歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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[ -Recollection- ]
――何万年経とうとも太陽のように光り輝き
最初に歌い始めたとき以上に
神の恵みを歌い讃え続けることだろう――
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
――何万年経とうとも太陽のように光り輝き
最初に歌い始めたとき以上に
神の恵みを歌い讃え続けることだろう――
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
[ Event of "Star-spangled Night" & "X'mas Present" ]
黒猫は姿を見せない。
突然現れた謎の雀蜂に誘われて、森の深奥へ身を潜めたという。
腐った林檎の悪夢を見て、目が覚めた頃は見知らぬパーティの中にいた。
シャリンシャリンと鳴る鈴の音。
磨き抜かれた銀色の珠星、光を反射して煌くモール。
パチリと爆ぜる篝火に、集う人々の表情は明るい。
ふれあは一人、テーブルに並べられたロースト・ターキーに齧り付く。
香ばしい皮に甘酸っぱさを添えるクランベリーソース。
スタッフィングにはパンチェッタをまじえたオニオン・ソテー。
何処の誰が用意したのかは知れないが、絶品の味わいだ。
「探したよ、マドモワゼル」
声質涼やかに、艶のある響きで。
見覚えのある細面が、モーリス・ルドワイヤンの姿で現れた。
「壁の花ならぬ、テーブルの花かい? せっかくのお洒落がスパイスで台無しだ」
頬を彩るトマトケチャップを指先でぬぐう。
くすぐったそうに頬を歪める少女を、モーリスはふわりと抱き上げた。
「スペシャル・ナイトはまだ始まったばかり。忘れちゃいけないよ、今宵の主賓は君なのだから」
「紳士淑女の皆様方。ようこそ、聖夜のプレゼント交換会へ! 」
588コミュニティを代表して、頭部にマルメロの花を咲かせたクインスが高らかに宣言する。
「そんなに格式ばったモンじゃないけどさ。せっかくのイベントだ、寛いでいってくれ」
隣の席に横柄に座ったまま、394コミュニティ代表のクニーRはひらひらと手を振る。
有志参加のクリスマスイベント。二つのコミュニティが合同企画したプレゼントの交換会だ。
島に集う者たちの、交流の手助けになればと企画されたと聞く。
離れた木陰に、全体的にクリスマスフィールドを取り仕切る271コミュニティ代表ジャフティ-JJがいた。
彼女はココアシガレットを指先で玩びながら、無事にイベントが開始したことを確認してニッと微笑う。
「私も楽しまなくっちゃね」
人数分用意された銀の燭台の上には、色鮮やかなリボンで彩られたプレゼントボックスがデコレーションされている。
それらは輪状に配置され、さらに二重円を描くように参加者が取り囲んでいた。
クインスの合図と共に、島に集う著名な音楽家たちが賑やかなダンスソングを演奏し始めた。
軽やかなステップと共に、参加者の円が廻りだす。
この音楽の演奏が終わったとき、目の前にある燭台のプレゼントが贈り物へ姿を変えるのだ。
ふれあは悩んでいた。
自分の目の前にある箱は、重量を感じさせないほどに軽すぎたからだ。
振っても何も音がしない。何も入っていないと確信を抱くに十分な状況。
プレゼントを用意できなかった者が、箱だけ用意したのかもしれねェな。と、相棒なら慰めの言葉をくれるだろうか。
だが、彼は傍にはいない。何か大事な用があって、ここには居ないらしい。
意を決して、白に銀糸で縁取りされたリボンをほどく。
潰さないよう苦労しながら、箱を展開すると。
――やはり、何もない。
不思議に感じて首をひねる。もしかして、莫迦には見えないとかいうアレだろうか。
それは困る。勉強は大嫌いだ。
ふれあは腕組みしながらひねった首の赴くまま身体を傾け、おっとっとと重心を崩した所で、
歌が聞こえてきた。
例えるならば……、寒い夜、星灯りに照らされた小川からすくいあげた水のような。
冷たく突き刺さる氷熱が、体温に溶けていくような。
That sav'd a wretch like me!
