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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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 激痛に顔を歪めながら、気力のみで立ち上がるカリア。
 ジェイもメルトも似たようなものだ。カリアよりは少し余裕がある、それだけの違い。
 偽葉は尽きることなく、ひらひらと舞い降りて悪夢の形を創り出す。

 額に水晶を抱く老人が、虚ろな瞳で呟いた。

「どいつもこいつも私を馬鹿にしおってからにいぃッ…」

 マルクス。レディ・ボーンズと共にいた老人。
 苛められることに悦びを見出す変態だが、身にため込むマナ総量は半派なく高い。
 その老人が、爆発した。
「―――ッ!」

 カリアが超速反応する。愛剣のリーフレイドを横薙ぎにし、神威の衝撃を迸らせた。
 爆発と衝撃。相殺は仕切れない。
 身を砕け散らせながらも蘇生の術で再構築されていく老人。
 咄嗟に加護を張り巡らせたジェイ、妖精の眩惑で回避したカリアに対し、魔力の轟風を直接浴びたのはメルトだった。

 だが、それは策の内でもある。

 メルトもまた、天界法院による熾天使能力使用許可によりエーテルの構成体に膨大な神力を漲らせている。
 飛び散る身体の中から、不死鳥の形状を持つ焔が産まれて踊った。
 劫火の翼が、蘇生しつつあるマルクスに襲い掛かる。

「老人は労わるものだと学校で習わなかった…の…か……」

 身勝手な台詞を呟き、マルクスは葉姿に戻って灰と化し、消滅した。
 荒れ狂う炎が自然の理をねじるように集束し、メルトを蘇生させた。命を触媒とする激突は、天使に軍配があがったらしい。

「よくやった!」

 ジェイが光の盾を張り巡らせ、追撃する偽葉たちの進路を遮る。
 時間稼ぎではない。機を逸らすことで流れをこちらに呼び戻すのが狙い。

 メルトが少ない体力で引き絞った弓が、ニギアと呼ばれる偽葉へ突き刺さった。
 カリアの騎竜が追い打ちをかける。コンビネーションが見事に決まり、ニギアもなた消滅した。

 戦いが、彼らを成長させていくのであろうか。
 マナが満ちた空間だからこそ出来る動きともいえるだろう。順応さえ出来れば、無理と思える攻撃も出来る。
 元より、彼らは本来の力を封じられた者達。強大なマナの使い方は心得ているのかもしれなかった。

 歩行雑草が砕かれる姿を無表情で見送りながら、カエダが呟いた。

「そろそろ潮時ね。いい加減、無理があるわ」
「おやおや、余裕ですねぇ……実に愚かッ!! やはり貴女は知性に欠けているようですッ!
 大人の考えていることなど、何も分かりはしないでしょうなぁ…ククッ!!」

 榊が少女を挑発する。しかし、彼の額には汗が浮いていた。明らかに無理をしている証拠だ。

「あいつは何を目的にしている?」

 カリアが呟く。
 彼の膝は折れていた。剣を杖代わりにして支えている。もう、限界が近い。

「この樹木の周囲にマナを散らすことが目的か。
 最終的にはあのカエダという少女をどうにかしたいんだろうけどなぁ……」

 無理じゃね? と、ジェイがぶっきらぼうに応える。
 背後に控える召喚陣の輝きもかなり薄れていた。これほど数多くの幻獣を一斉召喚したのは初めてだ。
 契約が過剰になり、過負荷がかかりつつある。あと何匹呼ぶことが可能か、見当もつかない。

「おかしいのです」

 メルトが言った。

「これだけのマナを背負えるなら、自分で戦えばいいです。
 なのにメルト達に、あるいは偽葉に力を注いで、代理戦争を引き起こす理由がないです」

 正鵠を射た疑問に、カリアとジェイは口を噤む。

「……おまえ、まともなことも言えるんだな」
「失礼です!?」

 ジェイは優しい瞳でメルトを見る。冗談が、緊迫した場に和らぎを与えた。
 そう、こんなやり取り。彼らの一行は、いつも、そんなやり取りで前を進んできた。

「ならば、そろそろ仕掛け時か」

 カリアが、ぐっと低く腰を落とした。跳躍の構え。
 ジェイが頷き、メルトが羽を広げる。

 ユグドラシルの麓では、カエダが榊の尊大な態度に苛立ちで返していた。

「………もういいわ、全部まとめてあっさり一気に儚く容赦なく一瞬でぶっ潰してやるわよッ!!」

 少女の怒りに呼応したのか、ユグドラシルの葉に宿っていた輝きが一層の光を放つ。
 榊は、引きつった唇を皮肉気に歪めながらククッと嗤う。

「……ヒヒッ、これはこれはこわいこわい。
 こちらも人数が減ったことですし、ちょっとした底上げで悪あがきと参りましょうかねぇッ!!」

 広げた腕から解き放たれるマナの風が、更に変化していた。
 疲労はそのままだが、傷は見る間に塞がれ、魔力が心に甦る。
 マナの過剰摂取。いつ中毒になってもおかしくないレベルで、精神を黒く浸食していく。
 恐らく再戦闘可能な状態に戻したというよりは、馬車馬のように無理矢理動かさせることが目的。

 ただ、それは好都合と言えなくもなかった。
 特に、このような事態にあっては。彼らの目的が、倒すことではなく奪還することにある状態ならば。

 カリアが再び剣閃を閃かせる。
 神罰の如き威力が土煙を巻き上げた。カエダと榊の視線は、突然の事態に釘づけとなる。
 灰色の壁を貫き、炎の咆哮が二人へ襲い掛かった。
 魔竜の息吹。ジェイの指揮は適格で、容赦がない。

 そして、土煙を大きく迂回した天使が疾る。
 更なる輝きを得た偽葉を置き去りに、エーテルの翼をはためかせてカエダの懐へ飛び込む。

「な……!?」

 勝機は一瞬しかない。

 メルトは手を伸ばす。白き少女の傍らに浮かぶ七色に輝く美しい宝玉へ。
 抵抗はない。防護の術式が掛かっていないことは、偽葉との戦闘中に横目で確認を終えている。
 ずっと狙っていた。彼らが、お互いに気を取られる瞬間を。

 ―――獲ったです!

 指に伝わる異質物の感触。ほのかに冷たく、複雑な魔法で構成された材質。
 宝玉の外殻を捉えたことを触感で知覚し、メルトは、強奪の成功を心で叫んだ。

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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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