2008/12/24 (Wed) 探索67日目-日記

[ Event of "StarSpangled Night" that "CNo.271 Rental declaration" Presents ]


――綺麗な世界が見たい。

夜を見上げながら、そう呟いたのは誰だったか。
満天の星空。自然が描く奇跡。
美しきを前にして、力無く微笑むはかつての自分。

世界はかつて、夜より昏い闇に閉ざされていた。

開かれぬ瞼は、植えつけられた呪いを抑えるため。
大切な友達を、意味無き死に至らせぬため。

感情を失って得た光は、とてもつまらないものだった。
幸せとは何だろう。
思い出せば、涙のひとつくらい流れるものなのだろうか。


踏みつけて気づいた、ラッピング付きのカードを見下ろす。

大きさは、彼女の体格のおよそ倍。
通常の人ならば片手より溢れる程度で済むだろう。
だが、コロポックルには手に余る。寝床に敷くには丁度良いか。


カードには、ロウソクが添えつけられている。

透き通る金色で固められた蝋に、しなやかな碧色の灯心。
ほのかな匂いは金木犀。鼻梁を刺激しない、優しい薫り。
誰かの忘れ物だろうか。彼女はかすかに首を傾げた。


カードには、硬質の印字で言葉が書かれていた。

聖なる夜に灯してください。
無機質な共通言語。しかし、綴られた文字は心に波紋を投げかける。
折りしも世界は23の時刻を刻む。ホーリーナイト。クリスマス・イブ。


少女は、ロウソクへ火を灯す。

何か深い考えがあったわけではない。必要に迫られたわけでもない。
焔を燃やしたのは、カードの文字を忠実に履行した結果でしかない。
極めて事務的に。極めて理化学的に。ロウソクは、小さな炎を得た。


――――。！


誰かが、どこかで。

同じように火をつけた。

それだけのこと。

たったそれだけのことなのに。


息を潜めた大地に、無数の煌きを彩った。
夜空に広がる湖水が、無数の瞬きを映した。
降り積もる氷の結晶が、無数の輝きを反射した。


少女は、観ていた。


ぽかんと開いた口元はだらしなく。


ただ、見つめていた。


いつまでも、いつまでも……――