I once was lost, but now am found, Was blind, but now I see.
銀水晶を通り抜け、濾過された歌声。
大気を弦に、影を舞台に。夜風が運ぶ繊細な旋律。儚さを添えた透明な調べ。
差し伸べられた腕。すくいあげる指先。
凍えそうな景色に佇む少女を、握るように、後ろからそっと抱きしめる。
「云ったはずだよ。今宵の主賓は君なのだと」
モーリス・ルドワイヤンは、謡う。唄うように、喋る。
「まさか君のところへ行くとはね。知り合いに渡るのは、少し照れくさいな」
イギリス民謡にして黒人霊歌とされるホーリー・ソングを口ずさみながら。
君へのプレゼントは私の歌なのだよと、エルダー(長命種)の青年は告げる。
くいくい、と同じぐらいの背丈をした少女が手を引いた。
ミルフィード。彼と共に旅をする妖精だ。
手を引かれるまま空を翔け、モーリスの頭上、エメラルド色の草原にふわりと降り立つ。
「声に誘われて、星が咲いたようだ。今夜はホワイトクリスマスだね」
満天の星空には雲ひとつ見えないというのに。
ちらちらと、空気に踊って舞い堕ちるはミルキーホワイトの複合結晶。
「……雪」
モーリスは頭上の精霊を落とさないよう気を使いながら、モミの大樹の下へ避難した。
知恵を象徴する常緑の針葉樹は、魔法による光球やキャンディの杖で飾られている。
それは、クリスマス・ツリーと呼ばれていた。
The earth shall soon dissolve like snow, The sun forbear to shine;
But God, who call'd me here below, Will be forever mine.
かすれたア・カペラで、モーリスは唄う。指揮するように揺らす掌から星屑の幻を零し。
ふれあはゆっくりと目を閉じた。
――生きとし生ける、全ての人々へ伝えよう。 君の歌は、届いていると。
+斜+
※この日記は、"No.271 レンタル宣言"イベント"星降る夜に"を舞台に
"No.588 とりあえず、お絵描きが好き"&"No.394 WANDERER"合同主催イベントとして
モーリス・ルドワイヤン(Eno.1493) → 夢猫ふれあ(Eno.1519) のプレゼント受け渡しを書いています。
文中使用楽曲 "Amazing grace" (作詞John Newton)
-斜-
黒猫は姿を見せない。
突然現れた謎の雀蜂に誘われて、森の深奥へ身を潜めたという。
腐った林檎の悪夢を見て、目が覚めた頃は見知らぬパーティの中にいた。
シャリンシャリンと鳴る鈴の音。
磨き抜かれた銀色の珠星、光を反射して煌くモール。
パチリと爆ぜる篝火に、集う人々の表情は明るい。
ふれあは一人、テーブルに並べられたロースト・ターキーに齧り付く。
香ばしい皮に甘酸っぱさを添えるクランベリーソース。
スタッフィングにはパンチェッタをまじえたオニオン・ソテー。
何処の誰が用意したのかは知れないが、絶品の味わいだ。
「探したよ、マドモワゼル」
声質涼やかに、艶のある響きで。
見覚えのある細面が、モーリス・ルドワイヤンの姿で現れた。
「壁の花ならぬ、テーブルの花かい? せっかくのお洒落がスパイスで台無しだ」
頬を彩るトマトケチャップを指先でぬぐう。
くすぐったそうに頬を歪める少女を、モーリスはふわりと抱き上げた。
「スペシャル・ナイトはまだ始まったばかり。忘れちゃいけないよ、今宵の主賓は君なのだから」
「紳士淑女の皆様方。ようこそ、聖夜のプレゼント交換会へ! 」
588コミュニティを代表して、頭部にマルメロの花を咲かせたクインスが高らかに宣言する。
「そんなに格式ばったモンじゃないけどさ。せっかくのイベントだ、寛いでいってくれ」
隣の席に横柄に座ったまま、394コミュニティ代表のクニーRはひらひらと手を振る。
有志参加のクリスマスイベント。二つのコミュニティが合同企画したプレゼントの交換会だ。
島に集う者たちの、交流の手助けになればと企画されたと聞く。
離れた木陰に、全体的にクリスマスフィールドを取り仕切る271コミュニティ代表ジャフティ-JJがいた。
