歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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[ Event of "Hallo Ween Day -Transforms to the stuffed animal" that "ENo.42 Sacher" Presents ]
海岸沿いに密集した、深い森林に足を踏み入れる。
行く先を同じくする冒険者達の噂。この辺りに乱立する木々には、椰子(ヤシ)や紫壇(ローズウッド)が自生しているという。
陽光を遮り適度に冷やされた空気は、若葉の吐息を含んで甘く変質していた。
仲間の頭上でまどろんでいたふれあは、気配を感じて首を傾げる。
ナニカと、目があった。
への字に口を曲げながら、茂みの隙間から顔を覗かせて、こちらをじっと見つめている。
不意に、ナニカの口が開き、ニイッと頬が釣りあがる。
縫い付けられた黒糸に痛々しく引きつられながらも、楽しそうに笑う。
「アヒャヒャヒャヒャ!」
ぴょんぴょんと不思議な擬音すら立てながら、跳ねて森の暗がりへ姿を消していく、ナニカ。
時折、振り返る仕草。ついてこいと、言外に示唆しているのか。
ふれあはひょいと地面へ降り立った。背負う剣を確かめながら、小走りに跡をつける。
仲間に声をかけるべきか考えたが、早く追いかけないと見失ってしまいそうだ。
ナニカの跳ねゆく道は、思いのほか堅い。
察するに、山犬か狐が踏み固めた獣道か。靴底に確かな質感を覚えながら、駆ける。
油断はしない。昨日出会った大熊は、冬眠前だというのに気性も激しく危険な相手だった。
誘われる先に罠が待ち受けている可能性もある。各方面への警戒も、常に怠らない。
やがて鬱蒼とした森はまばらに密集度を減らし、その先には、
「………!?」
ざあっと、涼やかな風が薙いだ。一斉に舞い上がる白い綿毛に、心を奪われる。
鮮やかな赤朱、透き通る蒼碧、煌き踊る黄橙の花々。
むせ返る花蜜の匂いに、ふれあの足は思わず立ち止まった。
森を抜けた先に、このような美しい花畑が広がっているとは誰が想像していようか!
花の一輪一輪は、小精霊の背丈に合わせたかのように、小さくて可愛らしい。
普段、誰かの頭上からでしか見下ろせない光景。不思議な花畑に、少女は息を呑む。
「……。きれい」
ふらふらと近寄っていく。
思考が奪われていた。今、何物かに襲われたら確実に先制を許しているところだ。
ちんまりとした秋桜に近づいて、すーっと大きく息を吸い込んだ。
そのまま、意識が。薄れて。いく――。
"――Happy Hallo Ween!!"
脳裏にはじけた大きな声。
びくっと身体をふるわせて、目を覚ます。
ぼやけた視界。ごしごしと瞼を擦ろうとして、不確かな感触に気づいた。
「……おぉ?」
ふわふわざらざらした布の質感。アルワンの背中に抱きついた時と同じ手触り。
指はない。丸く柔らかく尖った掌。これではまるで、自分がぬいぐるみになってしまったかのようではないか。
びっくりしながら自分を確かめようとして、足がもつれてこけた。
何が起きているのか――。
――少し考えて、考えることを放棄した。もともと、複雑なことを考える頭は持っていない。
脳が煙をふくまえに、現状を受け入れるほうが早いというものだ。
「アヒャヒャ♪ ハロウィン前日に目覚めるはずなのに、当日に目が覚めるなんて、…寝ぼすけさんだねぇえ!」
「迎えにきた。もう、向こうに多くのぬいぐるみが集まっている。急がないと、乗り遅れるぜよ」
突然沸いた声に視線をあげる。
そこには、ふれあが追いかけていたナニカと、別のナニカが、二匹いた。
黒い人形。渦を巻く紫水晶の瞳、縫い付けられた口でケラケラと楽しそうに笑っている。
白い人形。左目を覆う眼帯。耳らしき先に尖る爪。憮然とした表情で、こちらを見ている。
「誰?」
問いかける。殺気は感じない。完全に警戒を解いたわけではないけれど。
「ザッハだよぉおん! ふれあと同じぬいぐるみ! ほらほら、こっちおいでぇえ♪」
「名乗りはあとでするぜよ。もう、ハロウィンは始まっている。付いてこい」
ぐいと無遠慮に腕をつかまれて、ぽよんぽよんと引き寄せられた。
足元がおぼつかない。地面を踏むというより、跳ねているという感覚。
見れば、足も丸くなっていた。本当に、自分はぬいぐるみなっているようだ。
わけのわからないまま手を引かれ、進み行く先にはお化け蕪のランタンが飾り付けられた遺跡外。
お化けに魔女、吸血鬼といった仮装に身を包んだ"ぬいぐるみ"達。
目を白黒させている――赤いボタンの瞳になっていたが――ふれあに、ザッハと名乗った黒い人形が振り返った。
大仰に両手を大きく広げ、これ以上愉快なことはないとでもいう風に、とても楽しそうに、叫ぶ。
「トリィック・ォァ・トリィィィィィィト!」
――ハロウィンの夜へ、ようこそ!
