歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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少女は、羊水に似たエーテルの中で微睡んでいた。
――逃げろ!
内耳に木霊する、大切な家族の言葉。
出来ない、と応えた。彼は自分を犠牲に、私を活かそうとしている。
逃げてほしいのはこちらだ。彼には、償いきれないほどの罪を負わせている。
幸せに辿りつく道はもう何処にも無いけれど、せめて、生きて欲しいと願っていた。
――逃げろ!
内耳に木霊する、大切な家族の言葉。
出来ない、と応えた。彼は自分を犠牲に、私を活かそうとしている。
逃げてほしいのはこちらだ。彼には、償いきれないほどの罪を負わせている。
幸せに辿りつく道はもう何処にも無いけれど、せめて、生きて欲しいと願っていた。
笑えない私のために、笑っていてくれればいいと思っていた。
あの日、激震と共に島はあえなく崩壊した。
原因はわからない。的確に説明をくれる魔術師も、勘で正解を導き出す有翼少女も、側にいなかったから。
ただ、私だけがそこにいた。
七色に変化するシャボン玉のような空間に、ひとり閉じ込められていた。
目前で展開されゆく地形の大変化、生命の大虐殺に、慟哭するばかりで無力だった。
空中にたゆたう硬質の結界に自分を閉じ込めたのは、黒兎のぬいぐるみに憑依していたコノハズクの神霊。
ただ私を生かして逃がすためだけに、衰えゆく自らの神気を使いきった。
ともに冒険した仲間すら見捨てて、家族である私を最優先とした。
――さようならだ、ふれあ。
意味がわからない。
仲間を、家族を失ってまで生きのびなくてはならない理由がわからない。
アイヌの村でも、蝦夷の反乱軍でも、都大火の騒乱でも、島の探索渦中においても、死神の鎌から逃れてきた。
すべて、大切な何かを犠牲にして生き恥をさらしてきた。
命を守ってもらえる価値が、私にあるとはとても思えなかった。
それなのに、何故、みんな私を生かそうとするのだろう?
力が入らない膝を落とし、破れない結界の壁面に血で染まる手のひらを叩きつけ。
目前で失われていく夥しい数の命を、茫然と見送る最中に、彼が現れた。
――探しましたよ! 彼ならこうせざるを得ないと思っていましたが、予想通りすぎて笑ってしまいますね。…ヒヒッ!
道化師の姿をもつ死神。
私の人生は、常に彼によって叩き潰されてきた。
だけど、もう怒りも感じない。心にぽっかりひらいた空洞には、憎しみや恨みといった悪感情も含まれていたのだろう。
道化師は意外そうな表情すら見せなかった。
こうなることは識っていたのだと、いつもの邪悪な笑みで語りかける。
――さぁさ、お眠りなさい災禍の巫女よ。そして私の望みのために、もうひと働きしてくださいな!
もう、どうでもいい。
これ以上、私を守ってくれるひとは存在しないのだから。
守られる価値もない私だから、それは当然の行く末。
ごめんなさい、アルワン。ごめんなさい、ラズ。ごめんなさい、リズ。
私はもう、ここでおしまい。
「そんなことないです?」
悪夢が繰り返す微睡みに、不意にさしこんできた光があった。
「助けたいと思わせる生命には、価値があるです」
目を瞑り、耳を塞ぐ私に、圧倒的な輝きを魅せて告げられる言葉。
「コロボックルが自分に価値を見いだせないのは当然です。
価値は、常に周囲にいる者が決めるのであって、自分で量れるものではないのですから」
反駁しようと口を開くが、音に変わらない。乾いた声帯が、振るわせ方を忘れてしまっていた。
「だからメルトは、ふれあを助けるです」
貴方とは初めての出会い。貴方に私の価値など量れるはずもない。届かない声が叫ぶ。
「当然です。メルトにとって、ふれあの価値なんてどうでもいいです」
絶句。繋がらない意味に、思考が真っ白に染まる。
「メルトは、ノエル――いえ、アニエスが価値を感じた貴女を助けるのです」
アニエス。名前に聞き覚えがある。私と私の家族のために、自分の命を投げ出した御使い。
「何度でもいうです。ふれあには、多くの命で支えられる価値があるです。
それでも死にたいと願うなら、想いを踏みにじる価値を自分に感じるなら、生き延びた後で好きにすればいいです」
…………。
突き放した物言いは、友人でも家族でもないからこそ口にできるものだ。
ただ純粋に、勝手に助けるから、勝手にしろと言っているのに等しい。
助ける相手の心までは背負わない。でも、助けたという現実だけは押し付ける。
酷い話だった。酷過ぎて、涙がでてくるぐらいに。
だから私は、なけなしの力を総動員して答える。
砕けた感情の欠片をかき集めて、傲慢な天使へ最も素直な激情を叩きつけた。
――――助けて!
