2009/01/15 (Thu) 探索68日目-日記

丘の稜線から差し込む光が、緋色の瞳孔を灼く。

新たな年の幕開け。
異端なる島へ踏み入れて後、二度を迎える迎春の刻。
既に不安定な生活への強制には慣れたが、夢の先は未だ見果てぬ。

彼の輝きの先、切り立つ崖を越えた地に目指すべき相手が陣を敷く。
何故戦わねばならぬかを問えば、答えは単純な解を得る。

即ち、宿命であると。



「結局、何処までいっても逃れられやしねーのさ」

尖角を額に持つ黒兎は静かに呟く。
仄かに重なる幻影、身長の倍を超える雄大な翼広げし木菟の姿。

「だって、戦うこと意外知らない」

精霊の少女は自信なく応える。
古蛇の毒は幾分か潜め、不思議と表情に微細な活力が甦っていた。

「誰と共にいても、自分しか進めない道はある」

満ちた魔力を持て余している長耳の少女。
多方面からの状況と情報を精査し組み上げた指揮は、幾許も揺るぐことなく。

「大丈夫だよ。だって、みんないるもの」

微笑に細められた碧紅の違色瞳は、とても自信に満ち溢れ。
繰る占札から抜き出す寓意の挿画は星。象徴が意味するは希望。



そして、道化師は表情を隠す仮面をかなぐり捨て、不機嫌に吐いた。

「……悉く先手を打ってくれるね？」

明らかに、魔術的な監視網を突破する技を備えた者の仕業。
同郷に近い次元知識を有する魔術師の手練手管に違いない。

実験体、守護獣、調整者、天敵。なんとふざけた編成だ。
仕組まれたものなら笑いも誘うが、経歴を調べても偶然でしかありえない絆とは。

「せっかくの遊び場、邪魔はさせないよ？」

ひとしきり周囲を見渡し、目的の相手がいないと悟るや瞳を閉じる。

ジジッと低い音がなり、道化師は――道化師の意識を写された素体は力なく崩れ落ちた。

均整の取れた裸体を惜しげもなくさらす女。
女は機械的に身体をギシリと揺らしながら、異邦の意思から解放されて取り戻した自由で口にした。