2008/08/02 (Sat) 探索47日目-日記

[ Event of "False Island Marchen" that "ENo.494 Peach Chime" Presents ]

　赤茶けたレンガ壁が立ち並ぶ遺跡外の街路に、幾枚ものポスターが貼られていた。
　ビニールの買い物袋を頭上に構え、時速10㎞で疾走していた身長10㎝の少女が立ち止まる。
　

　　"童話・昔話・児童文学等のコス・仮装プチイベントを開催します！"


　桃色のツインテールを結んだ36歳の魔法少女が、可愛らしい笑顔でイベント紹介をしている。

　かすかに首を傾げ。
　少女はおもむろに飛び上がり、ポスターの一枚を剥がして持ち帰った。

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[ The story of "Tommelise" is Flare Yumeneco ]

　Long Long ago...

　ある処に、失った子供を想い、嘆き暮らす可哀想な女の人がいました。
　彼女は思い詰めるあまり、評判の悪い魔女に子供が授かるようにお願いします。

　魔女が不気味な笑みと共に渡してくれたのは、一粒の種。
　早速その種を花壇へ植えると、しばらくして赤いチューリップが咲きました。
　固い蕾が解けると、中には親指ほどの小さな女の子が眠っているのが見えました。
　女の人は大変喜び、親指姫と名付けて我が子として育てることにしました。

　親指姫はすくすくと育ちました。
　具体的には、素手で岩を砕き、震脚で大地を割り、精霊力で焼け野原を作るぐらい。


　ある日のことです。


　極彩色のケバい格好をしたヒキガエルママが、親指姫を白いバンで誘拐してしまいました。
　なんとヒキガエルママは、少女を息子の嫁にしてしまおうと企んでいたのです。

　何が起こってるのかよくわからない親指姫。
　事情を隠れて聞いていたアルワン…じゃなくてメダカが、姫を助けるために睡蓮の茎を噛み切りました。
　裏方でもとっても苦労性です。


　激しい急流に巻き込まれるまま、蓮の葉にゆられ、流れていく親指姫。
　彼女は動揺することもなく、ぐっすり寝ていました。滝つぼに落ちても気づきません。

　それを見たコガネムシが、空から女の子が降ってきた！と叫んで、家に連れて帰ります。
　しかし、コガネムシの奥さんは旦那をバールのようなもので叩いて現実に戻しました。
　らぴゅたは本当に無かったのよ、目を覚ましなさいこのごくつぶしが。しーた、ごめんよ。
　姫は慌てて逃げ出しました。


　しばらく親指姫はひとりで放浪しました。
　暑い夏を越え、寂しい秋が過ぎ、寒い冬が訪れました。
　狐を狩って毛皮を剥いで暖房具としたり、熊を襲って巣穴に溜めた餌を強奪したりしました。
　すっかり野生のお姫さまです。


　そんな時、彼女は野鼠が住む立派なお屋敷を発見します。
　金目のモノをいっぱい溜め込んでいそうでしたが、心優しい親指姫は泥棒も強盗もしません。
　ちゃんと正面からお邪魔し、事情を適当に捏造して一宿一飯にありつくことに成功しました。

　ところで野鼠には、サングラスをかけて毎晩パラリラとバイクを乗り回すモグラの友人がいます。
　モグラは親の権力と親の大金で野鼠の頬をはたき、親指姫をよこせと迫ります。
　金持ちのモグラに貰われれば姫も幸せだろうと、野鼠は少女を売ってしまいました。

　起きたらモグラの家に連れ去られていた親指姫。
　俺の嫁になれと、出会ったばかりでプロポーズ。三次元が二次元に勝ったと不気味な言葉を呟いてます。
　最悪です。
　殴ったら、親父にもどうこうと言い返してきました。追加で五回殴りました。

　少女は夜明けを待ち、大空を悠然と舞っていたツバメをトラップ仕掛けて捕まえます。
　追いかけてくるモンスターペアレントには勝てる気がしませんでした。
　あわれなツバメはナイフを首元に押し付けられるまま、姫を背に乗せ飛び立ちます。


　森を越え、海を越え、雪の消えない山を越え、人の絶えない街を越え。


　やがて少女は、辿りついたのです。
　False Islandと呼ばれている島。ここならドアラ並みにフリーダムに生きていける気がします。

　めでたし、めでたし。


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アルワン「……親指姫って、こんな話だっけ」
ふれあ　「たぶんこんな感じ」