忍者ブログ

歌を唄う猫の夢

定期更新ネットゲーム『Sicx Lives』の、 日記・雑記・メモ等が保管されていくのかもしれません。 昔は『False Island』のことを書いてました。

2024/11    10« 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  »12
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 セルフォリーフを窮地に陥れた異変を大別するならば、『巨大化』と『暴走』の二つが挙げられる。
 先刻襲撃してきた、堕性して人を襲う狩人は後者に分類される。
 一方、パーティの目前に立ちはだかるハムスターは、前者の代表と言えるだろう。
「やだ、またファン?」
 +小+とうしょうか-小-
 島嶼化という研究がある。
 進化生物学や生物地理学に関連する学説で、生物が巨大化、あるいは矮小化する理由を説明するものだ。
 島嶼地域――すなわち、孤立した島における安定と競争の二極化が招く異常進化。
 外敵が少ないことから、小動物は身を隠すために小柄な体躯を維持する必要が無くなる。
 また、捕食対象が少ないため、巨大動物は生命維持の適正サイズに矮小化することで環境適応する。

 セルフォリーフは、遠大な視線で見れば分割世界における孤島といえよう。
 だが、現状を島嶼生物学で説明するには幾つか足りないものがあった。

「最近多くてちょっと困ってるのよね。帰ってくれないかしら」

 欲求や感情に従属する動物的本能ではなく、欲求や感情の抑制と克服で発展させる人間的思考。
 すなわち、知性の目覚めである。

 ハムスターは3匹。ほっぺをモゴモゴ蠢かせながら、お互いにべったり寄り添っている。
 とても、仲が良さそうだ。
 ライトブラウンとミルキーホワイトの美しいコントラストに色分けされた毛並みが、乙女の心をキュンと奪う。

「これよ!」

 瞳をキラキラさせながら、凶器の傘を振りあげる年頃の少女・夢猫ぴあの。

「これが私の求めていた、ドキドキとワクワクに満ち溢れた夢と希望と浪漫の冒険の始まりなのよ!」

 魔法を常識として育ってきた彼女からすれば、前述の島嶼化や脳構造などどうでもいい話だ。
 ただ、そこにあるから。――それだけで、説明できる現象だからである。

            -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 仰向けになって無防備なお腹を晒すハムスター達を、ピアノは満面笑顔で抱きしめている。

「なるほど、報酬は抱きつき放題ですか」
「……そんな目で見るなよ」

 淡々と口にするバジルに、ジェイが嫌そうなため息をついた。

 結果から言えば、対ハムスター戦には勝利した。満身創痍の激戦の末に。
 連携も不揃い、互いの足を引っ張りあう戦闘シーンは思い返せば情けないの一言だ。
 とはいえ、パーティはまだ纏まったばかり。山積する課題はこれからクリアしていけばいい。
 
 だが、ここに別の問題が立ちはだかる。
 ハムスターは、スティルフの街を荒らす怪物でもなんでもなかった。
 負けを覚悟するや、降伏のポーズを取って彼らは言う。

「好きに……すればいいじゃない」

 ピアノは好きにした。
 もふもふすることを許した彼らは、少女の撫でまわしを受けて幸せそうにアッアッと声を揺らしている。
 極めて可愛らしいが例えようのない気まずい光景を、男性2人はそれぞれの想いで見つめていた。

「おかしいな。もっと殺伐かつ、危険な旅路の心構えを説明していたはずなんだが」

 ジェイは、疲れ切った心で呟く。
 依頼は完遂した、それはいい。
 だがこの依頼、何を目的にしていたかが透けて見えた気がする。
 巨大毛玉を人間に従順にさせること、いわば調教を目的としたミッションだとしたら。

「いきなりこの世界を見捨ててもいい理由にはなるかなぁ」

 子供たちが大歓喜でハムスターに抱きつきまくっている光景を幻視しながら、ため息をもう一回。
 ジェイはそっと隣へ視線を送る。
 同意を求めたかったわけではないが、わざと声に出した独り言の反応が気になった。

「想像以上に弾性が強いようですね。
 このもふもふ力を、術式の剛力ベクトル許容計算に利用できれば……」

 バジルは自らの思考に夢中のようだ。何やら怪しい単語をぶつぶつ呟いている。
 彼の考えも、ジェイには理解の範囲外だった。

 やがて、もふもふを堪能しきったピアノが艶々な血色で戻ってきた。

「Trick or Treat?」
「なんだ?」
「All Hallows eve、よ。Halloween、知らない?」

 投げて寄越すのはパラソル型のチョコレート。ジェイにバジルに渡して、自らの口にも入れる。

「いいじゃない、子供の夢。
 壊れかけた世界だからこそ、狂った楽しみも出来るってものだわ」

 少女のウィンクに、バジルがかすかな微笑みを見せた。
 不貞腐れた態度を取っていたジェイも、口元を柔らかく釣り上げる。

「ようこそ、というべきですか?」
「ええ。――私の名前は夢猫ぴあの。最高の魔法使い……の、弟子よ」

 よろしく。その一言が、旅の始まりを告げる。

拍手[0回]

PR
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
管理人のみ閲覧

この記事へのトラックバック

トラックバックURL:

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

プロフィール

六命PC
セルフォリーフ:
ENo.58 夢猫ぴあの
アンジニティ:
ENo.106 梟霊アルワン

Sicx LivesのPLのひとり。
ふらふらと漂う木片。
つれづれなるまま、
書き綴ってます。

関連サイトリンク

Sicx Lives
 六命本家 .

木漏れ日に集う
 取引サイト
六命wiki
 うぃき

うさ☆ブログ(・x・)
 神検索
Linked Eye
 無双検索
六命ぐぐる
 無敵検索
未知標
 MAP,技検索

万屋 招き猫
 情報集積地
エンジェライトの情報特急便
 情報集積地
ろくめも
 付加情報特化
英雄の故郷
 合成情報特化
六命技データベース
 技情報特化
わんわんお
 敵情報特化
適当置き場
 敵出現テーブル他
手風琴弾きの譜面帳
 取得アイテムやペット

六命簡易計算機
 簡易計算機
紳士Tools
 PK,素材情報明快化
紙束通信研究所
 戦闘情報明快化

犬マユゲでした(仮)
 blog情報速達便
小さな胡桃の木の下で
 新着ニュース特急便

個人的閲覧サイト

空に堕ちるまでの朝
 ジェイ(189)さん
うたびとのきおく
 バジル(428)さん

星ト月ヲ見ル人
 ラーフィー(709)さん
車輪の跡
 ミカ(402)さん

最新コメント

[05/16 backlink service]
[11/25 ふれあ(1519)PL]
[11/23 セレナ(93)PL]
[11/22 ふれあ(1519)PL]
[11/20 カシュー(553)]
<< Back  | HOME Next >>
Copyright ©  -- 歌を唄う猫の夢 --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by もずねこ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]