2012/01/12 (Thu) 焔の月 9日目＠アンジニティ日記

　Christmas――。
　次元に数多く存在する分割世界の一地方"ナザレ"に生を受けた、偉大なる預言者の降誕日だ。

　"彼"自身は"神"ではない。
　"神の子"とは三位一体における第二位格であり、"父なる神"、"聖霊"と本質を同じくする。
　故に、"彼"自身も"神"と同一の存在であるとされていた。

「Yo！ Yo！ 今宵は年に一度の Holy Night だ。Everybody、ガンガン盛り上がっていこうぜ！？」
「Ameeeeeeeen！！！」

　次元を振動させんばかりの、轟雷な歓声が響き渡る。
　爆発と共に吹き出す色鮮やかなスモークと、宙に浮かび上がる"SUPER STER"のネオンフォント。
　地球１個まるまる収容できる天界中央広場の特設ステージを超満員にするライブコンサート。
　アリーナはオーロラチケットとも呼ばれ、地獄から天界へ移住して余りある暮らしが約束されるという。

　"彼"はいまや、天界でも最強のスーパー・スターだ。
　以前見た音楽雑誌で、重い十字架を背負ったり張り付けにされたりと、苦労の絶えない下積み時代がインタビューされていた。
　同じ地上出身の神属としては、どことなく共感を覚えたものだ。

　そんな彼のコンサートに抽選漏れした地上の民が、ヤケ酒を煽るようなハイテンションで祝いまくる祭り。
　それが、クリスマスなのである。

　アンジニティという業罰の世界においても、クリスマス・ナイトはあるらしい。
　最初の街タルタスに戻ってきた俺様は、街中を彩る電飾の彩りに驚きを覚えていた。
　ここがあの、いきなり俺様を鳥鍋にしようとした地獄街なのか。

　いかに狂った国であろうとも、スーパー・スターに憧れる気持ちは変わりはしない。
　俺様の瞳に、軽く涙がにじんだのも無理はないだろう。
　救世主ですら救いようのない犯罪者共。だが、彼らの本質は"悪"ではないと証明されたのだ。

　そう。世界は今、クリスマスというスターの降誕祭を迎えて最高に"Happy"な瞬間を迎えている――、

　　Happening！　デュエルを仕掛けられました！

　……………。はい？