歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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クリスマス――聖夜はこの歪な島にも均等に訪れる。
偉大なる神の子が産まれてきたことを祝う降誕祭。
だが、健やかなる祝福は神の子を信じぬ者にも等しく授けられる。
主は全てに愛を注ぎ、慈悲をもって見守っておられると司祭は説く。
悪魔ですらも、主の御心は疑わぬ。それが、神と呼ばれる顕然たる存在であるのだから。
されど、人類の災厄を独りで引き受けて入滅した神の子を喜ぶは、果たして如何なる呪祭か。
神の子が溢れし神罰を浴びるが故に、人は神の怒りを免れることが出来るという。
ならば、神の子は何者に救いを求めることができるのか。
神は打ち据えるばかり。人は犠牲にするばかり。どこにも、幸いは、無く。
偉大なる神の子が産まれてきたことを祝う降誕祭。
だが、健やかなる祝福は神の子を信じぬ者にも等しく授けられる。
主は全てに愛を注ぎ、慈悲をもって見守っておられると司祭は説く。
悪魔ですらも、主の御心は疑わぬ。それが、神と呼ばれる顕然たる存在であるのだから。
されど、人類の災厄を独りで引き受けて入滅した神の子を喜ぶは、果たして如何なる呪祭か。
神の子が溢れし神罰を浴びるが故に、人は神の怒りを免れることが出来るという。
ならば、神の子は何者に救いを求めることができるのか。
神は打ち据えるばかり。人は犠牲にするばかり。どこにも、幸いは、無く。
「……ま、Mの愛ですからねー」
メルトはぼそりと呟く。
天界のカリスマアイドルは、天使にとって神にも等しい存在である。
十次元を裕に懐におさめる天球ドーム。それを満杯にする、クリスマスライブのチケットは天井知らずのプレミア価格だ。
メルトの所属する愛天使課は属性の近さ故に優先チケットを手に入れる権利があるが、今年は放棄した。
それどころじゃないというのが一番の理由だが、その気になれなかったこともある。
「Gloria in excelsis Deo…♪」
いと高き処に居わす神に、栄光あれ。
クリスマス・キャロルの一説を口ずさみながら、メルトは粉雪の散る空を往く。
(――私の名前はね、クリスマス・キャロルのことなのよ)
ノエル・アニエス・ブレッシングレインの声が甦る。
活力に満ち溢れた躍動的な質感を持つ、柔らかな声がとても好きだった。
耳朶を心地よくくすぐる、鈴の音のように転がる笑い声が今でも忘れられない。
この島で散った、彼女の痕跡を求めて気が逸る。
背後にかなりの距離を置き、カリアとジェイが雪の小道をゆっくり歩いていた。
あの二人には因習がないから。突き合わせるのはとても心が咎めることだ。
しかし、メルトの気持ちに気づいていながら知らないふりをしてくれていることも、理解る。
だからメルトは甘えてしまうのだ。知らないふりをしていることを、更に、気づかないふりをして。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分を偽り続けるつもりなのかしら)
知らないよ、ノエル。もう、本当の自分なんて忘れてしまったんだ。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分の心を預けたままにしているのかしら)
理解らないよ、ノエル。もう、本当の心なんて無くしてしまったんだ。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分を信じてあげられるようになるのかしら)
聞こえないよ、ノエル。もう、本当のことなんて正直どうでもよくなってきているんだ。
(莫迦ね……)
幻想の少女が、薄く躊躇いの仕草を被せて困ったように微笑んだ。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分が自分だけのものだと思っているのかしら)
答えられないよ、ノエル。大事なものは、本当に君だけでよかったんだ。
他に欲しいものなんて何もなかった。孔雀の君も金星の姫も利用して、君を見つけられればそれでよかったんだ。
たとえかすかな残り香だけだとしても――。
少女は応えない。ただ、もたれかかるように頬を、そっとメルトの肩に寄せて。
幻想はいつでも彼に優しい。だが、決して体温を伝えはしない。
「感傷、ですよー。
知ってるし、理解してるし、聞こえてるですし、答えられるですよ。
もうメルトには、時間を巻き戻すことで望みを叶えようだなんて思えないです」
どうしてしまったんですかね、メルトは。
子供っぽい口調を自身の本当であるかのように偽装し、使い続けるうちに自分が騙されてしまったですか。
いつの間にか、何もかもが、元に戻らなくなってきてるですよ?
死せる聖者が三日後に甦ったように、メルトも新しく生まれ変わってしまったのでしょうか。
くだらない論理を頭で閃いて、苦笑する。似合わない考えですと吐き捨てる。
天使に成り下がった身としては、もはや出来ることは神の掌で踊ることだけにしか過ぎない。
ならば精々、華麗に、可憐に、苛烈に舞ってみせようとも思うのだ。
失った彼女の分まで、全力で。
「遅いです! はりーあっぷです!
