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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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[ Event of "Night of Star Festival" that "ENo.588 Quince" Presents ]


 ふと、視線をあげると、目の前に一匹の猫が座っていた。

「やぁ、お目覚めですね。気分はどう? うなされていたようですけど」

 流暢な言葉で語りかけてくる。
 碧玉色の毛並み、天に張った凛々しい耳、左右へ延びる長い髭。頭上を冠する薄紅色の花。
 表情は読めない。長い髪が隠しているからだ。覗く口元は、笑みも見えず引き結ばれていた。

「…誰?」

 尋ねる。
 答えはなかった。
 声もなく静かになってみると、自分の置かれた状況が見えてくる。
 木造作りの長い廊下に、堅い長椅子が等間隔に向かい合って並べられてた風景。
 窓は持ち上げ式で、振動にあわせてギシギシと軋んでいた。

 ――振動。

 この心地よくも強い揺れには覚えがある。
 倭国を飛び出し欧州へ辿りついた際、ただ一度だけ乗車したことがあったから。
 夢猫ふれあという精霊の少女が体験してきた中では、タイタニックという船の次にでかい乗り物。

 『鉄道』だ。

 とはいえ、このような建造物は全て人間サイズで造られているのが通常。
 今、腰掛けている座席も、彼女にとっては切り立った崖と大して変わらない。

「どこ?」

 かすかに眉根をひそめて呟く。
 生来の眠り症の影響で、目覚めたら知らない土地というのは珍しくはない。
 しかし、ふれあはまだ、あの偽りの島で遣り残したことがある。

「ここは天翔ける星の汽車。終着点は南十字星。もうすぐ銀河ステーションに辿りつきます」

 聞きかじりの受け売りですけどね、と、そこで碧猫はようやく微笑みを見せた。

 ぎんがすてーしょん? …耳慣れない単語。時代を超えて眠ると、往々にして遭遇する現象。
 ふれあは想う。また、何も出来ないまま、大切な日々を失ってしまったのか。

「安心して。貴女はひとりではありませんから」

 気がつけば、廊下を挟んだ隣の座席に、あるいは前に、後ろに気配を感じる。
 みんな猫だった。二本足で歩く、とても人間くさい猫たち。

「ケンタウル祭を知っていますか?」

 碧猫が問いかけてきた。ふれあは首を横に振る。

「幸せを願う祭りです。
 いちいの葉の玉を飾りたて、ひのきの枝に灯りをともし。
 河を流れるは烏瓜のランタン。青白い輝きが水面を一面多い尽くす――。
 それは、とても美しいお祭りなのですよ」

 それがどうしたのだろう。
 意図が掴めず、ふれあは首を傾げる。碧猫は再び、フフ、と笑った。

「銀河ステーションの近くで開かれるのです。
 この汽車に乗っている人はみんな、その祭りへ向かっているのですよ。
 ……そこでは、我々とは別に二人の哀しい乗客を迎えなくてはならないのですが」

 と、言葉を切る。碧猫の表情がかすかに曇った気がしたが、確とは読めなかった。
 ひときわ大きな振動が、気を逸らしたからだ。

「うぅん。どうやら着いたようですね。

 ――ケンタウルス、露を振らせ!
 天の川の御許、半人半獣の賢者が見守る不思議な不思議な迷い猫の集い。
 烏瓜の幻灯はお持ちですか? 尻尾と耳はちゃんと生えていますか?
 切符はこちらでお預かりいたしましょう。お帰りは、夢より醒めての特急便。
 ようこそ、夢猫ふれあ。ケンタウルの星祭へ――」

 立ち上がった碧猫が、ふわりと優雅に一礼する。甘い香りが鼻腔をくすぐった。
 長い髪から覗く触覚が、ぴくりと蠢く。…触覚?

「あ」

 間抜けな声をあげたと思う。一度見た顔は忘れない自信があったのに、すっかり気づかなかった。
 もっとも、相手がヘンテコな猫の容姿をしていては仕方がないのだろうが。

「クリスマスの時以来ですね。もう、半年も経ってしまいましたか?」

 ほがらかに告げる、彼の頭上に咲く花はマルメロ。そう、名前は確か、

「…クインス?」

 鉄道を降りると、そこは広大なパノラマ。
 満天の輝き。明滅する恒星。遥か数億年の過去に瞬いた星屑の残滓。
 彼岸花の咲く小道を、粛々と往くは二足歩行の猫の群れ。
 手にする青白い灯火はWill o' the wispのよう。彷徨う魂は、河に流れて来世へと至る。

 星祭の夜に。

「さぁ、いきましょう」

 碧猫の差し出した碧い烏瓜のランタンに、ぴょんと軽やかに飛び乗って。
 ただひとつ。ふれあは最後まで、自分も猫の姿になっていたことに気づかなかった。

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