彼女はココアシガレットを指先で玩びながら、無事にイベントが開始したことを確認してニッと微笑う。
「私も楽しまなくっちゃね」
人数分用意された銀の燭台の上には、色鮮やかなリボンで彩られたプレゼントボックスがデコレーションされている。
それらは輪状に配置され、さらに二重円を描くように参加者が取り囲んでいた。
クインスの合図と共に、島に集う著名な音楽家たちが賑やかなダンスソングを演奏し始めた。
軽やかなステップと共に、参加者の円が廻りだす。
この音楽の演奏が終わったとき、目の前にある燭台のプレゼントが贈り物へ姿を変えるのだ。
ふれあは悩んでいた。
自分の目の前にある箱は、重量を感じさせないほどに軽すぎたからだ。
振っても何も音がしない。何も入っていないと確信を抱くに十分な状況。
プレゼントを用意できなかった者が、箱だけ用意したのかもしれねェな。と、相棒なら慰めの言葉をくれるだろうか。
だが、彼は傍にはいない。何か大事な用があって、ここには居ないらしい。
意を決して、白に銀糸で縁取りされたリボンをほどく。
潰さないよう苦労しながら、箱を展開すると。
――やはり、何もない。
不思議に感じて首をひねる。もしかして、莫迦には見えないとかいうアレだろうか。
それは困る。勉強は大嫌いだ。
ふれあは腕組みしながらひねった首の赴くまま身体を傾け、おっとっとと重心を崩した所で、
歌が聞こえてきた。
例えるならば……、寒い夜、星灯りに照らされた小川からすくいあげた水のような。
冷たく突き刺さる氷熱が、体温に溶けていくような。
That sav'd a wretch like me!
I once was lost, but now am found, Was blind, but now I see.
銀水晶を通り抜け、濾過された歌声。
大気を弦に、影を舞台に。夜風が運ぶ繊細な旋律。儚さを添えた透明な調べ。
差し伸べられた腕。すくいあげる指先。
凍えそうな景色に佇む少女を、握るように、後ろからそっと抱きしめる。
「云ったはずだよ。今宵の主賓は君なのだと」
モーリス・ルドワイヤンは、謡う。唄うように、喋る。
「まさか君のところへ行くとはね。知り合いに渡るのは、少し照れくさいな」
イギリス民謡にして黒人霊歌とされるホーリー・ソングを口ずさみながら。
君へのプレゼントは私の歌なのだよと、エルダー(長命種)の青年は告げる。
くいくい、と同じぐらいの背丈をした少女が手を引いた。
ミルフィード。彼と共に旅をする妖精だ。
手を引かれるまま空を翔け、モーリスの頭上、エメラルド色の草原にふわりと降り立つ。
「声に誘われて、星が咲いたようだ。今夜はホワイトクリスマスだね」
満天の星空には雲ひとつ見えないというのに。
ちらちらと、空気に踊って舞い堕ちるはミルキーホワイトの複合結晶。
「……雪」
モーリスは頭上の精霊を落とさないよう気を使いながら、モミの大樹の下へ避難した。
知恵を象徴する常緑の針葉樹は、魔法による光球やキャンディの杖で飾られている。
それは、クリスマス・ツリーと呼ばれていた。
The earth shall soon dissolve like snow, The sun forbear to shine;
But God, who call'd me here below, Will be forever mine.
かすれたア・カペラで、モーリスは唄う。指揮するように揺らす掌から星屑の幻を零し。
ふれあはゆっくりと目を閉じた。
――生きとし生ける、全ての人々へ伝えよう。 君の歌は、届いていると。
+斜+
※この日記は、"No.271 レンタル宣言"イベント"星降る夜に"を舞台に
"No.588 とりあえず、お絵描きが好き"&"No.394 WANDERER"合同主催イベントとして
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つれづれなるまま、
書き綴ってます。
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