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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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[ -Recollection- ]


 ―――貴方の神格を、剥奪いたしますわ

 天の代行者は厳格を纏い、裁きを告げる。


  -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
[ Alwan's Eye -Event of "Star-spangled Night" & "X'mas Present"- Side.B ]


遠く、喧騒のざわめきを耳にする。
樹林の間隙を抜けて、一際強く沸いた哄笑。
聖なる夜のホーリータイムは、賑やかに続いていた。

時は、ふれあがモーリスより唄のプレゼントを贈られた数分前に遡る。


『――さて』


ひと息ついて、黒猫はゆっくりと振り返る。
重低音の翅音を響かせ、滞空するスズメバチに向かって。

『俺様には、あとどれぐらいの猶予が残されてるんだ』

「……すべて、解ってるとでも言うような口ぶりですわね?」

悠然とした口調に対し、呆れ顔で迎え撃つアニエス。
アルワンは肩をすくめた。

『解ってるさ。アイツを護ると決めた瞬間から、な』

濃密な大気を孕む深森は、まるで影絵の世界のようで。
視界は悪い。空気が冷えて、霧が漂いだしているからだ。
それでも黒猫とスズメバチの姿がハッキリ見えるのは、広場で点灯している巨大なクリスマスイルミネーションのせいだろう。

「確認しておきますわ。
 神格"kamuy-cikap(神鳥)"、憑域守護鳥"kotan-kor-kamuy"アルワン。
 ……珍しい経歴ですわね。
 シャーマンの霊鳥ではなく、アイヌの神鳥に成るワシミミズク種なんて初めて聴きましたわ。
 しかも現在、肉体を捨てて人形に憑依中ですって?」

『ほっとけ!』

「肉体を捨てた経歴は…。ああ、神力維持が不可能になったからですわね。
 "村の守り神"の原則を曲げて、一個人を"村"に定義しなおすだなんて。
 ――ハッキリ申し上げまして、馬鹿ですわね」

『………うるせェよ』

アニエスの周囲には、光のプレートが幾つも浮かび上がっている。
おそらく、アルワンの経歴が書かれた情報体の具現化だろう。
誰が調べた情報かは知らないが、たいした情報量だ。

「無謀な試みであるということぐらい、理解していて良さそうなものですわ。
 ただでさえ、異種の鳥類ということで半分に満たない神力でしたのでしょう?
 ましてや、守護対象を強制変更だなんて無謀以外の何物でもありません。
 天の条理が、赦すと思いまして?」

怒涛の如く捲くし立てるスズメバチに、黒猫は不機嫌に閉口した。
よく喋る神蜂だ。
しかし一方、いちいち暴き立てることで罪状認識させようとしているのだと、気づいてもいる。

アルワンには解っていた。
"村"の護りを放棄するということは、神が人を裏切るということに等しい。
信仰は失われ、村は滅び、同属の権威は失墜する。

ワシミミズクの梟神は、ただ一人を選ぶことで、神も人も全て敵にまわしたのだ。

『別に赦されようなんざ、思ってやしねェよ。だから素直に罰は受けようとしてンだろ?
 だから、とっとと言えよ。
 俺様が"消される"まで、どれぐらいなんだ!』

「せっかちですわね。怒鳴る男は嫌われましてよ?」

『悪ィな。別にオマエに好かれようなんざ思っちゃいねェけどよ』

砂利を踏みにじる。
心に感慨は湧かないが、蝕みだした焦燥をこらえきることが出来ない。

『俺様は消えるまえに、やらなきゃいけねェことがあるんだよ』

ただ、ぽつりと。一言。
堪えきれない想いを、零して。

「………。私の裁量で、数日延ばすことは可能ですわ」

言外の呟きを察したのか、アニエスは目を逸らしながら嘯いた。

「でも、あの精霊を救うことは貴方には出来ませんわよ?
 私の見たところ、あの子に憑いた蛇蠱は呪いというよりは……。

 ……いえ、ありえませんわね。
 ごめんなさい、忘れてくださいな」

『そこまで言って止めんなよ。気になるじゃねェか。
 既存の魔術や、ルーン時代の魔法じゃねェことは解ってる。専門家が見たからな』

「………」

『知ってるか?
 アイツは笑ってるふりも楽しんでるふりも出来るけど、本心から喜びを感じることは出来ねェんだ。
 感情が大きくなればなるほど、アイツの中の蛇蠱が全て喰っちまう』

ちらちらと降り始めた大粒の雪花。
吐く息が、白く染まる。

アルワンはアニエスから瞳を逸らさない。
解ってもらえるとは思わない。相手は高位神の代理人。融通が利かない天の使いだ。
だが、無駄だとわかっていても言いたいことがある。

スズメバチの背後にいる、何者かに向かって。

『頼むぜ。俺様は、アイツを助けたいんだ!』

―――叫ぶ。

アニエスは黙ったまま、羽音を鳴らしていた。
視線はこちらを向いているが、昆虫の複眼では気配も掴みにくい。
もしや、意識を飛ばして天に伺いでも立てているのだろうか?

やがて、彼女は口を開いた。

「私も然と判別することは出来ませんわ。
 ですが、ひとつだけ言えることはあります。

 それは、蛇蠱なんかじゃない。
 偽装されてますけど恐らく蛇神……。ならば、神属の"穢祝"でしてよ」

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ENo.58 夢猫ぴあの
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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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