歌を唄う猫の夢
定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。
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[ -Recollection- ]
Long, Long Ago――
過去は、現在を追いかける。
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
Long, Long Ago――
過去は、現在を追いかける。
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
[ -Someone's Memory- ]
凶鬼の離腕は、鋭利な五爪の刃と成って夜陰を裂く。
本体と別たれてなお動く。さも、人形の繰り糸として操られるが如く。
彼の美青年の精悍な表情が崩れるは、珍しき出来事であった。
如何様な状況に置いても豪胆な意思と冷静な対処をしてのける男にしては、予想を凌ぐ状況であったのだ。
「うらめしや、雷の武士よ!」
喜悦に満ちた鬼女の爪。濃密な妖気に覆われた腕が白い喉元を狙う。
――が、
飛来せし鏑矢一閃。両者の間を貫き通す。
更には、鏃にしがみつく小さな生き物が、鉄針の剣を振るって鋭爪を弾いた。
「綱、無事か!?」
「貞光! 有り難い!」
心預ける郎党の影を見て、渡辺綱は深く息をついた。
馬上にて、黒漆に朱墨で彩られた梓弓を片手に、剽悍な面立ちをした碓井貞光は安堵の表情を見せる。
「戻橋を通りしは僥倖よな。晴明様が式神を放ち、知らせて下さったのよ!」
貞光の視線の先には、桜の老木に突き刺さる太刀が見える。
綱の愛刀”髭切”だ。源満仲公が唐国の鉄細工師に造らせた、源氏重代の宝刀。
彼の仕える頼光将軍が、綱の武勲に報いて下賜した霊具である。
さしもの綱も、武器がなくば鬼の襲撃に耐えられまい。
公時も季武もやがて駆けつけてこようが、今、此処に居なければ意味はない。
「陽姫。綱を守ってくれ!」
貞光は馬首をめぐらし、太刀に向かう。
頼みを受け、満身創痍に欄干へもたれる綱と麗しき友禅の唐衣を被く鬼女の間に立つ少女が、ひとり。
綱の頬に、微かな緩みが走る。
「起きたのか。久しぶりだな?」
「二ヶ月ぶり。私にとっては昨日だけど」
鬼女は異形の容姿のまま、怪訝に首を傾げる。
威圧をもって対するには、あまりもの小さな体躯。三寸程度の背丈しかない。
黒鋼の針を片手に構え、切先を突き出す。
睨む眼光、強き意思を蓄えて。
「綱は、渡さない」
一歩踏み込むことが、躊躇われた。
吹けば飛ぶような極小の豆粒であるのに、照りつける霊圧は骨を軋ませる。
(――住吉の使いか?)
なれば安部晴明の操る式神やも知れぬ。
あのくたばり損ないの老人め。何時までも何処までも邪魔をしてくれる!
鬼は舌打ちすると、橋げたを蹴り、後方へ飛びすさりながら化身を解いた。
女ではなかった。怪異の正体は人の姿にも似て。
涼やかな銀髪を夜風に揺らし、頭部に捩れた角を生やした人鬼は、冷徹な面貌に歪んだ笑みを浮かべた。
「茨城……か!」
正体を知り、茫然と呟く綱。
大江山に巣食う鬼盗賊”酒顛”一の配下にして、自身も銘を知らしめる双角鬼。
かつて其の身が人身だった頃の姿を思い出し、望郷の念と共に悔恨の情が心を黒く蝕む。
親友。――そう呼んでも良い時代があった。
「綱。お前に私の腕を預けおこう」
茨城は狂った哄笑を散らして告げた。
「七日後にその腕、取り返しに参る。ぜいぜい護りを固めておくことだな?」
白蝋色の指先が宙に弧を描く。
ふわり、と、薄絹が舞った。
絹は空気を孕み、鬼の体を包み込むと同時に、質量を失いはらりと落ちる。
鬼は、消えた。
「逃げたのか?」
鞍上より降り立った貞光が、綱へ髭切の太刀を手渡しながら尋ねる。
「わざと見逃したのだろう。鬼共は人の力など、歯牙にも懸けておらんからな」
太刀を受け取り、そのまま手を引き起こされて立つ。
擦過傷と捻挫だけ、致命傷はひとつもないとはいえ、あまりもの傷の多さが神経を鈍くなじる。
不意を衝かれねば遅れは取らぬとは、事済みての祭りであるけれど。
貞光の肩によじ登り、不安そうに覗き込む陽姫。
「綱、だいじょうぶ?」
「ああ。これぐらい、怪我の内にも入らんさ」
「綱は陽姫には優しいのう。拙者にも優しくして欲しいわい」
いじけた振りをする貞光に、陽姫はいい子いい子と顔を撫でる。
貞光の相好が崩れるのを見て、綱は苦笑した。四天王は皆、この身の丈三尺余の精霊に弱いのだ。
「陽姫。あれが茨城だ」
だからこそ、悩む。
告げねばならぬ事実の重み。頼光様は、告げずとも良いと情けをくれたが。
彼女は幸せになるべきだ。
殺伐とせし武者の修羅道をなぞる必要など、何処にも在りはしない。
されど。
「幼い頃は枕を共にした馴染でな。奴とはよく、遊んだ。
共に源家の武者に成ろうと誓い合った身であったが……。
奴の天命を狂わせたのが、刻継法師と名乗る怪僧だ。
