2007/07/08 (Sun) 探索10日目-日記

+小+[ -Recollection- ]-小-

燃え盛る焚き火が、煌々と藁葺きの屋群を照らしだす

一声、高く。張りのある男の叫びが、伸びやかに大気を震わせて
草染め鮮やかなトリンコリの糸弦は、涼やかな音色を奏ではじめた

謳う者、踊る者、呑む者、語る者、殴る者、嘆く者……
大地の神へ豊作を祈る祭は、夕暮れに始まり夜通し続く
涯て無き喧騒は、日々の疲れを発散させる場でもあるのだ

だからこそ、尊く

だからこそ、儚い


一羽の鷲木菟は、背に小柄な少女を携えて蒼穹の空を舞う


千余年も続く歴史に支えられた宴が

今宵、

流血をもって終止符を穿つまで――


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+小+[ Summer Vacation -Community of "Rental declaration"-]-小-


――最後に見た祭りの記憶は、とても残酷だ。


「ひゃ!?」

寝ぼけ眼に突如降り注いだ水塊に、目が覚める。
ぶるぶると髪の毛ごと頭を振って、飛沫を弾き散らし。見上げると、なにやら不敵に勝ち誇った顔があった。

「海にまできて寝てるなんて、何事です？」

マリエン・イグドラシア（Eno.1038）、通称マリィ。
泳いできたのだろう、ふわふわな長髪がべっとり塩水に濡れて重量を増している。
彼女は鬱陶しそうに髪をかきあげて、ビーチチェアにどさりと腰を下ろした。

タキシードを着た歩行雑草が、トレーに乗せていたレモンスカッシュのグラスを置く。
テーブルの上、ふれあより皿一個分となりの位置へ。

「……だって、海怖い」
「怖くなんかないです。あんなのは、単なる塩辛い水溜りです」

ちら、と視線をやる先には、波打ち際で水をかけあい楽しむ子供達や、美しい肢体に面積の少ない水着を着飾り、男性の視線を弄ぶ女性達がいた。
あるいは、砂浜に埋められた哀れな生贄をスイカと間違えて襲い掛かろうとしている目隠しの少年に、それを囃し立てる面々。
浮き輪でぷかぷか水面を漂う者もあれば、なぜか褌姿で漢らしさをアピールしている男女の姿もある。

ここは【レンタル宣言コミュニティ】の主、ジャフティ-JJ（ENo.271）の主催するSummer Vacation会場。
瑠璃色の海と真白き砂浜の世界。――つまり、海水浴場なのだ。

「せっかく、ちっちゃいのに似合う水着を見つけてきてやったのに、泳がなければ意味がないのです」
「……それは、ありがと」
「何か言ったですか？　聞こえなかったです」
「………」

ほんのり顔を赤くして「ぷい」と目を反らす少女に、マリィは再び勝ち誇った瞳を向けた。
いつもお目付け役にいじられている鬱憤を、ここぞとばかりに吐き出しているのかもしれない。

ふと、ふれあが視線を細めた。
マリィの右手に握られた、醤油の匂い香ばしい不思議な物体を前にして。

「これは、イカの姿焼きっていうです。あっちの屋台で売られていたです」

見れば、氷暖簾の垂れた古い木造の海の家が、黒い人だかりで大層な賑わいをみせている。
これも、レンタル宣言コミュの面々が開いている店なのだろう。なかなか芸達者な人間が揃っているようだ。

「イカってなに？」
「イカを知らないですか。田舎者はこれだから困るです」

軟体動物門、頭足綱、十腕形上目。吸盤のついた十本の足を操り、海洋を自在に泳ぐ動物の名称。
――を、串に刺し、醤油タレをつけて直火で炙ったもの。屋台料理の一種。

「ほれ、やるです」

ぐいっと突き出された身の丈ほどもあるイカ串を前に、ふれあは怪訝な表情を見せた。

「珍しい。何か裏がある？」
「……好意を素直に受け取れないですか、このちっちゃいのは」

鼻腔をくすぐる甘辛い匂いに、口元からぽたりと涎がこぼれる。

「……食べる」
「素直に言えばいいのです。じゃあ皿に取り分けて……」
「いい。斬る」

風を切り裂く音が鳴り、ふれあの身体が急回転した。
ずんばらりん。あわれイカ串なます切り。

「あっ、あっ、あっ、危ないですー！　マリィの指まで切れたらどうするですか！」
「切れないよう注意した」
「注意の問題じゃないですー！」

紙皿になだれ落ちた、焼きイカと串の残骸の盛り合わせ。
そのひとつを手に取り、おおきく口をあけてかぶりつく。ふれあに幸せそうな笑顔が広がるのを見て、マリィも一切れを手に取った。

