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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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  世界はいくつもの世界に分かれている。
  この世界に暮らす人々は
  それらひとつひとつを分割世界と呼んでいる。

  分割世界の文明や環境は様々で
  平和で暮らしやすい世界もあれば
  混沌とした物騒な世界もある。

  舞台となるのは隣り合うふたつの分割世界。

           ~Rulebook「Stage of The Game」より
            -+-+-+-+-+-+-

 轟と叫ぶ風が荒れ狂っていた。
 雲は悠然たる姿をたもつことも出来ず、逆巻く嵐に呑まれて消える。
 目に見えぬ空圧が、突き飛ばし、引き寄せ、四方をねじって疾る。

「ちょちょちょちょちょっとー! 聞いてないわよ、こんなの!」

 焦る声は何処にも届かない。
 声帯振動で発生した音が、温帯低気圧の紡ぐ爆音に敵うはずもなく。

『オイ、手ェ放すんじゃねぇぞ!』

 それでも明瞭に心へ届けられたものは、古くから寝床を共にした相棒の声。
 暴風で若干乱れてはいるものの、霊波を介して届けられる"念話"は心強い。

 少女は、失いかけた握力にいまひとたびの喝を入れる。
 掴んでいるのは、鳥の、ちょっと大柄な梟の足首。
 力を籠めたら折れてしまいそう、と感じる程に細く頼りない。

 されど識っている。彼は、外見が与える先入観に反して優秀だ。
 命を失い、霊体となってなお、この世に留まりつづける格の高い神霊。
 もちろん、そんな褒め言葉は当人に言ってなどやらないが。

「――あっ」

 ふとした心の緩みを突かれた。
 横殴りの暴風が彼女を、思い切り遠く吹き飛ばしたのだ。
 手繰り寄せるも、すでに鳥足は近くにない。
 空虚へ差し伸べた掌に透けて、梟の姿が見る間に遠ざかっていく。

(これは、やばいかなー?)

 風に揉まれながら少女は自嘲する。
 さっき別れたばかりの師匠の笑顔が、走馬灯のように浮かびあがってきた。縁起でもない。
 きっとこのような事態も、お師匠さまなら何とかしてしまうのだろう。
 何といっても彼女は、"魔法使い"なのだから。

 氷を含む雨粒が、頬を弾いて激しい痛みを与えてくる。冷たいを通り越して、痛い。
 極低温が引き起こすのは、急速な血管の収斂。
 つまり、血行不全が引き起こす凍傷への前奏曲だ。

(洒落になんないなぁ)

 降下しているはずなのに、浮遊している感覚。
 もはや自分が、どちらの方向に墜落しているのかすら分からない。
 重力任せにしても、暴風域を抜けるまで生きていられる自信がなかった。

「仕方ない。魔術、使っちゃいますか!」

 少女は心に炎を宿し、全身に力を漲らせた。凍れる水の細粒が、バチンと鋭く弾ける。

 左手に意識を集中。たなごころに在るのは、愛用する"傘"の質量。
 感覚を失いつつある右腕を伸ばし、"術具"に添える。
 悔しいが、自分の魔力だけでこの"魔術"を解放することは難しい。
 師匠の姿を今一度、思い浮かべる。
 いざという時に備えて、あらかじめ託されていた"魔力"に接続し。

『――Accses, Music entrusted "Supercalifragilisticexpialidocious"!』

 34文字の"魔術"。固有名詞にして形容詞。万難を廃絶する"魔法"のひとつ。
 少女が手にする傘から、幾重もの魔法陣が解き放たれる。
 次々と霧散する術錠に応じ、親骨に跨る傘皮膜に金色の魔力が羽ばたいた。

 ヴァーミリオンカラーのアンブレラが、錆色の荒天に鮮やかな色彩を浮かび上がらせて。

 直後、ドン、と重くも柔らかな衝撃が伝わってきた。
 発動したばかりとはいえ、師の魔法に影響を及ぼすとは如何様な衝撃であろうか。
 一瞬、雷でも落ちたかと想像したが、その程度で揺らぐ魔法ではないはずだ。

「何だったのかしら?」

 開かれた傘の周囲において、気流は完全に制御されている。
 快適空間を作り上げる傘の魔法。ゆらり、ゆらりと空の真ん中を降りていく。

 少女は瞳を閉じる。

 躍動の世界:セルフォリーフ
 古より豊かな土壌を持つ大地として知られている世界に、近年発生した異常。
 動植物は巨大化し、無機物は意志を持ち、更に凶暴化して破壊活動をはじめたという
 危難に際し、世界復元の依頼が各地に飛ばされたのは、つい先月のことだ。

 少女は瞳を開く。

 あれほど苦労した暴風域は、いつの間にか抜けていた。
 頭上には未だ黒雲が広がるも、遠い地平線では陽光まぶしく蒼空が煌めいている。

 夢猫ぴあの。雲の上の魔法使いの弟子。
 彼女の旅は、眼下に広がる雄大なスティルフの街から産声をあげた。

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六命PC
セルフォリーフ:
ENo.58 夢猫ぴあの
アンジニティ:
ENo.106 梟霊アルワン

Sicx LivesのPLのひとり。
ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

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