2011/11/06 (Sun) 焔の月 5日目＠アンジニティ日記

　蒲焼は言った。

「動けるようになった意味を知りたいのだが」
「知るか！」

　全力で撃退させていただいた。
　奴は悔しそうに歯噛みしたのち、身体を大地に横たえて告げた。

「さぁ、食べるといいッ！！」
「喰うか！」

　もうやだこの世界。

　俺様、大困惑。
　飛んでも飛んでも次の街は見えねぇし、疲れるし、精神がもつ気がしねぇし。

　しかし、この世界の何処かに『亀裂』があるはずなんだ。
　出所すら定かでない噂だけが、俺様を前へ進ませている。
　勇気か蛮勇か、そろそろ自分でも判別できなくなっていた。

　俺様は楡の枝につかまり、遠い夕日を眺める。
　まだ5日しか経っていないというのに、かつて雲上で過ごした日々が懐かしく感じられた。
　平安の世も、偽島の世も、今以上に激闘の日々だったはずなのに。

　そんな俺様を嘲笑うかの如く、襲い掛かってきた影がある。

「………」

　肉だった。赤身250gぐらい。脂身は少なそうだ。
　肉は俺様に襲い掛かっておきながら、突然ダダダッと逃げ出した。
　かと思えば、木陰から顔――顔らしき肉質をのぞかせて、モジモジしている。
　近づいてみたら、再び逃げ出した。

　俺様は、無常を感じて空を見上げ、やがて決心する。

「ちきしょう、もうこんな処にいられるか！ 俺様は元の街に戻るぞー！」