた。

「…お客さんたちを家に帰せってこと?」
「ブラボーッ!! 理解が早いですな!
 …失ったものに再び出会える孤島、それはそれで良いではないですかロマンチッケスト!
 地獄やら天国やらと無闇に仕切るより断然面白いッ! …どうせここのものは外部には出れないのですし」
「…嫌よ。もうこんなトラブルはゴメンだわ。」

 カエダは吐き捨てるように言葉を紡いだ。
 しかし、黒スーツはニヤニヤと笑みを浮かべるばかり。

「今回の件はエルタ・ブレイアから抜け出たエキュオスが島機能を狂わせただけのこと。
 その侵入を防ぐ技術など外界ですら持っていますよ? 力を取り戻したこの島に出来ないはずがありません!」
「……。…まぁいいわ。
 何を言おうと構わないけど、もうユグドラシルの最終防衛機能は発動しちゃってるの。
 どうにかしたいなら、自分でどうにかなさい?」

 傍観者達を置き去りに交わされる、二人の会話。
 招待主、カエダの母親、失ったものに逢える孤島、エルタ・ブレイア、そしてエキュオス。

「ククッ!これはこれは、確かに躾が必要そうですが……至って素直ですな。
 …確かに聞きましたよ、『どうにでもしろ』とッ!!
 さぁ出番です私の中のエージェントたちッ! 解き放ちなさい、集めに集めたマナの大群をッ!! 」

 榊が慇懃無礼な態度で両手を広げた。
 高慢に愛を授ける神の如き姿は、メルトにとって皮肉以外の何物でもない。
 そして、その姿と共に彼の胸から大量の放たれたのは、リディアーヌから取り上げた白い発光体。
 輝きは一度、空を完全に覆い埋め尽くし、シャワーのごとく地上へと降り注がれた。

 避ける隙間はない。翳す掌さえも透けて貫き、地表のすべてへ流れ込む。

「……まさか!」

 ジェイが唸る。彼はこの力を知っている。
 漲ってくる力と引き換えに失っていく記憶。墜天の際に味わった、高濃縮のマナの奇蹟。

「…ヒヒッ!
 理解している皆様、ポカーンな皆様、生きる道は多々あれど、今この瞬間にその道のためにできることはひとつ。
 あの樹を枯らすしかありません。
 限られた体力のなかですが、私の命運ともども……託しましたよッ!!」

 カエダが、怒りを込めて榊を睨みつけた。
 場を支配していた彼女の強制力は失われた。榊は、この瞬間を狙っていたのだろう。
 ユグドラシルごと探求者たちを地表から切り離したことが、決定的なミスとなって襲いかかる。

「いいわ、やれるものならやってごらんなさいッ!!」

 カエダが叫んだ。
 咆哮と同時に、ユグドラシルの葉がばさりと飛び散る。

 幾人かの影が、舞い落ちる葉に触れて心を反転させた。
 幾葉かの影が、形を変えて虚ろな操り人形の姿に変異する。
 ――襲いかかる。

 世界樹の葉を踏みにじり、ユグドラシルを枯らすこと。
 自分たちが選べる方法がそれしかないことを、場に集う者すべてが直感で理解した。

「どうする?」

 カリアが問いかける。
 戦闘をすることはすでに決定事項。今更問うまでのこともない。
 問題は、この戦において何を目標と定めるかということ。

「メルトは、宝玉を狙うです」
「宝玉?」
「そこに、メルトの使命があるです」
「オイオイ! この期に及んで、まだ使命とかいってるのかよ!?」

 あきれたジェイが口を挟むが、カリアがそれを制した。

「手伝おう。だがここが終わったら、次が私の我儘に付き合ってもらうぞ?」

 メルトの瞳がぱちくりと瞬きした。

「私は失われゆく故郷を救う手段を探している。
 ジェイは、生き別れの妹を探しているのだったか?」
「…あ、ああ」
「我ら三人が集えば出来ないことなどない。ならば、さっさと片付けるとしようか」

 不敵に、笑う。
 金色に透けた髪をたなびかせ、小さな竜騎兵はルーンの刻まれた剣を構える。

「チッ、仕方ねえな」

 意図を察し、ジェイが頭を掻く。
 召喚の媒体である大剣を引き抜き、幾つかの自縛契印を乱暴に解き放った。

「……ありがとう、です」

 メルトはか細い声で、言う。
 万感の思いを込めて、驚くほど素直に口を突いて出た感謝の言葉。
 だが、その言葉を"仲間"は一蹴した。

「聞こえないな。またいつもの軽口か?」
「謝罪の言葉なら、あとで縄で縛って吊ってやるからそこで言え」

 旅の道連れ。
 それぞれがそれぞれの目的を抱えて、ただ偶然が導いただけの出会いであったのに。

「………。ばーかばーかばーか、です!」

 メルトは涙をあふれさせながら罵倒する。

 かつて友を失った喪失は、再び得た友によって埋められた。
 いつかはまた、無惨に失うことになる喜びであるかもしれないけれど。

(――そうよ、メルト。友達って、そういうものだわ)

拍手[0回]

PR
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
管理人のみ閲覧

この記事へのトラックバック

トラックバックURL:

カレンダー

08 2017/09 10
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

プロフィール

六命PC
セルフォリーフ:
ENo.58 夢猫ぴあの
アンジニティ:
ENo.106 梟霊アルワン

Sicx LivesのPLのひとり。
ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

関連サイトリンク

Sicx Lives
 六命本家 .

木漏れ日に集う
 取引サイト
六命wiki
 うぃき

うさ☆ブログ(・x・)
 神検索
Linked Eye
 無双検索
六命ぐぐる
 無敵検索
未知標
 MAP,技検索

万屋 招き猫
 情報集積地
エンジェライトの情報特急便
 情報集積地
ろくめも
 付加情報特化
英雄の故郷
 合成情報特化
六命技データベース
 技情報特化
わんわんお
 敵情報特化
適当置き場
 敵出現テーブル他
手風琴弾きの譜面帳
 取得アイテムやペット

六命簡易計算機
 簡易計算機
紳士Tools
 PK,素材情報明快化
紙束通信研究所
 戦闘情報明快化

犬マユゲでした(仮)
 blog情報速達便
小さな胡桃の木の下で
 新着ニュース特急便

個人的閲覧サイト

空に堕ちるまでの朝
 ジェイ(189)さん
うたびとのきおく
 バジル(428)さん

星ト月ヲ見ル人
 ラーフィー(709)さん
車輪の跡
 ミカ(402)さん

最新コメント

[05/16 backlink service]
[11/25 ふれあ(1519)PL]
[11/23 セレナ(93)PL]
[11/22 ふれあ(1519)PL]
[11/20 カシュー(553)]
<< Back  | HOME Next >>
Copyright ©  -- 歌を唄う猫の夢 --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by もずねこ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]