海辺では潮干狩りをしている仲間達の、なごやかな悲鳴。
がしゃんがしゃんと奇音をあげて、おびえるカップルの横を通り過ぎるのはラピスラズリ（ENo.1194）の魔道アーマーか。
本人はアレを水着と言ってはばからないが、昆布を引っ掛けた鎧型潜水服は、どう控えめに評しても怪物にしか見えていない。

海の家で大量に買い占めたのだろう、多数の戦利品を腕の中に収めほくほく顔の玖狼（ENo.701）がこちらへ歩いてくる。
その腕の隙間からこっそりフランクフルトを抜き取って、あーんとばかりに噛み付いているのはリナ＝クロウリー（ENo.1278）。
「おいしそうだなぁ」と指をくわえながら見ていたリーン＝ラズライト（ENo.955）は、リナに「はい」と渡されたフライドポテトを受け取って、ぱあっと明るい顔を見せた。
気づかぬは玖狼ばかりなり。

区画の向こうでは、パラソルを立てた砂場でくぅくぅと寝そべっている昼寝部部長・巽 仔淡（ENo.1757）を、こっそり砂布団に埋もれさせようとしているヒュペリウス=Ｌ=ディスアークウィンド（ENo.119）始め、昼寝部部員達の姿もある。
そんな彼らを、フェルネス・フォートレイト（ENo.1878）はとても楽しそうに、得意の楽器を打ち鳴らして囃し立てていた。

「暑い」

降り注ぐ日差しに瞳を細めつつ、ふれあはぽつりと呟いた。

――まだ、夏は始まったばかりである。

+斜+
　※Thanks by 【レンタル宣言コミュニティ】 to 【Summer Vacation】
　　作中にお借りしたキャラクターは、レンタル宣言コミュの参加者に限定されています。
　　チキンですので無断ではありますが、出演ありがとうございます！
-斜-

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+小+[ Star Looking Festival -Community of "I want to become good at the picture more"-]-小-


星は、瞬く。


夜色のキャンバスに、荘厳な筆遣いで描かれたミルキーウェイ。
河を渡ろうとしているは、彦星こと鷲座の一等星アルタイル。
織姫こと琴座の一等星ヴェガは、対岸にあって彦星の訪れを待ちわびる。

「……七夕は、アルワンの誕生日」

正確には誕生日ではなく、一人と一匹が出逢った日。
自力では餌も食べられず震える小鳥に、少女が瞳をしばたかせて見入った日。

七はアイヌ語でアルワン。故に、名を『七』と名づけられた。
最もこれは旧暦の話で、今日の七夕とは縁無き数であるのだが。

そのアルワンは、昼間にうっかりイカを食べてひっくり返っている。
猫にイカを食べさせてはいけません。たとえぬいぐるみでも。腰を抜かします。

「ばか」

半眼で睨みつけるふれあ。食べさせた飼い主責任は、とりあえず放置らしい。

輝きが星系を旅立つは遥か過去、魂が生まれるより以前の出来事。
銀河を流れる綺羅星の群れ。
幾万光年を超え、遠き未来へと、この島へと、辿り付くために。

柔らかい草むらには、同じように星空を見上げる人々がいた。
モーリス・ルドワイヤン（ENo.1493）がこちらを見つけて、小さく手を振った。

星を見る。ただそれだけの、物静かなフェスティバル。
誰も声を立てることなく。
静かに、星の逢瀬に想い馳せ――。

リズが一枚カードをめくった。
絵柄を見て、ラズが何かを呟いた。リズは微笑んで、カードを空に掲げた。

この星空に願いを。
笹の葉に想いを結び、短冊に込めた夢よ、届け。

+斜+
　※Thanks by 【もっと絵が上手くなりたいコミュニティ】 to 【星見祭】
-斜-