不思議なことにな。お前に呪詛をかけた刻継とか名乗る官吏と、銘を同じくしておるのさ」
夢猫陽姫。
のちに夢猫ふれあと名乗る精霊の少女は、そこで初めて、自分の仇敵の手がかりを得たのだった。
凶鬼の離腕は、鋭利な五爪の刃と成って夜陰を裂く。
本体と別たれてなお動く。さも、人形の繰り糸として操られるが如く。
彼の美青年の精悍な表情が崩れるは、珍しき出来事であった。
如何様な状況に置いても豪胆な意思と冷静な対処をしてのける男にしては、予想を凌ぐ状況であったのだ。
「うらめしや、雷の武士よ!」
喜悦に満ちた鬼女の爪。濃密な妖気に覆われた腕が白い喉元を狙う。
――が、
飛来せし鏑矢一閃。両者の間を貫き通す。
更には、鏃にしがみつく小さな生き物が、鉄針の剣を振るって鋭爪を弾いた。
「綱、無事か!?」
「貞光! 有り難い!」
心預ける郎党の影を見て、渡辺綱は深く息をついた。
馬上にて、黒漆に朱墨で彩られた梓弓を片手に、剽悍な面立ちをした碓井貞光は安堵の表情を見せる。
「戻橋を通りしは僥倖よな。晴明様が式神を放ち、知らせて下さったのよ!」
貞光の視線の先には、桜の老木に突き刺さる太刀が見える。
綱の愛刀”髭切”だ。源満仲公が唐国の鉄細工師に造らせた、源氏重代の宝刀。
彼の仕える頼光将軍が、綱の武勲に報いて下賜した霊具である。
さしもの綱も、武器がなくば鬼の襲撃に耐えられまい。
公時も季武もやがて駆けつけてこようが、今、此処に居なければ意味はない。
「陽姫。綱を守ってくれ!」
貞光は馬首をめぐらし、太刀に向かう。
頼みを受け、満身創痍に欄干へもたれる綱と麗しき友禅の唐衣を被く鬼女の間に立つ少女が、ひとり。
綱の頬に、微かな緩みが走る。
「起きたのか。久しぶりだな?」
「二ヶ月ぶり。私にとっては昨日だけど」
鬼女は異形の容姿のまま、怪訝に首を傾げる。
威圧をもって対するには、あまりもの小さな体躯。三寸程度の背丈しかない。
黒鋼の針を片手に構え、切先を突き出す。
睨む眼光、強き意思を蓄えて。
「綱は、渡さない」
一歩踏み込むことが、躊躇われた。
吹けば飛ぶような極小の豆粒であるのに、照りつける霊圧は骨を軋ませる。
(――住吉の使いか?)
なれば安部晴明の操る式神やも知れぬ。
あのくたばり損ないの老人め。何時までも何処までも邪魔をしてくれる!
鬼は舌打ちすると、橋げたを蹴り、後方へ飛びすさりながら化身を解いた。
女ではなかった。怪異の正体は人の姿にも似て。
涼やかな銀髪を夜風に揺らし、頭部に捩れた角を生やした人鬼は、冷徹な面貌に歪んだ笑みを浮かべた。
「茨城……か!」
正体を知り、茫然と呟く綱。
大江山に巣食う鬼盗賊”酒顛”一の配下にして、自身も銘を知らしめる双角鬼。
かつて其の身が人身だった頃の姿を思い出し、望郷の念と共に悔恨の情が心を黒く蝕む。
親友。――そう呼んでも良い時代があった。
「綱。お前に私の腕を預けおこう」
茨城は狂った哄笑を散らして告げた。
「七日後にその腕、取り返しに参る。ぜいぜい護りを固めておくことだな?」
白蝋色の指先が宙に弧を描く。
ふわり、と、薄絹が舞った。
絹は空気を孕み、鬼の体を包み込むと同時に、質量を失いはらりと落ちる。
鬼は、消えた。
「逃げたのか?」
鞍上より降り立った貞光が、綱へ髭切の太刀を手渡しながら尋ねる。
「わざと見逃したのだろう。鬼共は人の力など、歯牙にも懸けておらんからな」
太刀を受け取り、そのまま手を引き起こされて立つ。
擦過傷と捻挫だけ、致命傷はひとつもないとはいえ、あまりもの傷の多さが神経を鈍くなじる。
不意を衝かれねば遅れは取らぬとは、事済みての祭りであるけれど。
貞光の肩によじ登り、不安そうに覗き込む陽姫。
「綱、だいじょうぶ?」
「ああ。これぐらい、怪我の内にも入らんさ」
「綱は陽姫には優しいのう。拙者にも優しくして欲しいわい」
いじけた振りをする貞光に、陽姫はいい子いい子と顔を撫でる。
貞光の相好が崩れるのを見て、綱は苦笑した。四天王は皆、この身の丈三尺余の精霊に弱いのだ。
「陽姫。あれが茨城だ」
だからこそ、悩む。
告げねばならぬ事実の重み。頼光様は、告げずとも良いと情けをくれたが。
彼女は幸せになるべきだ。
殺伐とせし武者の修羅道をなぞる必要など、何処にも在りはしない。
されど。
「幼い頃は枕を共にした馴染でな。奴とはよく、遊んだ。
共に源家の武者に成ろうと誓い合った身であったが……。
奴の天命を狂わせたのが、刻継法師と名乗る怪僧だ。
不思議なことにな。お前に呪詛をかけた刻継とか名乗る官吏と、銘を同じくしておるのさ」
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アンジニティ:
ENo.106 梟霊アルワン
Sicx LivesのPLのひとり。
ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。
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