+斜+
※ハロウィン日記につき、主催者のENo.42 ザッハさんをお借りさせていただきました。
-斜-
不意に、ナニカの口が開き、ニイッと頬が釣りあがる。
縫い付けられた黒糸に痛々しく引きつられながらも、楽しそうに笑う。
「アヒャヒャヒャヒャ!」
ぴょんぴょんと不思議な擬音すら立てながら、跳ねて森の暗がりへ姿を消していく、ナニカ。
時折、振り返る仕草。ついてこいと、言外に示唆しているのか。
ふれあはひょいと地面へ降り立った。背負う剣を確かめながら、小走りに跡をつける。
仲間に声をかけるべきか考えたが、早く追いかけないと見失ってしまいそうだ。
ナニカの跳ねゆく道は、思いのほか堅い。
察するに、山犬か狐が踏み固めた獣道か。靴底に確かな質感を覚えながら、駆ける。
油断はしない。昨日出会った大熊は、冬眠前だというのに気性も激しく危険な相手だった。
誘われる先に罠が待ち受けている可能性もある。各方面への警戒も、常に怠らない。
やがて鬱蒼とした森はまばらに密集度を減らし、その先には、
「………!?」
ざあっと、涼やかな風が薙いだ。一斉に舞い上がる白い綿毛に、心を奪われる。
鮮やかな赤朱、透き通る蒼碧、煌き踊る黄橙の花々。
むせ返る花蜜の匂いに、ふれあの足は思わず立ち止まった。
森を抜けた先に、このような美しい花畑が広がっているとは誰が想像していようか!
花の一輪一輪は、小精霊の背丈に合わせたかのように、小さくて可愛らしい。
普段、誰かの頭上からでしか見下ろせない光景。不思議な花畑に、少女は息を呑む。
「……。きれい」
ふらふらと近寄っていく。
思考が奪われていた。今、何物かに襲われたら確実に先制を許しているところだ。
ちんまりとした秋桜に近づいて、すーっと大きく息を吸い込んだ。
そのまま、意識が。薄れて。いく――。
"――Happy Hallo Ween!!"
脳裏にはじけた大きな声。
びくっと身体をふるわせて、目を覚ます。
ぼやけた視界。ごしごしと瞼を擦ろうとして、不確かな感触に気づいた。
「……おぉ?」
ふわふわざらざらした布の質感。アルワンの背中に抱きついた時と同じ手触り。
指はない。丸く柔らかく尖った掌。これではまるで、自分がぬいぐるみになってしまったかのようではないか。
びっくりしながら自分を確かめようとして、足がもつれてこけた。
何が起きているのか――。
――少し考えて、考えることを放棄した。もともと、複雑なことを考える頭は持っていない。
脳が煙をふくまえに、現状を受け入れるほうが早いというものだ。
「アヒャヒャ♪ ハロウィン前日に目覚めるはずなのに、当日に目が覚めるなんて、…寝ぼすけさんだねぇえ!」
「迎えにきた。もう、向こうに多くのぬいぐるみが集まっている。急がないと、乗り遅れるぜよ」
突然沸いた声に視線をあげる。
そこには、ふれあが追いかけていたナニカと、別のナニカが、二匹いた。
黒い人形。渦を巻く紫水晶の瞳、縫い付けられた口でケラケラと楽しそうに笑っている。
白い人形。左目を覆う眼帯。耳らしき先に尖る爪。憮然とした表情で、こちらを見ている。
「誰?」
問いかける。殺気は感じない。完全に警戒を解いたわけではないけれど。
「ザッハだよぉおん! ふれあと同じぬいぐるみ! ほらほら、こっちおいでぇえ♪」
「名乗りはあとでするぜよ。もう、ハロウィンは始まっている。付いてこい」
ぐいと無遠慮に腕をつかまれて、ぽよんぽよんと引き寄せられた。
足元がおぼつかない。地面を踏むというより、跳ねているという感覚。
見れば、足も丸くなっていた。本当に、自分はぬいぐるみなっているようだ。
わけのわからないまま手を引かれ、進み行く先にはお化け蕪のランタンが飾り付けられた遺跡外。
お化けに魔女、吸血鬼といった仮装に身を包んだ"ぬいぐるみ"達。
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つれづれなるまま、
書き綴ってます。
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