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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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[ -Recollection- ]

 一閃。残滓を置き去りに、刀身が撥ねた。

 決して油断していたわけではない。標的を誤ったぐらいで契約は消滅しないのだから。
 だが、反応は出来なかった。
 痛覚が役目を思い出すまで、身動きも取れなかった。

 刎ね飛ばされた左掌が、軽やかに宙を舞う。

『Der Alptraum eines schneebedeckten Feldes――!』

 誰よりも冷静に状況を判断していたラピズラズリが、黒炎を宿す肉片に魔術を解き放つ。
 フリーズ・サイ。イガラシから離れた肉片は鋭い刺針に貫かれ、凝結して破砕する。
 太陽を反射して散りゆく氷片は、銀色の残光を煌かせて消えた。

 ラズの動きは、リスティスの目を覚ます。
 目前で展開された光景に、顔面を蒼白にして竦んでいた彼女は、目前にカードを展開して呪文を唱えた。

『――Turn the wheel of fortune of the ocean……』

 コメット。孤独を馳せる漆黒の星。
 ダストテイルを曳いて疾る彗星の一撃を、イガラシは無防備に受けた。

 避けられなかったわけではない。避ける気が、なかった。
 黒炎の契約は、左掌を失った瞬間に破棄されていた。
 彼は倒れる。両腕を開いて大の字を模すように、仰向けに倒れ伏す。

「ははは……、やっぱ若い子には勝てないねぇ」



 精霊の少女は、もうイガラシのことなど見ていない。

 消し炭と化した布切れを掴み、茫然と立ち尽くしていた。
 二撃目を放とうと突き出した男の手首を無造作に斬りおとしたのは、自我無き無意識の衝動。
 彼女の心は、世界を映さない。

「しっかりしなさい!」

 不意に、頬を張り飛ばされる。
 意識は朦朧としていたが、瞳に色は戻った。

 雀蜂のアニエスが、六本の節足で何かを掴んでいる。
 透き通る多角形の結晶の中に、青白く、茫洋とした物質が蠢いていた。
 綺麗だと、思った。それが何かを思い巡らす思考は働いていない。
 アニエスは結晶体をふれあに押し付けると、翅を唸らせて振り返った。

「そこの召喚師、境界を固定して浄化なさい!
 それから魔術師! こっちへ。魂尾の縛法は扱えて?」
「似たようなことなら。幽星体を高次空間に縫えばいい? 長くはもたない」
「構いませんわ。癒魂の儀が終わるまで保てばいい」
「泰山府君? 無理。準備が足りない」

 ラズとアニエスの素早い協議を横目に、空へ豪快にカードをバラ撒くリズ。
 小アルカナを外枠に、大アルカナを内枠に、黄道十二宮の狭域結界を敷く。
 エーテルで形作られた巨大なホロスコープが、精霊の少女を中心として静謐の境界を築きあげる。

「安心なさい、魔術師。アナタに神属の奇跡を見せてあげるわ」

 雀蜂はそう告げると、ただ一人無力に流される少女に向き直る。
 複眼の瞳が、ふれあを鋭く射抜いた。

「別に、アイツの言葉に心を動かされたわけではないわ。
 アナタに融合した穢れを解き放つことで、何か取り返しのつかないことが起きちゃうのが怖いのよ。
 ――そして。アナタを恒久に助けるには、ワタシに理由がないだけ」

 ふれあは、首を傾げる。言葉の意味が解らない。理解が進まない。
 アニエスは溜め息をつく。放っておけない気持ちは解らなくはないわね、と。

「あの馬鹿猫を、助けられると言っているのよ」

 瞬間。ふれあの精神に火が点る。

「どうすればいい?」

 救えることを前提とし、方法を求める。判断の素早さに、雀蜂は小さく頷いた。

「ワタシの神力を、彼の神魂に補充する。それを他の縫いぐるみに縛りなさい。
 儀式の外殻は、そこの二人が埋めるわ。
 アナタは、――その力でワタシを潰して、彼の魂とよく混ぜてぶちこめばいいの」
 
 粘土みたいにね、とアニエスは告げる。そこに悲嘆の色はない。
 とはいえ、さしものふれあも絶句する。
 つまり、アルワンを助けるためには、アニエスを犠牲にしなければならないということなのだから。

「蜂の一生は短いもの。仮初の神力を与えられただけでは、寿命も変わらない。
 それにね。ワタシは黒猫を殺しにきたのよ? 仇討ちだと思えば心も痛まないわ」
「でも――!」

 ふれあは言い澱む。親友を助けたい、それ以上に望むことなどない。
 でも自分ではなく、他者に等価の犠牲を強いることは即断できない。
 イガラシを斬った瞬間ほど、心を壊せはしない。

「……気にしないで。
 その表情を見せてもらえただけでも、ワタシは幸せだわ」

 アニエスは微笑った。
 昆虫の貌では外面に出しにくいけれど、明らかな喜びを示した。

(そうね。きっと、死ぬことは特に大した問題ではないのよ)


  -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
[ Alwan's Eye -Travel Side- ]

 目を覚ます。
 パッチワークで縫われた瞳は瞬時に映像を取り込む。瞼のない身体にも、もう慣れた。

 最初に飛び込んできたのは、少女の顔。
 いつも見てきた、幼馴染。
 覗き込むように、身体ごと乗り出している。

 あの時は泣いていた。今は泣いていない。
 感情が壊れていることを思い出す。泣き顔はもう見たくないから、それは良かった。

「よう。どうした、不景気なツラしてんじゃねェか」

 茶化し気味に告げた。重苦しい雰囲気は得意ではない。
 どうせなら、いつも明るく楽しいほうがいい。

 ぎゅっと。万力を連想させる怪力で首が絞められた。
 ぐえええと綿の隙間から空気の漏れるような悲鳴。
 縫いぐるみだと思って好き勝手やってくれる。ミミズクの姿なら死んでいるところだ!

「――おかえり、アルワン」

 少女が呟く。力いっぱい抱きしめたまま。ふかふかの絹に、顔を埋めたまま。

「……ただいま、姐さん」

 額に蜂蜜色の角針を生やした兎は、はにかみながら、応えた。

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アンジニティ:
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ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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