亜空間を駆ける暗い通路の中、天使は、七色に輝く宝玉を大切に抱えて翔ぶ。
宝玉の中、羊水に似たエーテルの中で微睡むは赤い髪を持つ小さな精霊。
手のひらサイズの身体に多くの想いを詰め込んだ少女は、眦にかすかな涙を煌めかせて眠る。
「もちろんです。愛を忘れた子を守護するのは、メルトの役目です」
あの日、激震と共に島はあえなく崩壊した。
原因はわからない。的確に説明をくれる魔術師も、勘で正解を導き出す有翼少女も、側にいなかったから。
ただ、私だけがそこにいた。
七色に変化するシャボン玉のような空間に、ひとり閉じ込められていた。
目前で展開されゆく地形の大変化、生命の大虐殺に、慟哭するばかりで無力だった。
空中にたゆたう硬質の結界に自分を閉じ込めたのは、黒兎のぬいぐるみに憑依していたコノハズクの神霊。
ただ私を生かして逃がすためだけに、衰えゆく自らの神気を使いきった。
ともに冒険した仲間すら見捨てて、家族である私を最優先とした。
――さようならだ、ふれあ。
意味がわからない。
仲間を、家族を失ってまで生きのびなくてはならない理由がわからない。
アイヌの村でも、蝦夷の反乱軍でも、都大火の騒乱でも、島の探索渦中においても、死神の鎌から逃れてきた。
すべて、大切な何かを犠牲にして生き恥をさらしてきた。
命を守ってもらえる価値が、私にあるとはとても思えなかった。
それなのに、何故、みんな私を生かそうとするのだろう?
力が入らない膝を落とし、破れない結界の壁面に血で染まる手のひらを叩きつけ。
目前で失われていく夥しい数の命を、茫然と見送る最中に、彼が現れた。
――探しましたよ! 彼ならこうせざるを得ないと思っていましたが、予想通りすぎて笑ってしまいますね。…ヒヒッ!
道化師の姿をもつ死神。
私の人生は、常に彼によって叩き潰されてきた。
だけど、もう怒りも感じない。心にぽっかりひらいた空洞には、憎しみや恨みといった悪感情も含まれていたのだろう。
道化師は意外そうな表情すら見せなかった。
こうなることは識っていたのだと、いつもの邪悪な笑みで語りかける。
――さぁさ、お眠りなさい災禍の巫女よ。そして私の望みのために、もうひと働きしてくださいな!
もう、どうでもいい。
これ以上、私を守ってくれるひとは存在しないのだから。
守られる価値もない私だから、それは当然の行く末。
ごめんなさい、アルワン。ごめんなさい、ラズ。ごめんなさい、リズ。
私はもう、ここでおしまい。
「そんなことないです?」
悪夢が繰り返す微睡みに、不意にさしこんできた光があった。
「助けたいと思わせる生命には、価値があるです」
目を瞑り、耳を塞ぐ私に、圧倒的な輝きを魅せて告げられる言葉。
「コロボックルが自分に価値を見いだせないのは当然です。
価値は、常に周囲にいる者が決めるのであって、自分で量れるものではないのですから」
反駁しようと口を開くが、音に変わらない。乾いた声帯が、振るわせ方を忘れてしまっていた。
「だからメルトは、ふれあを助けるです」
貴方とは初めての出会い。貴方に私の価値など量れるはずもない。届かない声が叫ぶ。
「当然です。メルトにとって、ふれあの価値なんてどうでもいいです」
絶句。繋がらない意味に、思考が真っ白に染まる。
「メルトは、ノエル――いえ、アニエスが価値を感じた貴女を助けるのです」
アニエス。名前に聞き覚えがある。私と私の家族のために、自分の命を投げ出した御使い。
「何度でもいうです。ふれあには、多くの命で支えられる価値があるです。
それでも死にたいと願うなら、想いを踏みにじる価値を自分に感じるなら、生き延びた後で好きにすればいいです」
…………。
突き放した物言いは、友人でも家族でもないからこそ口にできるものだ。
ただ純粋に、勝手に助けるから、勝手にしろと言っているのに等しい。
助ける相手の心までは背負わない。でも、助けたという現実だけは押し付ける。
酷い話だった。酷過ぎて、涙がでてくるぐらいに。
だから私は、なけなしの力を総動員して答える。
砕けた感情の欠片をかき集めて、傲慢な天使へ最も素直な激情を叩きつけた。
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