メルトを先にいかせたりなんかして、魔物に襲われたらどう責任とってくれるですかー!」
天使は、脳裏をよぎったつまらない話を振り切るように、後方へ向かって叫んだ。
膨れっ面もちゃんと用意した。本心が作らせた表情と、自分ですら誤解するほどに精密に。
「うるさい、襲われろ」
「まとめてぶっ飛ばしてやるから気にすんな」
うわ、さんざんな言われようです。
でも、罵声が心地よく感じることもある。
気心の知れた、掛け替えのない仲間の証明であるようにも思えて。
(聖者には、Mの愛が似合うものよね)
……うるさいです、ノエル。
せっかくの聖夜です。ちょっとは感傷に浸らせるですよー。
天使は雪原に口ずさむ。世に幸いあれと、神の言葉を借りて。
『Les anges dans nos campagnes(荒野の天使たちが)
Ont entonne l’hymne des cieux(天を賛美せし聖歌を唄いはじめた)
Et l’echo de nos montagnes(山々は木霊と共に唱和し)
Redit ce chant melodieux(甘美なる旋律を世界へ響かせた)
Gloria in excelsis Deo!(いと高き処に居わす神に、栄光あれ!)』
ハッピー・クリスマス。世界のあらゆる人々に、等しく幸せの訪れんことを――。
メルトはぼそりと呟く。
天界のカリスマアイドルは、天使にとって神にも等しい存在である。
十次元を裕に懐におさめる天球ドーム。それを満杯にする、クリスマスライブのチケットは天井知らずのプレミア価格だ。
メルトの所属する愛天使課は属性の近さ故に優先チケットを手に入れる権利があるが、今年は放棄した。
それどころじゃないというのが一番の理由だが、その気になれなかったこともある。
「Gloria in excelsis Deo…♪」
いと高き処に居わす神に、栄光あれ。
クリスマス・キャロルの一説を口ずさみながら、メルトは粉雪の散る空を往く。
(――私の名前はね、クリスマス・キャロルのことなのよ)
ノエル・アニエス・ブレッシングレインの声が甦る。
活力に満ち溢れた躍動的な質感を持つ、柔らかな声がとても好きだった。
耳朶を心地よくくすぐる、鈴の音のように転がる笑い声が今でも忘れられない。
この島で散った、彼女の痕跡を求めて気が逸る。
背後にかなりの距離を置き、カリアとジェイが雪の小道をゆっくり歩いていた。
あの二人には因習がないから。突き合わせるのはとても心が咎めることだ。
しかし、メルトの気持ちに気づいていながら知らないふりをしてくれていることも、理解る。
だからメルトは甘えてしまうのだ。知らないふりをしていることを、更に、気づかないふりをして。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分を偽り続けるつもりなのかしら)
知らないよ、ノエル。もう、本当の自分なんて忘れてしまったんだ。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分の心を預けたままにしているのかしら)
理解らないよ、ノエル。もう、本当の心なんて無くしてしまったんだ。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分を信じてあげられるようになるのかしら)
聞こえないよ、ノエル。もう、本当のことなんて正直どうでもよくなってきているんだ。
(莫迦ね……)
幻想の少女が、薄く躊躇いの仕草を被せて困ったように微笑んだ。
(ねぇ、メルト。貴方はいつまで、自分が自分だけのものだと思っているのかしら)
答えられないよ、ノエル。大事なものは、本当に君だけでよかったんだ。
他に欲しいものなんて何もなかった。孔雀の君も金星の姫も利用して、君を見つけられればそれでよかったんだ。
たとえかすかな残り香だけだとしても――。
少女は応えない。ただ、もたれかかるように頬を、そっとメルトの肩に寄せて。
幻想はいつでも彼に優しい。だが、決して体温を伝えはしない。
「感傷、ですよー。
知ってるし、理解してるし、聞こえてるですし、答えられるですよ。
もうメルトには、時間を巻き戻すことで望みを叶えようだなんて思えないです」
どうしてしまったんですかね、メルトは。
子供っぽい口調を自身の本当であるかのように偽装し、使い続けるうちに自分が騙されてしまったですか。
いつの間にか、何もかもが、元に戻らなくなってきてるですよ?
死せる聖者が三日後に甦ったように、メルトも新しく生まれ変わってしまったのでしょうか。
くだらない論理を頭で閃いて、苦笑する。似合わない考えですと吐き捨てる。
天使に成り下がった身としては、もはや出来ることは神の掌で踊ることだけにしか過ぎない。
ならば精々、華麗に、可憐に、苛烈に舞ってみせようとも思うのだ。
失った彼女の分まで、全力で。
「遅いです! はりーあっぷです!
メルトを先にいかせたりなんかして、魔物に襲われたらどう責任とってくれるですかー!」
天使は、脳裏をよぎったつまらない話を振り切るように、後方へ向かって叫んだ。
膨れっ面もちゃんと用意した。本心が作らせた表情と、自分ですら誤解するほどに精密に。
「うるさい、襲われろ」
「まとめてぶっ飛ばしてやるから気にすんな」
うわ、さんざんな言われようです。
でも、罵声が心地よく感じることもある。
気心の知れた、掛け替えのない仲間の証明であるようにも思えて。
(聖者には、Mの愛が似合うものよね)
……うるさいです、ノエル。
せっかくの聖夜です。ちょっとは感傷に浸らせるですよー。
天使は雪原に口ずさむ。世に幸いあれと、神の言葉を借りて。
『Les anges dans nos campagnes(荒野の天使たちが)
Ont entonne l’hymne des cieux(天を賛美せし聖歌を唄いはじめた)
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Redit ce chant melodieux(甘美なる旋律を世界へ響かせた)
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ハッピー・クリスマス。世界のあらゆる人々に、等しく幸せの訪れんことを――。
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書き綴ってます。
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