歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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夏草や兵どもが夢の跡――。
東洋の詩吟に詠われし、終端の独言だ。
2日間に渡って繰り広げられた『カメーリア学校文化祭"ツァオベラー・フェスト"』は、無事閉幕を迎えた。
数々の騒動はあったものの、新設校が何の準備もなく始めたパーティとしては大成功と言えるだろう。
作業服を着た業者が、声をかけあってフェストの片付けに勤しんでいる。
カメーリアは、フェスト翌日を休校に指定していた。
そのため、撤去活動に従事する業者の他に学生の姿はほとんど見当たらない。
「どこに連れていかれるのかしら…」
そんな中、ひとりの例外がいた。
旅仲間の宿に顔を出してみたものの「まだ準備中だから帰って寝てろ」と追い返された、独りぼっちの夢猫ぴあのだ。
東洋の詩吟に詠われし、終端の独言だ。
2日間に渡って繰り広げられた『カメーリア学校文化祭"ツァオベラー・フェスト"』は、無事閉幕を迎えた。
数々の騒動はあったものの、新設校が何の準備もなく始めたパーティとしては大成功と言えるだろう。
作業服を着た業者が、声をかけあってフェストの片付けに勤しんでいる。
カメーリアは、フェスト翌日を休校に指定していた。
そのため、撤去活動に従事する業者の他に学生の姿はほとんど見当たらない。
「どこに連れていかれるのかしら…」
そんな中、ひとりの例外がいた。
旅仲間の宿に顔を出してみたものの「まだ準備中だから帰って寝てろ」と追い返された、独りぼっちの夢猫ぴあのだ。
数分前までの彼女は、何をする宛もなくすっかり暇を持て余していた。
旅装も兼ねた私服姿で校内を散策しながら、朱色のアンブレラを掌中でくるりと廻し。
物想いに耽れば、思い出すのはフェストの記憶。ドキドキやワクワクの詰まった幸せたっぷりの2日間。
――貴様に、幸せに笑う"資格"があるとでも?
不意に滑り込んできた言葉。ハッと両耳を抑え、かぶりを振る。
幻聴だ。記憶の奥底に閉じ込めた想念が、寂寥を喰らって増長している。
師匠の言葉を思い出せ。今の私には、幸せに笑う"義務"がある。
冬の寒さを忍ばせて、常緑樹の葉擦れが哭く。
澄んだ雑音が、泥濘に囚われかけた精神に信念の炎を灯す。――"私"は、"私"を取り戻す。
ふと気づく。ここは、ミレッティ女子寮へ戻るルートじゃない。
自覚はなかった。気の向くままに歩いてみた処、どうやら自分は寮へ戻りたくなかったらしい。
「にゃあ」
行先に窮したところで、小動物の鳴き声が聞こえてきた。
振り返ると、灰毛の猫がパープルサファイアの瞳で見つめている。
「確か、ラナ先輩のところの」
名前は確か、ユベル。
以前、撫でさせてもらおうと手を伸ばしたが、つれない態度で避けられたことがある。気難し屋さんなのだろうか。
ユベルはふいと視線を逸らし、街路脇のコンクリートブロックの上をトコトコ歩いていく。
見送るピアノ。立ち止まるユベル。顔だけこちらへ向けて、尻尾がふらりと揺れる。
「…着いてこいってことですの?」
再び歩き始めたユベル。
不思議に思いながらも、追いかけていくピアノ。
どうせ寮に帰っても何もすることが無いのだ。猫の気まぐれと戯れるのもいいだろう。
「と、思った私が浅はかでしたわー!?」
数分後、ぜいぜいと呼気を荒くしながら叫ぶ少女がいた。
ユベルは猫である。尻尾を含めても体長90cmの小動物的矮躯から見れば、舗装された路地だけが道ではない。
生垣のすき間を歩くことから始まって、高塀に飛び移り、ため池の杭堤を飛び進み。
撤去業者が作業している箇所は迂回してくれたものの、プール付設男子更衣室の裏手を行く時は真剣に悩んだ。
「お、臆することなどありませにゅわー!」
こいつ大丈夫か?という視線を寄越すユベルに、なんとか喰らいついていく。
蜘蛛の巣が張る倉庫の横道、錆びた金網フェンスの穴、植え込みの隙間を匍匐前進し。
右手側に見えていた大きな壁は、どうやらゲルブ棟のようだ。
ということは、伸びている小径の先はヴェルザ男子寮か。
髪に絡んだ枯れ葉を摘んで取りながら、ピアノは感嘆のため息をついた。
「こんな近道がありましたのね」
戦技修練室からプールを回り、直接男女寮へ向かう裏ルート。
近道というよりは、獣道という気もするが。そもそも何度も利用したい順路でもない。
ケルブ棟の裏手は池を迂回する形で遊歩道が膨らみ、ちょっとした広場になっていた。
整備された花壇を前に幾つかベンチも置かれ、観光名所というほどではないが憩いの場として最適だ。
広がる光景に見惚れたピアノの視界で、灰銀の尻尾が揺れる。
「ぴあのちゃん?」
耳朶に撫でる柔らかな声が聴こえてきた。
ベンチのひとつに腰掛けていたのは、ラナンディア・フェルシュング。
「え、ラナ先輩?」
ラナンディアは、いつものようにヘッドフォンを装着していたが、私服ではなかった。
休日なのにゲルブの学生服をきっちり着こなして、まるで授業でも受けてきたかのようだ。
「どうしたの? ここで出会うのは珍しいよね」
「あ、えっと、その」
慌てて灰猫の姿を探すも、なぜか見当たらない。
隠すことではないが、ここに至る道筋を、どう伝えればいいか説明に困った。
「…そう、ですわね。
最近、ゲルブ棟に来る機会は増えましたけど、周囲の散策なんてほとんど致しませんもの。
こんな素敵な場所があったのですね」
「いいでしょ。棟の近くにあるのに、知らない人が多いんだよね。
ここ、僕のとっておきの場所」
くすくすと笑みを転がすラナンディア。
子供のような無邪気さに、ふとピアノの表情も綻んだ。
「先輩、なんで制服着てるんですか?」
「あ、これ? …ん、なんとなく…かなあ」
ラナンディアは襟元を摘みながら、言葉をつなげる。
「いつもの習慣ってやつ?
