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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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[ -Recollection- ]


"偶然"による出会いだけが
"運命"と名付けられた歯車を廻す、"必然"となり得るのだ

 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
+小+[ Event of "Fitting session" that "ENo.63 Andartacar" sponsors ]-小-


黒天。轟々と鳴り響くは、雷の嘶き。
堕つる針の雫、大地に突き刺さり、激しく散乱す。

蕗に隠れ、雨をやり過ごす少女が一人。
偽りにまみれた世界であっても、蕗は青々と生命の煌きを輝かせている。

「――アルワン、遅いな」

語尾に心配を滲ませながら、少女は呟いた。
感情の起伏に欠けた彼女の心情は、言葉に寄ってのみ判断が可能だ。

濡れた装束がジワジワと体温を奪う。両腕で、己を抱えるように抱きしめる。
魔霊に侵された躯でも、寒いものは寒い。

「リズの御飯、食べたい。…ラズはきっと食べてる。羨ましい」

孤独に取り残されてから、数百年の時節が巡っている。
覚醒刻限で換算すればほんの数年前に過ぎないかもしれない。
しかしその数年を経た彼女の視界には、闇より暗き世界が視えていた。

誰にも護られないという、当然の出来事。

理解していた。深く、理解していたはずなのに。
どうして再び手に入れたぬくもりは、孤独をより一層強く彩るのか。
絆を失ったままであれば、哀しみの感情を思い出さずに済んだであろうに。

――不意に、雨音が変わった。

「先約が居ましたか?」

頭上から墜ちる、ソプラノに掠れた声。可聴領域の外枠から突き刺すように。

ざわり、と意識が撫で付けられた。
人? 違う! 人の形を持ち、人で在らざるもの。
この感覚は、この気配は、この悪寒は、――道化師!

「ご安心を。私は妖しいものではアリマセン」

紡がれる科白には、意識的な抑揚が付いている。
愛剣の柄に手をかけたまま、蕗の陰より姿を見あげた。

顔は見えない。歪な形をした仮面で覆われている。
女性のようだ。横へ尖る耳に口元から覗く牙。人外だとは確定した。
道化者ではありそうだが、探している道化師では、ない。

だが、明らかに妖しい。

「アナタも仲間とはぐれたようネ。生憎の豪雨、一緒に雨宿りさせて貰えない?」

こくりと、頷く。警戒は解けない。何者か、解らないのだから。

「ボクはアンダーテイカー。あるいは葬儀屋と呼んでくれても構わないワ」
「………。あ。以前、闘技大会で」

名に記憶が繋がった。
あの時は、犬とも兎ともつかない獣姿だった気がする。変化能力でもあるのだろうか。

警戒を解く。少なくとも、敵ではないようだ。
自らの名を告げる。ふれあ、と。
名乗りは認めた相手への礼節だと教えてくれた人がいた。

葬儀屋は妖艶な微笑みを浮かべた。
常緑樹の木陰で豪雨をしのぐ。彼女の背丈では、流石に蕗を使うわけにはいかない。
それでも隣りあいながら、容赦なく降り注ぐ光景を眺めている。

ぶるりと身体が震えた。忘れていた。実は、凍えかけていたのだ。
着替えも全てずぶ濡れている。火種もなく、乾かすすべもない。

「濡れた服を着ていては、雨宿りの意味がないわネ」

ゴソゴソと、カバンの中を漁る音がして。
葬儀屋が艶かしい指先で摘むように差し出してきたのは、ひと揃えの衣装だった。

「オンナノコが、身体を冷やすものではないワ」

どうやら、くれる、ということらしい。
何故、ふれあと同サイズの衣装を携帯していたのか凄く不思議ではあるが、それを尋ねるには到らなかった。
そこまで気が廻せるほど余裕がなかった、というのが正しい。

西洋風の衣装、ということしか解らない。ギミックが多く、着付けに苦労する。
アドバイスを貰いながら、一枚一枚重ねていく。
生地はそれほど厚くはないが、濡れたアットゥシ(刺繍服)よりは軽くて暖かい。

なによりも。
孤独でないという温もりが、在る。

「あ、ありがと」
「どういたしマシテ」

それを最後に、無言。先も見通せぬ森奥を見つめ、刻が流れるに身を任す。

「――来た」

護神の領域。接続する交換神経。孤独の穴を埋めるように、存在の安心が近づいている。

「雨もあがりそうネ」

彼女の言うとおり、雨足は弱まりつつあった。
遠く山脈の向こう側では雲に切れ目が生まれ、薄っすらとした虹が出来ている。

「ホラ、お行きなさい。闇なんて、いつまでも眺めてるものじゃないワ」
「ん。……人探し、手伝わなくていい?」

複雑そうに振り返る。葬儀屋は口元に笑みを貼り付けたまま、答えた。

「メルスィ。でも、大丈夫。コチラも待ち人来る、ヨ」

かくして、二人は背を向けて歩きはじめる。

ギシリ。と、運命の奥底に隠れた小さな歯車が軋みをあげた。
一見何も起こらなかったこの出会いは、それぞれの未来に何かをもたらすのだろうか?
邂逅に必然が絡むならば、実は未来における分岐点たりえるのかもしれない。

ただひとつ、解っていることは
"彼女"から受け取ったドレスは、今も"彼女"が大切に仕舞っているということだけ。



+斜+
 ※衣装合わせイベントに合わせ、アンダーテイカー様(ENo.63)をお借りしています。
  ありがとうございます!
-斜-

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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
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