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歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

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「これをどうぞ、気分が落ち着きますよ」

 バジルが差し出したマグカップを受け取る。陶器を通して伝わる熱量は、冷えた肌にとても心地よく。
 そっと口をつけると、喉をコクコクと流れていくホット・チョコレート。
 甘い。糖分は疲労回復に効くというが、本当だろうか。
「セルフォリーフは、俺達が予想していたよりヤバイってことだろうな」

 窓枠に腰掛けていたジェイが、空のマグカップを弄びながら呟いた。
 モーテルの二階から見下ろすエスタの街並みは、人の往来もそこそこあり、まず賑やかといっていいだろう。
 たとえそれが、他分割世界の救援者(セイバー)大挙による一時的な好況だとしても、寂れているよりはマシだ。

「酷いってもんじゃありませんわ」

 ピアノが、憮然としながら反応した。

「なんですの、あの怪物。見た目はふざけてるのに、実力もふざけすぎですわ!」
「確かに」

 真剣な表情で相槌を打つバジル。

「無機物までも意志を持つと聞いてはいたが、…あれは逃げ回るだけでなく言葉も発していましたね」

 少し考え込み、続けた。

「見たところ霜降りのしっかり入った…おそらくロースかサーロイン。
 肉には違いないとすれば多少なりとも動くことは性質の内に入れるとしても…」
「いやいや、そういう話じゃなくてだな?」

 思わずジェイが突っ込みを入れる。

 エスタに限らず、この世界の"街"には、強力な術者による結界が敷かれているらしい。
 結界は、怪物が近寄らなくなる効果を持ち、故に街を護る壁となって存在する。
 一行は結界に入ることで、なんとか逃げ延びることに成功した。

 だが、逃げる際に落としてしまった荷物を取り返さなくてはならない。
 態勢を整えて再出撃し、苦闘の末にようやく女帝や逃げ回る肉塊を退治できたのだった。

「あんな敵を毎日相手するのは、さすがにしんどいな」

 ハッキリ理解できたのは、セルフォリーフに蔓延する怪物の強さ。。
 別の世界で勇者だの魔王だの呼ばれていた者が、ワカメとかヤドカリに倒されているという現実。

「でも、回収できてよかったです。
 師匠から借りたトランクですもの。無くしたら、全力でボコられちゃうとこですわ」

 ピアノが、女帝から取り戻した旅行鞄を撫でながら言った。

「そのトランクには、かなり複雑な魔法が仕掛けられているみたいですね」
「あら、わかるの?」
「…そりゃ、あんな光景を見せられちゃな」

 ジェイは背筋を反らしながら、呆れ気味に言う。

「戦っていましたね。怪物たちと」
「まさか、トランクがカマドウマ1匹退治済みとか、誰も想像しないだろうよ」

 彼らが見た光景は、とても単純なものだった。
 年季の入った旅行鞄が巨大カマドウマを殴り倒し、女帝の鞭を華麗なフットワークで避けていたという。
 遅れてきたピアノが視線を向けた瞬間、鞄はびくんと跳ねて大地に落ちた。
 以来、勝手に動き出したことはない。

「まさか、そんなことあるはずありませんわよ」

 ケラケラと笑いとばすピアノ。
 だが、男性陣2人は同調できない。現実を受け入れるならば、間違いなくPT最強の攻撃力保持者は、旅行鞄だ。
 ピアノに見られる直前に動かなくなったあたりに、何らかの秘密が隠されているのだろう。
 持ち主に対して猫を被っている旅行鞄。いったいなんの冗談だ。

「色は茶色。かなり年季が入ったものと見受けられますが、材質は牛ではありませんね」
「幻獣の革で造ったモノだって聞いてますわ。どんな幻獣かまでは知りませんけど」

 特定しようにも、迂闊に手を出せば何が起きるか分からない。
 鞄に仕掛けられた魔力の法則を細かく分析し、やがてバジルは諦めた。
 支配している魔法が難解すぎて、手に負えないと判断したからだ。

「よく、この鞄から財布を抜き取れましたね、ジェイ」
「あ? …ん、ま。キーワード預かってたからな」
「何か言いました?」

 ピアノがきょとんとした顔を見せたが、2人は曖昧な表情ではぐらかすばかりだった。

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