朝起きて、ご飯食べて、制服着て、学校ついたときに『そういえば休みだ』って気付いたという」
「先輩ならやりそうですけど、冗談ですわよね」
「あれ、わかる?」
とぼける先輩に、ジト目を向ける。
あははと頭を掻くラナンディア。自分を格好悪く見せたがるのは、この先輩の悪癖だ。
「本当に、別にたいした意味はないよ。
フィリーディス君に勉強を見て貰ってたってのもあるんだけど…。
ただ、今日は制服で過ごしてみたかった。それだけかな」
「…それだけですの?」
「うん、それだけ」
ピアノはそっと顔を背ける。
きらきらと陽光を反射する、碧玉色の泉水を眩しそうに見つめ。
「ピアノちゃんこそ、独りで散歩なんて珍しいじゃない。
今日は休日だよ?」
引き寄せた片足に顎を乗せ、悪戯っぽく囁いてくるラナンディア。
「休日に散歩するのが珍しいことですの?」
「旅装姿を解かずに散歩するのは、珍しいことだと思うよ」
何もかも見透かしているみたいな、押し殺した笑いが聴こえてくる。
むかむかするので、見てなんてやらない。気づかないふりをして、そっぽを向く。
「たまたまですわ」
「…たまたま、ね」
ラナンディアは、足元の石ころを取りながら立ち上がった。
かぶりをつけて勢いよく振り抜く。手のひらサイズの平たい小石は、水面に三回跳ねて沈んだ。
「ま、そういう日もあるよね」
なんだか不意におかしくなって。
ピアノは愛用の朱傘を後ろ手に持ち替えながら、「そうですわよね」と頷いた。
遠く聞こえてくる撤去の作業音。夕方も過ぎれば、すっかりフェストの気配も片付けられているだろう。
明日からは、いつもの日常が戻ってくる。
『――やれやれ、世話のかかる』
二人の背後。ラナンディアが席を譲ったベンチには、いつの間にか灰猫のユベルが収まっていた。
尖る牙を剥き出しに、大きな欠伸をひとつ。
自らの毛皮に丸まって、彼はそっと、気怠げに目を閉じる。
+斜+※今回の日記には、ラナンディア・フェルシュング(825)さん&愛猫のユベル君をお借りしています。-斜-
旅装も兼ねた私服姿で校内を散策しながら、朱色のアンブレラを掌中でくるりと廻し。
物想いに耽れば、思い出すのはフェストの記憶。ドキドキやワクワクの詰まった幸せたっぷりの2日間。
――貴様に、幸せに笑う"資格"があるとでも?
