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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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[ -Recollection- ]

 天神、炉神、大河神、山神、狩神、雪神、雨神、泊神、山裾神、沖神…
 諸神諸氏を勧請申し上げる
 我等が弟身を神の御位に迎えることを許し給え
 村守神の一羽に迎える儀を御照覧あれ――

  だが、彼は呟いた
  我が護りたいのは唯一人であると

 天秤は傾き狂譜を奏で、神与の御位は誰も知らぬまま穢された


  -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
[ Flare's Eye -Travel Side- ]

頬を撫でる薄い風、波立たず静かな湖水、なだらかに空へ伸びてゆく丘陵。
空にゆったり流れるは、密集した高積雲。水綿に似た羊の群れが、陽光に追われて東から西へ翔けていく。

「はは……。本当に来やがったよ、全く欲の強い」

岩壁を背に座っていた男が、無精ひげを撫でさすりながら呟いた。

宝玉なんてのは、別にくれてやっても構わない。欲深い冒険者が破滅に近づいていく、それだけのことだから。
だが、戦うことに意味はある。
番人としての責務もあるが、何より、ある程度の実力を持つ者でなくば、宝玉に呑まれて廃人になってしまうからだ。

サングラスを下へズラし、新たに現れた簒奪者一行を覗く。

(――おや? ……なるほど。アレが、そうか……)

数刻前に訪れた、道化師の言葉を脳裏で反芻する。
あのイカレた容姿のピエロは、何処から手に入れたのか古き約定の証を所有していた。

約定に、彼は逆らえない。

どれほど非情な行為であろうと、無視できない。
ぎしりと軋む、左掌に焼き付いた黒き刻印。
炎の守護者イガラシは、つまらなさそうに息を吐きながら、ゆっくりと立ち上がった。


『――Das Fest des Wassers』

 凝結した水の槍が、飛沫を撒き散らしながら迸る。
 踵を軸にし、回転しながら避けるイガラシ。
 しかし、長耳族の少女の追加オーダーを受けて、方向を変えることまでは予想できなかったらしい。
 肩をかすめ、岩棚を粉々に吹き飛ばした魔術の冴えに、思わず口笛を吹いた。

「やるねぇ!」

 着地を予想した足場に、罅が入った。世界が、空間が、位相が壊れていく感覚が走る。
 結界。時空嵐が逃げ場を奪う。
 これは、リトルウィザードとツインテールキャットを従えた、有羽種の少女が起こしている事象。
 魔術文字を刻んだカードを展開し、無色の魔力が凝結した鋭矢を放つ。

『Sharp magic is given...!』

 黒帯を圧倒する白帯の姿と評そうか。彼らの実力は、宝玉1個で収まる実力とは信じられない。
 しかも、どうやら手加減されているらしい。――嘗められたものだ。

 そこへ、小さな少女が飛び込んできた。
 爪先ほどの足跡が、岩盤を抉って生まれている。背丈に比例した質量、あるいは力量でない証拠か。

    (……を、殺してほしいのですよ)

     禍々しい黒のうねる宝石を持ち、道化師は踊るように陽気な声でお願いしてきた。
     男には、彼の依頼に逆らえない理由がある。

 少女の踏み込みは早い。攪乱のステップを踏み、身の丈より遥かに大きな剣を振るう。
 イガラシは冷静に見切ると、少しだけ、

 ――少しだけ、宝玉7個の所有者と対峙した際に奮うべき実力を、解放した。

    (魂は放置で構いませんが、肉体は確実に壊してください)

     最も、貴方の本気を受けたならば、一撃で粉砕されてしまうでしょうけどね。
     ククッと卑屈に嗤う道化師を、男は心の底から嫌悪する。

「悪いが。……これも、仕事でね」

 精霊の少女が放つ切先を、男は二つ指で受け流した。無骨な外見に似合わぬ、繊細な動きで。
 体勢を崩した所へ、追撃の炎を放つ。太陽のように眩い輝きが、研ぎ澄まされた火焔が爆発する。

     黒禍の宝石は、約定の証書。受け取り、圧搾して、砕く。
     掌に染み残る、一度きりの強制契約。その優先度は、男に与えられた使命を上回る。

    (相手は穢れた精霊。躊躇いなど無用ですとも)

 不意に、背中を圧された感触。踏みつけられ、地べたに頬をこすり。

 精霊の少女が振り返る。閃光に灼けた瞳を、激痛に逆らい大きく見開いた。
 声にならない声。破裂の轟音に巻き込まれ、届かない。


     輝きの中心に、一匹の猫がいた。


 肌はエチレン重合構造高分子体、ポリエチレン100%。ただし神力による材質保護を含む。
 中身はセルロース。アオイ科ワタ属の多年草より採れる繊維を中心とした複合材。

 蜘蛛の巣状に張り巡らせた神力が、炎に焙られて蒸発していく。
 新たに供給される宛てもなく、疲弊しきった神威では防ぐことの出来ない燃焼。
 
(姐さん…。悪ィな、最後まで護りきれねェわ)


     あの日、瞼を開けた先に見た女の子の笑顔が、今でも忘れられない。
     瞳の端からぼろぼろと落とした涙の暖かさが、今でも忘れられない。
     死にかけるほどの腕力で抱きしめられた想い出は、今でも忘れない。

     神位に序されるアイヌの神昇祭の中、不逞な願いを心に描いた。
     彼女の為に生きようと誓った――。


 炎を掻き分けて近づこうとする少女に、黒猫は微笑みを投げる。
 嗚呼、もう声を聴くことすら叶わないのか。ほんの数分前の戯言が、末期の杯か。

 もう一度だけ、見たかった。
 感情の起伏を失った彼女の、心からの笑顔が見たかった。

(還りてェな、あの頃に)

 黎明の紫に満たされた空へ。

 二人で。

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つれづれなるまま、
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