2007/10/21 (Sun) 探索23日目-日記

[ -Recollection- ]


偽島大運動会【にせじま－うんどうかい〔－クワイ〕】
　　　　　　（False Island - Large athletic meet）

　False Islandの各地で、運動競技や借り物競争、漫才を楽しむ行事。[季]秋。
　騎士ハーヌ・クローヴァーが主催する66コミュより発足した。参加自由。

　雪原・砂地・逆立ち等、競争は場所も状況も選ばない。
　相対するカラー(白⇔赤)のハチマキ及び腕章を身に着けた相手を発見し次第、
　競争相手より、高レベルのネタを繰り出すことで勝敗を決するという。

　桃のハチマキ及び腕章をつけたものは、応援団として勝負を挑む。
　特に服装規定は定められていないいが、なぜか男性のブルマ装着率が高いことで有名。

　主な競技内容は空中起動の騎馬戦、大地を割る綱引き、瞬間移動によるリレー競技など
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　[秘境の運動競技 -第六巻-／民明書房刊]


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+小+[ Large athletic meet -Community of "I want to become good at the picture more."-]-小-


『いろいろ間違ってンだろ!?』

開口一番、鼓膜が破れんばかりの勢いで叫ぶアルワンに、
ふれあは「え。間違ってるの？」と真顔で驚きの表情を見せた。

『運動会ってなぁ、もっとこう、ほんわかとしたイベントなんだよ！』

「ほんわか？」

『全力で走っていい汗かいたり！　応援団が太鼓叩いてマスゲームしたり！
　晴天下で冷えた弁当を食べたり！　父兄がビデオまわして盗撮したり！』

「……盗撮？」

『……。あー、コホン。それは置いといて。
　運動会ってなァ、もっとこう、学生らしい青春の汗と涙のぶつかり合いみたいな、
　さわやかなモノであるべきなんだよ！』

どうやら彼は、運動会に対し一言あるらしい。
競技大会そのものの趣旨を理解していないふれあは、ただ首を捻るばかりだ。

「さわやかだと思う。死体も出てないし」

『死人が出るとか、どんな危険な大会を想像してやがるー！
　だいたい、剣戟の音が響く100m走とか、神力と魔力がせめぎ合うパン食い競争とか、
　そもそも裸体ポージング競争とか、もうどこに運動が関係あるのかサッパリだ！』

「そう？」

『まぁ、この島で開かれるイベントに、「ほんわか」とか「さわやか」を
　期待する方が間違ってるのかもしれねェがよ……』

理想と現実のギャップに、うじうじと悩む黒猫。
主人は訳が分からないまま、ポンポンと肩を叩いて慰めてやる。

「あ。借り物競争のアナウンスが始まった。もうすぐ始まる？」

『メインイベントか…。赤と白、どっちが勝つんだろうな。
　というか、まともな競技なんだろうな？　不安しかよぎらねェぜ』

「ふれあも競技、出るよ。借り物競争じゃないけど」

『んァ？　あー、まぁ、桃組も競技参加はしていいんだよな。点数には絡まねェが』

「ん。でも、やるからには勝利を目指す」

『オウ。その意気だ。
　――で、姐さんは何の競技に参加するんだ』

問いかけると、ふれあはぐっと力瘤っぽいものを作ってみせた。

「玉入れ。…見てて」

そのまま、なにやら校舎の如き幻影の浮かぶ平地を目指しトテトテと駆けていく。
校庭らしき場所では、くじ引きで決めたチームごとに集団が出来ている。

『へぇ、玉入れね。……って、え？　ちょ、待ッ!?』

玉入れ――。
竿の先に掲げられた地上数メートルの籠にお手玉を投げ入れ、数量の優劣を競う競技。

なんの気無しにプログラム表を眺めていたアルワンが、ふと、あることに気づいて顔を向ける。

だが、時すでに遅し。
進行時間が圧していたのか、ふれあ到着と同時に玉入れ競技は開始された。

そして彼は目撃する。
桃色のお手玉にしがみつくふれあを掴んだ、巨人の強烈な一投を。

『―――。オイ』

見事、ストライク。籠の中で目を回す少女の上に、更なるお手玉の雨が降り注ぐ。

アルワンは蒼い大空を見上げ、無常感を噛み締めながら呟いた。

『だからよ……。
　運動会ってさ、もっと、普通の人間がやるもんだよな……』