不意に滑り込んできた言葉。ハッと両耳を抑え、かぶりを振る。
幻聴だ。記憶の奥底に閉じ込めた想念が、寂寥を喰らって増長している。
師匠の言葉を思い出せ。今の私には、幸せに笑う"義務"がある。
冬の寒さを忍ばせて、常緑樹の葉擦れが哭く。
澄んだ雑音が、泥濘に囚われかけた精神に信念の炎を灯す。――"私"は、"私"を取り戻す。
ふと気づく。ここは、ミレッティ女子寮へ戻るルートじゃない。
自覚はなかった。気の向くままに歩いてみた処、どうやら自分は寮へ戻りたくなかったらしい。
「にゃあ」
行先に窮したところで、小動物の鳴き声が聞こえてきた。
振り返ると、灰毛の猫がパープルサファイアの瞳で見つめている。
「確か、ラナ先輩のところの」
名前は確か、ユベル。
以前、撫でさせてもらおうと手を伸ばしたが、つれない態度で避けられたことがある。気難し屋さんなのだろうか。
ユベルはふいと視線を逸らし、街路脇のコンクリートブロックの上をトコトコ歩いていく。
見送るピアノ。立ち止まるユベル。顔だけこちらへ向けて、尻尾がふらりと揺れる。
「…着いてこいってことですの?」
再び歩き始めたユベル。
不思議に思いながらも、追いかけていくピアノ。
どうせ寮に帰っても何もすることが無いのだ。猫の気まぐれと戯れるのもいいだろう。
「と、思った私が浅はかでしたわー!?」
数分後、ぜいぜいと呼気を荒くしながら叫ぶ少女がいた。
ユベルは猫である。尻尾を含めても体長90cmの小動物的矮躯から見れば、舗装された路地だけが道ではない。
生垣のすき間を歩くことから始まって、高塀に飛び移り、ため池の杭堤を飛び進み。
撤去業者が作業している箇所は迂回してくれたものの、プール付設男子更衣室の裏手を行く時は真剣に悩んだ。
「お、臆することなどありませにゅわー!」
こいつ大丈夫か?という視線を寄越すユベルに、なんとか喰らいついていく。
蜘蛛の巣が張る倉庫の横道、錆びた金網フェンスの穴、植え込みの隙間を匍匐前進し。
右手側に見えていた大きな壁は、どうやらゲルブ棟のようだ。
ということは、伸びている小径の先はヴェルザ男子寮か。
髪に絡んだ枯れ葉を摘んで取りながら、ピアノは感嘆のため息をついた。
「こんな近道がありましたのね」
戦技修練室からプールを回り、直接男女寮へ向かう裏ルート。
近道というよりは、獣道という気もするが。そもそも何度も利用したい順路でもない。
ケルブ棟の裏手は池を迂回する形で遊歩道が膨らみ、ちょっとした広場になっていた。
整備された花壇を前に幾つかベンチも置かれ、観光名所というほどではないが憩いの場として最適だ。
広がる光景に見惚れたピアノの視界で、灰銀の尻尾が揺れる。
「ぴあのちゃん?」
耳朶に撫でる柔らかな声が聴こえてきた。
ベンチのひとつに腰掛けていたのは、ラナンディア・フェルシュング。
「え、ラナ先輩?」
ラナンディアは、いつものようにヘッドフォンを装着していたが、私服ではなかった。
休日なのにゲルブの学生服をきっちり着こなして、まるで授業でも受けてきたかのようだ。
「どうしたの? ここで出会うのは珍しいよね」
「あ、えっと、その」
慌てて灰猫の姿を探すも、なぜか見当たらない。
隠すことではないが、ここに至る道筋を、どう伝えればいいか説明に困った。
「…そう、ですわね。
最近、ゲルブ棟に来る機会は増えましたけど、周囲の散策なんてほとんど致しませんもの。
こんな素敵な場所があったのですね」
「いいでしょ。棟の近くにあるのに、知らない人が多いんだよね。
ここ、僕のとっておきの場所」
くすくすと笑みを転がすラナンディア。
子供のような無邪気さに、ふとピアノの表情も綻んだ。
「先輩、なんで制服着てるんですか?」
「あ、これ? …ん、なんとなく…かなあ」
ラナンディアは襟元を摘みながら、言葉をつなげる。
「いつもの習慣ってやつ?
朝起きて、ご飯食べて、制服着て、学校ついたときに『そういえば休みだ』って気付いたという」
「先輩ならやりそうですけど、冗談ですわよね」
「あれ、わかる?」
とぼける先輩に、ジト目を向ける。
あははと頭を掻くラナンディア。自分を格好悪く見せたがるのは、この先輩の悪癖だ。
「本当に、別にたいした意味はないよ。
フィリーディス君に勉強を見て貰ってたってのもあるんだけど…。
ただ、今日は制服で過ごしてみたかった。それだけかな」
「…それだけですの?」
「うん、それだけ」
ピアノはそっと顔を背ける。
きらきらと陽光を反射する、碧玉色の泉水を眩しそうに見つめ。
「ピアノちゃんこそ、独りで散歩なんて珍しいじゃない。
今日は休日だよ?」
引き寄せた片足に顎を乗せ、悪戯っぽく囁いてくるラナンディア。
「休日に散歩するのが珍しいことですの?」
「旅装姿を解かずに散歩するのは、珍しいことだと思うよ」
何もかも見透かしているみたいな、押し殺した笑いが聴こえてくる。
むかむかするので、見てなんてやらない。気づかないふりをして、そっぽを向く。
「たまたまですわ」
「…たまたま、ね」
ラナンディアは、足元の石ころを取りながら立ち上がった。
かぶりをつけて勢いよく振り抜く。手のひらサイズの平たい小石は、水面に三回跳ねて沈んだ。
「ま、そういう日もあるよね」
なんだか不意におかしくなって。
ピアノは愛用の朱傘を後ろ手に持ち替えながら、「そうですわよね」と頷いた。
遠く聞こえてくる撤去の作業音。夕方も過ぎれば、すっかりフェストの気配も片付けられているだろう。
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つれづれなるまま、
書き綴ってます。
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